( '17~)仕事(薬局)

エルデカルシトール緊急事態

 後発品の供給が滞っている。

 昨年末の小林化工ショックに続き、
日医工も(一部)業務停止命令がでて、
全体的に後発品がやばい。

 一番しんどいのは、医薬品卸だと思う。
MSさんの仕事内容が変わってしまったんじゃないかと。
欠品の対応に追われるだけで半日以上かかるとか。

 まぁ、最近はこっちも慣れてきたけどね。
「そこになければ、ないですね」ってなもんだ。

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 そんな中でも危険水準に達しているのがエルデカルシトール。
高齢者の骨折の予防に、骨粗鬆症に使われるビタミンD製剤なんだが、
もともと、後発品を日医工とサワイの二社しか作っていなかった。

 日医工が先に供給制限がかかった。
まぁ、日医工はまともに入ってくるほうが珍しいくらいの状況なので
あまり気にしていなかったけど。

 結局、大本を作ってる会社の問題?とかで、
サワイからも入らなくなった。これで、後発品全滅。

 仕方ないから先発品を使えば?となるが、
こちらもいまや中外製薬一社の販売となっていた。
すでに後発品の方が圧倒的にシェアが大きいんだから、
後発品二社に倒れられたら、持つ訳がない。

 結果、先発のエディロールも出荷制限。

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 結局、エルデカルシトールは全滅した。

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 ほぼ、どこからも何も入らない。
代替品といえば、もう一世代前のビタミンD製剤である
アルファカルシドールになるんだけど、全体的なシェアはエルデカルシトールより少ない。
こっちもあっという間に供給制限かかった。

 エルデカルシトール緊急事態宣言である。

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 ここまで入手に苦労した薬って、東日本大震災のときのチラーヂン以来かも。
チラーヂンは「なかったら絶対に困る」薬だったけど、
エルデカルシトールにしたって、ないと困るよ。
いきなり死ぬことはないけど、骨折のリスクが高まる可能性がある。
高齢者にとっての骨折って、死活問題だからな。

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 じゃぁ、どうする?
普通、こういうときはやらかしたメーカーがお詫び行脚して、
処方元の医療機関(病院)の処方を止めてもらう。

 でも、今回はうまく進まなかった。
「誰の責任?」ってのがはっきりしてないんだ。

 日医工、サワイが倒れたのはほぼ同時だし、
どちらにしても、本音では「俺のせいじゃない」だろう。
先発メーカーの中外製薬にしたところで、
「完全にとばっちり」としかいえない。

 でも、このままじゃもうエルデカルシトールがなくなるのは
火を見るより明らかだ。誰か助けて。

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 というところで、関連学会から声明がでた。

骨粗鬆症診療に携わる医療機関の皆様へ(日本骨粗鬆症学会ほか)

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 新規処方は避ける。休薬できそうな人は休薬する。
何がしかの治療は続ける。
まぁ、妥当なところだと思うが、
この措置でどれくらい持つかも分からん。

 10月には供給再開の見込みがあるけれども、
そこまでどれだけ入ってくるか誰もわからないから。
私の薬局の在庫は、あと1ヶ月弱といったところ。
もって来月いっぱいだな。いれてくれないと。

 で、この在庫状況は薬局によって異なる。
「もう無理!」ってとこもあると思う。
どないすんねん、と。
この辺、会社によって体力が違うからな。

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 原因、ねぇ。


「全体的に余裕なさすぎ」なんだよ。
これ、10年前のチラーヂンのときも言ったよね。
無駄を省く、合理化を続けると、こうなるって。

 また、薬価が低すぎるのも問題なんだって。
安定供給を続けるのに、設備投資が必要なのはわかるよね?

 もう、後発品業界自体が滅びかねないんだけど。
国は、どうしていくつもりなのかな?

 

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アビガンが承認されなかった理由


 先日、富士フイルム、富山化学の抗ウイルス薬「アビガン」の
新型コロナに対する処方について、承認審査が行われた。

結果、今回は承認されず、決着は来年以降の持ち越しとなった。

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 ニュースをみてまず思ったのは、「やっぱりな」と。
早期承認を目指した5月の時点で、劇的な効果がないのはわかっていたし。
効果はあったとしても限定的なものだと思う。

 で、ワクチンが出てくるめどが立ってるのなら、
効果が怪しくて副作用が明確に分かってる薬なんか、
そうそう承認される訳ないよね、と。

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 でも、承認不可の理由として報道されたのは、

「臨床試験が単盲検試験で行われていたため、結果に疑義が生じた」と。

ふぁ?

 なんで単盲検でやったの?
新薬の治験なんて二重盲検でやらなきゃダメに決まってるやん。
案の定、「データの信ぴょう性に疑義が残る」とか言われてしまってる。

 これに対して、アビガン信者が「利権だ」とか「政府の陰謀だ」とか騒いでる。
いやいや、単盲検でデータ信用できないなら、承認する方がおかしいよ。
むしろ、承認した方が科学的な知見よりも政治的圧力を優先したように見えて、
後々に禍根を残すことになるだろう。

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 まぁ、素人さんは治験がどういうものかわからんだろうから、
(プラセボが必要なことも理解できない人が、治験についてしゃべってもね)
仕方ないっちゃ仕方ないか。

 でも、個人的には気になった。
なぜ、単盲検で試験したの?」と。
こんなん、常識外れもいいところだ。そこで、ちょっと調べてみたところ、
思いのほか、闇が深かったので書いておく。

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 単盲検を採用した理由は、はっきりとは分からないけれども、
(治療に当たる医師が難色を示した、という未確認情報あり)
分かっているのは、
 単盲検の試験で行うことは、厚生労働省も知っていた
ということ。

 それでいて、別に富士フイルムを注意した訳ではない。
むしろ、企業と一緒になって治験デザインをやったようだ。
つまり、「アビガンの単盲検試験は、国公認のものだった」

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 いやいやいや、それやったら単盲検試験であることを理由にして
承認拒否したらあかんやろ。

 あんたら(国)がそれでええって言うたんちゃうんか?
いざ承認って時に、やっぱりあかんってどういうことやねん?
ほんまに。

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 まぁ、海外の第三相試験(これは二重盲検)の結果などで
承認される道は残されている。
というか、国内でも二重盲検で試験すればよかったのに

 単盲検でも十分な成績を出せれば承認されたんだろうけど、
おそらく、そうではなかったんだろうなぁ。
承認するかどうか微妙なラインだったから、
それを理由にして拒否されたんだろう。

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 で、なぜ単盲検で試験したか、なんだけど。

 これには、安倍さん(というか当時の首相官邸)が深くかかわっていると思う。
安倍さんはアビガンの早期承認を目指すという、政治家にあるまじき発言をした。
それは、政治が決めていい話じゃない。

 でも、当時の安倍さんの力をもってすれば。
厚労省が「総理の意向」を基に何とか早期承認を目指すのは
想像に難くない。(ある意味、「忖度」だわな。)

 ただ、今までの法律を全部無視するわけにはいかない。
現行法を(できるだけ)破らないように、どうすれば早期承認できるか。
それが徹底的に議論されたんだろう。
 「アビガンの早期承認」が目的だった。

 もちろん、臨床試験は必須だ。
でも、あの時点ですでにアビガンの知名度は大きく、
治験が難航することは予想された。

 だって、観察研究という形で「確実に」アビガン投与することできるのに、
あえてプラセボの可能性のある臨床試験の参加者を募るのは無理がある。
文字通り、人柱になれ、って話なんだから。
(そういう環境を作った政治の責任もあると思う。)

 そこで、何とか体裁を整えて治験する方法が「単盲検」だったんじゃないかな。
臨床試験に対するハードルも低くなるし、結果も評価されやすいから。
で、厚労省は早期承認のために、単盲検での治験をスタートさせた。

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 ところが思った以上に感染が広がらず、
5月で治験を終了させることはできなかった。
これは想像だけど、治験拒否した患者さんも多かったんじゃないかな。
(やっぱり、確実にアビガン欲しいよね)

 5月下旬に中間報告が出たけれども、
その時点では「まだ有意差はない」状態。
悪くはないけれども、劇的に効果があるわけでもないことがわかった。

 5月承認は無理だったけれど、その後も同じ枠組みで治験は続けられた、と。

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 結論から言うと、夏の第二波の時点で治験をやり直した方がよかったと思う。
軽症者や無症状感染者がたくさん出たんだから、そこで二重盲検試験すればよかった。

 でも、たぶん無理だったんだろう。
同じ薬の治験をやり直すなんて、聞いたことないしできるとも思えない。
どうしてもやり直すのであれば、「前の試験は間違っていた」という必要があるだろうが、
それ言うには、「総理の意向」出さなきゃ言えないよね。
それは言える訳がない。

 また、企業側としても「国が認めた方法でやれば、承認される」と思うだろう。

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 ところが、である。状況が変わってしまった。
旗振り役だった安倍総理は退陣した
(しなくても興味失ってたかも知れないが)
レムデジビルに加えて、デキサメタゾンも承認されて、
しかもワクチンができてくるのも現実味を帯びてきた。

 そうなると、アビガンを特別扱いする理由がない、、よね。
それほど効果ないことはわかっている訳で。
そんな薬を(総理の意向で)承認したら、また科学者が騒ぐだろうし。(当然だ)

 その結果、今回は承認されないことになったんだろう。

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 アビガンと富士フイルムは、首相官邸(と世論)に振り回され過ぎた。
じっくりと二重盲検で試験してれば、もっと早く承認されていたかも知れないな。

 もちろん、効果が認められなかったら承認されないだろうけど、
それでも、それはそれで仕方ない話だ。効いたら儲けもん、くらいの話なんだから。

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 私の感想としては、

政治家が科学に首突っ込むとろくなことにならない

 専門家に任せておいた方がマシだよ。
もちろん、チェック機構も必要だけどさ。

 そういえば、他の治療薬はどうなってるんだろう?
ヒドロキシクロロキンとか、HIVの薬とかはもう効かないだろう。
アクテムラも否定的な話だったような。
 シクレソニドの吸入はどうだったのかな?
個人的には一番期待していたんだが。
最近、イベルメクチンがどう、とか言われてるね。

 まぁ、本来なら年単位で時間がかかる話。
ワクチンができたとしても、それだけで制圧できる訳ではないので、
治療薬はもちろん必要になる。

 じっくり待つしかないのかな。

 

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イトラコナゾール、続報

 先週金曜日の夜に発覚した、
イトラコナゾール錠「MEEK」の回収の続報。

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 とりあえず、昨日付けの明治製菓ファルマの発表によると、
処方された患者さん全員と連絡がついて、服用中止は確認したらしい。

これ以上被害が広がることはなくなった。

 現時点で110件くらいの健康被害が報告されているけれども、
全体の数はまだわからない。予想よりも少なそうでほっとしている。
あとは、死者が出ていなければよいけど。

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 何がおこったのかは、まだ詳細な発表がない。
少なくとも、小林化工のヒューマンエラーであることは間違いない。
イトラコナゾール錠50mgに、リルマザホンが5mg混入したのがほぼ確実。

 リルマザホンは、常用量が1mgから2mg。
つまり、イトラコナゾール1錠に、常用量の倍以上の睡眠薬が混入している。

 さらに悪いことに、イトラコナゾール錠は、人によっては1回4錠服用する。
マックスで、リルマザホン20mg。常用量の10倍。

 ようは、大人10人寝かせるくらいの睡眠薬が混入していた、ってこと。

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 イトラコナゾールを服用して眠くなった、という副作用の報告があって、
そこから調べた結果、混入が発覚したらしい。

 よく、気づいたな、これ。

 申し訳ないが、イトラコナゾール服用して眠くなった、と言われても、
私はイトラコナゾールが原因だとは思えなかっただろう。
そんな副作用考えにくいから。

 全く違うものが混入する、という可能性は完全に想像外だった。

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 ようやく、今日になって報道が本格化。ヤフートップまでいったけれども、

遅いよ!

 金曜の夜の第一報で、ヤバいのわかったやろ?
医療関係者、薬局関係者なら、今回の件がどれくらいヤバいかすぐわかるのに。

 むしろ、一息ついた今となっては報道いらんのやけど。
患者さんからの問い合わせという余計な仕事が増えるだけだ。

 ある程度被害が積みあがらないと、ニュースにならないのか?
そんなん、第一報の時点で大惨事が予測できるんだが。
だから、twitter界隈では薬剤師が大騒ぎしてたんだよ。
野菜への農薬混入とかとは、全く次元が違うヤバさなんだから。

 私だって、第一報聞いたときはパニックになった。
他にも、同じような薬剤師は多かったんじゃないかと思う。

 まだまだ被害の報告は増えるだろうけれども、
それはもう終わったことだ。緊急性のある話ではなくなっている。

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 で、次。なんでこんなことがおこったのか。

 まさか故意ではないだろうから、過失だと思う。
ミスを犯した人間を責めるような話ではない。
こんなん、責任を取れるレベルの話じゃなくなってる。

 一番の問題は、ミスを発見できなかった管理体制だ。
こんなミスは絶対におこせないように。
万一があったとしても、出荷前に止める仕組みがあったはずだ。
そうでなければ、医薬品企業なんてできる訳がない。

 なぜ、それが機能していなかったのか?
これは、歴史に残る大事故になってしまったので、
徹底した再検証が必要だろう。

 全責任は、この会社の管理体制にある。

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 この会社はどうなるのかな?
前代未聞の大惨事を引き起こした弱小後発品メーカーなんだから、
普通に考えると潰れると思う。
誰も、こんな会社の商品を使おうとは思わない。
だって、他にいくらでも選択肢あるんやもん。

 ただ、小林化工さんは、製造メーカーでもある。
他のメーカーから委託を受けて作っている医薬品は、
想像以上に多い。

 今回のイトラコナゾールだって、販売はほとんど明治製菓ファルマだろう。
実際に薬局への報告や回収は、明治製菓ファルマが担当している。

 コロナのせいもあって、供給が不安定になる医薬品が増えているなか、
そうそう簡単につぶせる話ではないと思うんだが。
まぁ、品質管理部門は一から構築する必要はあると思うが、
ここの社員全員が路頭に迷うことはないんじゃないかな。

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 非常に勝手な話ではあるが、これ以上患者さんに被害が広がらないのなら、
これ以上騒いでほしくないのが本音だなぁ。

 もちろん、責任は追及しなければならないけどね。

 

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イトラコナゾール「MEEK」クラスI回収

 

 抗真菌薬「イトラコナゾール錠MEEK50mg」に、クラスI回収がかかった。

 服用すると、健康被害が発生する可能性が非常に高く
即時全回収が必要だ。
私が薬剤師になってから、このレベルのクラスI回収がかかった事例は
ちょっと記憶にない。ごく少量の発がん性物質とかなら時々あったけど。
おそらく、21世紀で初めての事件ではなかろうか。

 

 最悪なのが、これが発覚したのが金曜日の夜だということ。
土曜日開けてる薬局であればまだいいのだけれども、
まだ、すべての服用患者さんに連絡がいっていない可能性がある。

 服用すると危険なので、即座に行動が必要。

 イトラコナゾールは、水虫や真菌に対する薬。
これに、何をどう間違えたかわからないが、リルマザホンという睡眠薬が入った。
詳細な発表はないが、服用すると常用量を超えるという。

 つまり、水虫の薬の中に、多量の睡眠薬が入っているということ。
実際に、これを服用して交通事故を起こした例もあるらしい。

 ヤバすぎる。

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 報道では「小林化工」の製造した医薬品となっている。
それは正しいんだけど、これ、販売は「明治製菓ファルマ」だ。

 「チョコレートは明治」の明治だよ?
明治製菓が医薬品作ってることは知らない人の方が圧倒的に多いと思うが、
「小林化工なんて、地方の弱小メーカーだから影響少ないだろう」
なんてことはないよ。

 むしろ、報道では「明治製菓ファルマ」の名前で訴えて欲しい。
ネームバリューが違うから。

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 問題が2点。

 一つは、この大事な問題がろくに報道されていないこと。
規模が大きくなれば、カネミ油症やサリドマイド級の薬害になりかねない。
薬害の歴史上に残る大事件になる可能性がある。

 薬局まで連絡はいってるだろうけど、そこから患者さんに連絡がついてるかどうか。
ここで週末というのは、厳しい。
問題の薬をもったまま旅行とかいったら、非常に危険なんだが。

 できれば、ニュースのトップで報道して欲しい。
もっとできれば、
明治製菓の名前で緊急にCM打って欲しい

何もなければ、それに越したことはないんだから。

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 もう一つの問題。

 それは、医薬品への信頼の失墜。
特に、後発医薬品に対する信用が地に堕ちる。

 こんな事件、そうそうめったにおこることではないんだけど。
このニュースを知った人は、「他にもあるけど隠してるだろう?」と
絶対思うだろう。

 実際にそんなことはまずあり得ないんだけど、
そんなことわからんもんね。

 問題は小林化工や明治製菓に留まらない。
後発医薬品業界、どころか、医薬品業界全体に波及する可能性がある。

 この薬を服用する人が一人でも少なくなるように。
一刻も早く全回収できるように。

 メディアの力で何とかしてもらいたい。

 

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ラグビーW杯、山中選手を応援しよう

 ラグビーワールドカップの日本代表に、山中選手が選ばれた。
前回は落選していたので、今回が初めてのワールドカップになる。

「神鋼・山中、ラグビーW杯へ 口ひげ育毛剤でドーピング、15年の落選乗り越え」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190829-00000019-kobenext-spo

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以下、一部引用

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順風満帆だったラグビー人生が暗転したのは、
2011年の神鋼加入直後だった。
日本代表合宿中のドーピング検査で、
禁止薬物の陽性反応を示した。
口ひげを伸ばすために使用していた育毛剤が原因だった。
悪意はなく完全な不注意だったが、
2年間の資格停止処分を受け、練習参加も禁じられた。

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 引用終わり。(改行位置変更)

 これ、見た瞬間うれしくなった。覚えている人いるかな?
薬剤師国家試験の問題の元になった選手だよ。

「山中選手へのお詫びと、応援」(2015.3.11)
http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/post-df14.html

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 薬剤師がしっかりしていれば、防げたかも知れない事例だね。
もう4年前の問題になるのか。

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 ラグビーのワールドカップ自体、前回の奇跡的な勝利の後にも関わらず全然盛り上がってないけど。
むしろ、最近の日韓関係について、ちょっと記事でも残しておこうかなとも思っていたんだけど。

 この話題、嬉しかったから記事に残しておく。

 

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ミノマイシン錠100mg販売中止決定!

 
 昨日の記事では、いくつかの医薬品の販売中止の情報を書いた。
特に、ラスボス「ポンタール錠」の販売中止はうれしかった。
 
.
 
 でも、実際に困ってる人が多い医薬品として、
もう一つあっね。これも過去に記事を書いてる。
「ミノマイシン錠100mg」だ。
 
「ミノマイシン錠100mgは、薬価削除すべきでは?」(2013.10.10)
http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/100mg-f653.html
 
.
 
 この記事を書いた時点で、回収騒ぎから5年が経っていた。
世の中に存在していない薬の薬価が残っているおかげで、
(間違って)処方せんに書かれてしまい、各方面に迷惑をかけていた。(苦笑)
 
 誰も困らないんだから、早く販売中止を決めて薬価削除してくれよ、と。
 
.
 
 この願いがようやくかなえられた。
「販売中止予定のご案内」ミノマイシン錠100mg
https://pfizerpro.jp/documents/info/mmc01info.pdf
 
 ちょっと引用する。
 
.
 
 ミノマイシン錠100mgは、長期保存試験において溶出性の低下が認められたため、
2008年9月に当時市場に出荷しておりましたすべての製品を自主回収しました。
 
(中略)
 
その後、溶出性の改善を検討してまいりましたが、溶出性を改良した製品の
開発には至れず、この度、当該製品の製造・供給の再開を断念し、
販売を中止することに致しました。
 
.
 
 引用終わり(強調は引用者)
 
 ちなみに、この文書の日付は、「2017年7月」である。
定期的に調べてたつもりだったけど、4か月も見逃していたのか。w
 
 まぁ、これくらい「誰も困ってない」医薬品はなかったので。
なんで、もっと早く諦めなかったのかが理解できないが。
苦節9年、ついに念願かなって販売中止とあいなった。
.
 
 普通、販売中止する製品は、最終出荷時期とか、経過措置時期とか
書いてあるんだけど、このお知らせにはどこにも書いてないね。
 
 そりゃそうだ。最終出荷時期は9年以上前
製品はもう存在していないんだから。w
 
.
 
 別に、溶出性の改良自体はそんなに難しい話ではなかったと思う。
50mgの錠剤はあるし、100mg錠だって、後発品は存在しているし。
 単に、「お金かけて開発する価値があるか?」という話だろう。
 
.
 
 前に調べた時(多分、1年くらい前)には、表向きはまだ
販売再開のための努力を続けていることになってたと思うんだけど。
まぁ、あれも文書上でしか努力してなかったんだろうな。
.
 しかし、ここのところ販売中止になる医薬品が続いている気がする。
なくても困らない薬が大半だから問題ないんだけど、、
続いているのは偶然なのか、それとも何らかの理由があるのか。
 
 どこの製薬会社も、合理化でムダをそぎ落とさないと厳しいのかな?
 

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販売中止。ロヒプノール他。

 
  仕事の話。
 
ここのところ、立て続けに医薬品の販売中止の情報が入ってきている。
一番、インパクトがあったのが、ロヒプノール錠かな。
 
 第二種向精神薬。一般名はフルニトラゼパム。
長時間型の睡眠薬で、そこそこ処方されていると思う。
 
 ただ、このフルニトラゼパム、先発品が二種類あった。
ロヒプノールとサイレースだ。
  もともと、ロヒプノールが中外製薬、サイレースがエーザイ
だったんだけど、今年、ロヒプノールがなぜかエーザイに販売移管された。
 
つまり、エーザイは全く同じ成分の先発品を2種類作ることになった。
ロヒプノールとサイレース。どちらもエーザイが販売する。
 
.
 
 で、結局のところ、ロヒプノールは販売中止になる。w
いや、最初からそういう予定だったんだろうね。
まぁ、エーザイがライバル?のロヒプノールの権利を買い取っておいて、
捨てる、という。誰も困らないからいいのかな?
 
 現場としては、少し混乱するかも知れないけれども、
どちらかというと好意的に受け止められているかな。
 面で受けてる薬局は結局両方おいていることもあっただろうし。
しかも、1mgと2mg複数規格あるし。下手すればこれだけで4種類。
それに、後発品も在庫するとなるとね。
 
 短期的には(患者さんへの説明が)負担になるけれども、
長期的には在庫管理の手間が減る分ありがたいかな。
第二種向精神薬だから、在庫管理は厳格にする必要あったしね。
 
.
 
 次。意外なものの販売中止。
「ケナログ口腔用軟膏」
 口内炎に使う塗り薬で、医療用でも使うけど市販もされている。
メーカーはブリストルマイヤーズさんで、「諸般の事情により」販売中止するとのこと。
 
 口内炎に使う塗り薬としては、トップシェアだと思うんだけどなぁ。
別に効き目が悪いとかそういう訳ではなくて、
単に、採算が悪いからってことじゃないかと。(苦笑)
 
 代替薬もいろいろあるので、それほど困ることはなさそうだ。
 
 メーカーとしても、こんな薬(失礼)どうでもいいんだろう。(苦笑)
もっと、儲かるところにリソースを使いたいんだろうね。
結構、お世話になった人も多いんじゃないかと思うけど。
 
 別に、販売中止にしなくてもいいんじゃね?とは思う。
どっかの(後発品)メーカーにブランドごと売り飛ばしてもよかったんじゃ。
 
.
 
 最後、多分、誰も注目していない販売中止。
でも、私的にはこれが一番うれしい。
「ポンタール錠250mg」
 
 
.
 
 いや、誰も使ってないって?(苦笑)
そうだけど、薬価が存在していること自体が問題だった。
間違って?これ処方するドクターがたまにいるからね。
 
 以前、錠剤とカプセル、両方存在している薬について書いたことがある。
「錠剤とカプセル(後編)」(2012.9.29)
 
 この中で、ラスボスとして出したのがポンタールだった。w
 
.
 
 本当、カプセルだけあれば、誰も困らないから。
結局、一度も調剤する機会はなかったな。
もう見なくていいや。
 
.
 
 こうしてみると、販売中止って合理化というか、無駄の削減という側面あるよね。
特に、今回紹介したものは、別に販売中止になってもそれほど困らないし。
むしろ、中止にしてくれて助かるものも多い。
 
 っと、調べてみると、もう一つ販売中止になったものがあった。
長くなったので、明日の記事で。

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ロキソニンSプレミアムの効果

 
  市販薬の話。
 
 最近、OTCにかかわる事も多くなったので気になったこと。
そう、ロキソニンSプレミアムだ。
 
 ロキソニンSプレミアム自体は、昨年から発売されている。
記事を書いた気になっていたけど、どうやら書いてないみたい。
 
.
 
 ものすごく大雑把に説明すると、
ロキソニンSプレミアムは、ロキソニンSをさらに頭痛に特化してる感じ。
ただし、眠くなりやすい成分が入っている。
 
 ロキソニンSは眠くなりにくいことがメリットだったのにね。
まぁ、それはまだいいだろう。メリットとデメリットのバランスが取れてる。
 
 問題は値段。プレミアムだけあってお高い。
 
ロキソニンSは12錠で648円(税別)
ロキソニンSプラスは、12錠で698円(税別)
Sプレミアムは12錠で698円(税別)
 
 あれ、Sプラスと同じ値段なの?
ところが、プレミアムは1回2錠服用する。
つまり、12回分と考えると24錠入りの値段と比べるのが正しい
(この辺も、ちょっとセコイ)
 
Sプレミアム24錠で、1180円(税別)
 さすが「プレミアム」を名乗るだけのことはある値段設定だ。(苦笑)
 
.
 
 まぁ、この程度なら書くほどのことはないかな、と。
値段高い方が効く気がするって人はいる。
プラセボ効果は、値段に比例するのだ。w
(後発品の効果が悪い理由でもあるかも)
 
.
 
 ところが、だ。このロキソニンSプレミアム。
ロキソニンSシリーズ全体としてみると、さらに強い「効果」がある。
普通に売り場に並べるとこうなる。
 
 (医療用と同成分!)ロキソニンS12錠       648円
 (胃にやさしい!)ロキソニンSプラス12錠     698円
(最強のロキソニン)ロキソニンSプレミアム12錠 698円
                ロキソニンSプレミアム24錠 1180円
 
.
 
 コスパ考えると、ロキソニンS一択である。
というか、他メーカーのプライベートブランドが最強になる。
 
一番のクソが、ロキソニンSプラスである。
これは、多くの薬剤師が叩きまくった実績がある。
 
「ロキソニンSプラスは胃にやさしい?」(2015.7.30)
http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2015/07/post-5c80.html
プレミアムは、まぁ、希望するならどうぞ、という感じなのだが……。
 
.
 
 こうやって並べると、一番のクソのロキソニンSプラスが売れる。
「松竹梅の法則」ってやつだな。
 
 とりあえず、ググって一番上にくるサイトにリンクしておく。
 
【松竹梅の法則】買い物で真ん中を選ぶ心理「極端の回避性」の利用法
https://swingroot.com/extreme-avoidance
 
 ようは、3つ並べると、真ん中選んじゃうことが多くなるという話。
ロキソニンSとロキソニンSプラスだけなら、Sプラスはほとんど売れないが、
もう一つ高いプレミアムが発売されると……
一番安いロキソニンSじゃなくて、真ん中のSプラスがよく売れるようになるのだ。
 
.
 
 個人的には、一番売りたくない商品である「ロキソニンSプラス」
でも、指名買いで来られるとなぁ……。
いや、その商品クソっすよ」って言いたくてしょうがない。w
  言っちゃってもいいような気もするけれども。
でも、プラセボ効果もバカにならないからなぁ。
 
 とりあえず、「胃にやさしい」って言っておけば、
胃薬成分が例え酸化マグネシウム33mgだろうが、
勝手に「胃にやさしく」感じてくれる。プラセボ効果なめんな。
 
 でも、メーカー的には一番お得だよねぇ。
Sプレミアムも、ある程度のメリットはあるから全く売れない訳ではないし。
(もっとも、鎮痛補助成分なんかより、「プレミアム」の名前による
 プラセボ効果の方がよっぽど高い気がするが。)
 
.
 
 メーカーは利益を出すためなら何でもする。
もう、マーケティングの上手さの唸るしかないね。
 
.
 
「この人の売る薬はなんでも効く」という薬剤師がいる。
どんな薬だろうが、その薬剤師が売れば魔法の薬になるのだ。
もはや、薬剤師というより呪術師に近いような気もするが、
それで、みんながハッピーならそれでいいんだろうか??
 
 私には絶対使いこなせないけど。<呪術
 

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パイロンPL配合顆粒とPL配合顆粒

 
 医科向けの総合感冒薬といえば、
圧倒的に「PL配合顆粒」じゃないかと思う。
 
 症状に合わせて薬を変える医師なら、
あんまり使わないかも知れないけれども。
(事実、私の勤務先ではほとんど使わない)
 とりあえず風邪薬、という感じならば、
PL出しておけば、っていう医師も多いと思う。
 
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 で、つい最近、これがスイッチOTCされた。
今まで市販されてなかったのが不思議なんだが。
「パイロンPL配合顆粒」
シオノギから発売されている。
http://www.shionogi-hc.co.jp/pylon-pl-karyu/
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 医療用との違いだけれども、
一包が、医療用1gに対して、OTCでは0.8gになっている。
よって、成分もすべて5分の4だ。
少し弱くされていると思って間違いない。
 
 あと、用法も(一応)変更されている。
1日3回毎食後、だ。
 
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 ほとんどの人は知らないだろうけど、
医科向けのPL配合顆粒って、添付文書上では、
1日4回経口投与」である。
 
 ひょっとしたら、医師ですら知らない人いるかもね。
ほとんどの医師は、1日3回毎食後で処方するし。w
 この辺は減量というよりも、
実際の処方の実情に合わせただけじゃないかと。(苦笑)
 
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 医科向けのPL配合顆粒が、体によくあっている人なら、
OTCという選択肢もあるよってことかな。
 
 使用上の注意としては、特に眠気に注意
このPL配合顆粒、人によってはトンデモなく眠くなる人がいる。
睡眠薬のかわりに服用するって人もいるくらい。って昔書いた気がするな。

あったあった。
 
「PL配合顆粒 1g 分1 寝る前」(2012.11.12)
http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/pl-2b0e.html
 薬学的には、代謝酵素の関係で。
自分の書いた記事もヒットしたけど、
お医者さんのブログも引っかかったので、リンクはっておく。
 
「CYP2D6からPL顆粒を考える その2」(野口内科BOLG)
http://jushinkai.doorblog.jp/archives/36321384.html
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 さて、問題はお値段である。
 
12包で1350円。
風邪薬で4桁いくと、かなり高いイメージ。
しかもこれ、4日分だよね……。(汗)
 
1包0.8gで計算すると、140.625円/g
医療用の薬価は、6.4円/g
 
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 薬価の20倍以上。www

 いや、医療用から一般向けに切り替わって高くなるのはよくあるけど、
20倍以上ってのはなかなかないよ。びっくりした。w
 
 こういうのって、原価で考えちゃダメなんだよね。
原価はタダ同然のものを、いかにして高く売るか。
それが商売ってもんだから。(苦笑)
 
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 うーん、私なら何かのついでに(風邪気味の時に)
医師にPL処方お願いするかなぁ。(苦笑)

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もうジェネリック発売なの?

 仕事の話。
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 今月、新たにいくつかのジェネリック医薬品が発売される。
9月に発売されるのは、オーソライズドジェネリックで、
オルメサルタンとロスバスタチン。めちゃくちゃデカい。
 
 オーソライズドジェネリックについては、今月中にちゃんと書く(予定)
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 今日のテーマは、「ジェネリックが発売されるタイミング」について。
先発品発売から、ジェネリック発売までの期間って、薬によって異なる。

「あれ、この薬はまだジェネリック出てないの?」とか、逆に
「え、この薬はもうジェネリック出るの?」と感じることもあるだろう。
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 今年の冬に発売されるジェネリック医薬品も、
ぼちぼち、製造承認が下りている。
実際に発売されるかどうかは、不明だけど。(延期することもあるし)
 
 その中で気になったのは、フェノフィブラートと、ファムシクロビルだ。
 
フェノフィブラート。今は先発品で「リピディル」と「トライコア」があるが、
この成分の薬、大元は「リパンチル」という薬。
発売されたのは、1999年である。
 18年も前の話になるのか。
 
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 一方で、ファムシクロビル。先発品は「ファムビル」なんだけど、
これの発売は2008年の話。
ってことは、まだ10年も経ってないのに、もうジェネリックが出るのか。
 
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 先発品の発売から、ジェネリック医薬品が発売されるまでの期間は、
薬によってマチマチである。
10年も経ってないのにジェネリックが出る薬もあれば、
20年近くたってもジェネリックが出ない薬もある。
 
 例えば、クロピドグレル(先発:プラビックス)は、早かった。
先発品の発売が2006年。後発品の発売が2015年。たったの9年
 
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 一方、ベポタスチン(先発:タリオン)は遅い。
発売されたのは2000年。17年前か。まだ、後発品は発売されてない。
 
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 なんでこんなに差があるか、というと、特許の問題になる。
 基本的に、物質特許が25年あるんだけど、
製品開発の、どの段階でこの特許を取得するかによって、
先発品発売から、ジェネリック発売までの期間が変わる。
 
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 というか、物質特許とってから25年、というのが基本。
でも、物質特許とって、すぐに発売できる訳ではない。(当たり前)
特許とってから、開発、治験を進めて、承認が下りて……、と時間がかかる。
 
 特許とって5年くらいで発売できれば、特許期間は20年残ってるはず
でも、特許とってから発売までに15年かかってしまえば、どうなる?
残っている期間は10年ということになる。
 
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 じゃぁ、物質特許を取るのを、限界まで遅らせればいいんじゃないか?
これはもちろん、その通りなんだけど、
特許申請を遅らせて、万一、他社に先に特許とられたら目も当てられない。w
 
 理想を言うと、他社に先駆けられないギリギリを狙うのがいいんだろうが、
これやるとリスクも高いだろうなぁ。(苦笑)
 
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 先発品の発売から、ジェネリック発売までの期間がまちまちなのは、
おもに、この物質特許取得の時期による。
 
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 ただ、他のケースもある。
調べてないけど、多分、フェノフィブラートは物質特許の問題じゃないだろう。
特許の種類はほかにも色々ある。
用法特許とか、製剤特許とか。
こういうのを、「後から」付け加えていって特許を守ってるんだ。
 
 フェノフィブラートの場合は、
1999年に、リパンチルカプセルが発売されている。
 
これが、2005年に「リピディルカプセル」にかわる。
ここで、なぜか規格が変わる。製剤の改良により、
より少ない量で効果が出るようになったので。
 今までの150mgが、新しいカプセルでは100mgでよくなった。
 
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 さらに2011年。錠剤が発売される。
ここでも技術改良により、また規格が小さくなった。
カプセルの100mgが、錠剤では80mgでよい、と。
 
 ってか、この改良のタイミングは、計画的なものだろう。
いかにして、フェノフィブラートのジェネリック発売を遅らせるか、
という戦略がうまくハマった結果だろう。
 
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 企業も生き残るためには、なりふり構っていられない。
利益を最大にするために、(合法的に)できることは何でもする。
 
 うまく特許を伸ばせる薬もあるけど、
すべて薬が、そうそううまく伸ばせる訳ではないので、
結果としてジェネリックの発売時期がバラける、という訳だ。
 
 
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