ニュースより。
最近、一部メディアで取り上げられている薬。
小野薬品の抗がん剤「オプジーボ」である。
https://www.opdivo.jp/contents/
.
一般名はニボルマブ(遺伝子組み換え)
ヒトPD-1に対するヒト型IgG4モノクローナル抗体。
通常、ヒトの免疫系は、がん細胞を攻撃するんだけど、
がん細胞側が、免疫系のT細胞を抑制する防御機構がある。
その、がん細胞の防御機構を抑えて、T細胞を再活性化させて
抗腫瘍作用を発揮させる、、らしい。
簡単に言うと、がん細胞を弱体化させる、とても高い薬。
.
で、この薬はもともと悪性黒色腫(皮膚がん)に適応をもつ薬として、
承認されていた。
もともとの患者さんの数が少ないため、開発費が回収できるように
薬価も高く設定されていた。
ところが、昨年末にこの薬が肺がんに対する適応も取得。
患者数の少ない皮膚がんに対し、肺がんの患者は多い。
使用者が一気に増えた。
報道によると、今年4月からの半年で前年の18倍。
売上で533億円。ってことは、年間で1000億を突破する可能性が高い。
これ、日本での医薬品売上高としてはトップクラスになる。
(昨年のC肝の薬には及ばないだろうけど)
なんせ、肺がん患者が1年間使うと、年間治療費は3000万円を超える。
で、これがC肝のように、「12週間使えば完治」するような薬ならいいのだが、
残念ながらそこまで効果の高い薬ではない。
.
国は、このオプジーボの薬価切り下げを検討している。
通常、薬価改定は2年に1度。去年問題になったC肝の薬は、
今年の4月に(特例として)かなり値下げされた。
通常なら、再来年の4月まで薬価は変わらないんだけど、
こんなことやってたら、医療費がいくらあっても足りないので、
オプジーボは年度内に、最大50%まで値下げされるかも、とのこと。
異例もいいとこだけど、これはしょうがないね。
.
そもそも、最初の値段が高すぎるんだけど、
これは適応を「悪性黒色腫」に絞って承認を取ったからだろう。
これなら患者さんの数が少ない=薬価を高くできる。
でも、作用機序を考えると、他のガンにも効く可能性はありそう。
最初から肺がんの薬として承認をとっていれば、患者さんの数が多いから
もっと薬価を下げられたはずである。
.
こっからはあくまで私の想像だけど、
これ、メーカーは狙ってやってるよね。(苦笑)
日本の薬価の決め方を熟知した上で、最も利益の出る方法を狙った。
薬価が高くなったのは日本の薬価制度に問題があるから、だろう。
で、その問題点を突いて最大限に利益を出そうとしたのがオプジーボ
だったんじゃないかな。
こんなことやられたら、医療費はいくらあっても足らんわ。
.
あ、この辺の値下げの話は、患者さんにはあまり関係ない。
保険診療であれば、まず間違いなく高額療養費制度の対象になるので、
3000万だろうが1500万だろうが、自己負担額は大差ない。
所得によるけど、年収770万円未満で年間100万程度に収まる。
残りは全部、健康保険が払ってくれる。大本は保険料や税金だね。
.
国民医療費の高騰の要因の一つは高齢化だけれども、
もう一つはこの手の新薬だろう。
医療技術が進み、新たな治療法が開発されると、
その分、国民医療費もあがっていくんだ。
薬剤師が、残薬整理や後発品推進で懸命に医療費を抑えようとしても、
「焼け石に水」だろう。いや、それでもやるけどさ。絶望的な戦いに見える。
.
第一次世界大戦のあと、日本を含む列強国の海軍は、
こぞって建艦競争をした。相手の軍艦よりも強い軍艦をもつために。
この競争は、そのままだと歯止めがかからない。
下手すれば、日本(当時は大日本帝国)なんか、
「国家予算の半分が軍事費(海軍)」になってしまう可能性もあった。
そして、その懸念はどの国でも同じこと。
国家予算のために、ワシントン軍縮会議が開かれ、
戦艦保有量の上限を決めた。
結果として軍事費を抑えることができた。一時的だったけど。
.
これ、医療費でも同じことが言えるんじゃないかな……?
このまま際限なく医療の研究をしていたら、医療費だけで国が破たんしないか?
日本だけの問題ではなく、この医療費の高さは外国でも問題になりつつある。
医療経済。医療におけるコストパフォーマンス。
その辺を、世界レベルで真剣に考える時代が来ているんじゃないだろうか。
人の命を救うために、どれだけのお金を使えるか?
医療費にかける金を別のことに使えば、
その方が多くの人命を救えたりしないか?
.
医療費を下げるための、新しい仕組みが必要だと思う。
医療費を下げるような技術革新って無理なのかなぁ?
営利企業では難しいかも知れないな。(苦笑)
いわば、「売り上げを下げる技術」だから。
最近のコメント