医薬分業その2
医薬分業とは何か?
一般的には、病院が処方箋を出し、それを患者さんが受け取り、
薬局で調剤してもらう一連のシステムのことをさすだろう。
しかし、本質的な意味としては、「薬剤師が医師にきちんと意見できる」
ということが、医薬分業だ。とかつて講義で聞いたことがある。
処方箋を出さなくたって、病院の中の薬局(薬剤部)に十分力があり、
「この処方はおかしい」と堂々と医師に言える風土があれば、
それは医薬分業できている、ともいえる。
たとえ処方箋を出していたとしても、病院と薬局が馴れ合い状態で、
病院側にまともに意見も言えないようでは、医薬分業とはいえない。
最近よく耳にする言葉にセカンド・オピニオンがある。
これは、ある疾患に関して主治医の意見を聞いた後、
(念のため)別の医師の意見を聞くこと、である。
医師だって(たまには)間違えることもあるし、
最新の知見を知らないことだってある。複数の意見を聞くことで、
患者さんが判断することができる。
実は、医薬分業は、このセカンドオピニオンと似たところがある。
医師の処方を、薬局がチェックして、おかしな処方があれば、
「疑義照会」という形で、医師に問い合わせする。(これは薬剤師の義務)
つまり、医師の(たまにある)ミスを、薬局がカバーすることだってある。
現実にはどうか怪しいところもあるが、薬剤師は薬のプロである。
医師よりも薬に詳しい。(言い切っちゃっていいか微妙なとこもあるが。w)
医師とは別の角度から、患者さんの状態をチェックする。
その結果、医師と別の意見になることも、もちろんある。
わかりやすい例では、何か症状があった(たとえば咳)とき、
医師は病気を疑うが、薬剤師は、副作用を疑うのである。
実際に、それで医師の処方が変わることもある。
直接医師に言うこともあるし、手紙やFAXで連絡することもあるし、
急を要さなければ間接的に患者さんに言ってもらうこともある。
薬剤師の一番の仕事は、実は処方箋のチェックである。
ハサミが使えて7の倍数が言えたらよい、なんてのは昔の話。w
これが、病院内で薬を出す場合、チェックがかからないことになる。
大きな病院の場合はまだマシ。薬局(薬剤部)がチェックをかけるから。
これが町のお医者さんだったりすると、医師の処方がノーチェックで出される。
いや、たいていは問題ないんだけどね。
万一、医師が勘違いとかしてたら誰も正してくれないってこった。
薬に関して、専門家が一度チェックをいれる。これは結構重要なこと。
院外処方で処方箋を発行すると、どこの薬局で調剤してもらうかは
患者さんの自由だ。これも大きなポイントである。
病院が薬局を指定することはできない。
現状、病院のそばの薬局でもらって帰る患者さんが多いが、
それでもある程度は近隣の薬局に処方箋がちらばることになる。
そうすると、その医師の処方は近隣の薬局すべてからチェックされる。
医師のほうもある程度プレッシャーを感じて欲しいと思う。
自分が普段、何気なく出している処方が、実は薬剤師の目から見たら
おかしいとうつってるかも知れないってことだ。
その場合、あちこちの薬局から疑義照会の電話がかかってくることになる。
一番近い薬局は医師に対する遠慮もあるから、(あっちゃいけないんだが)
あまり言わないかも知れないが、遠くの薬局は遠慮なしに言ってくる。
疑義照会しても、「先生がそれでいい」といえば、
よっぽどでなければ、薬剤師側が引くことが多い。
でも、しょっちゅう同じような疑義照会の電話がかかってくるとすれば、
その処方は、標準の薬剤師から見れば、問題がある処方なんだってば。
それは、おそらく医師が自覚することになるだろう。
隣の薬局だけなら言い含められるかも知れないけど、(ぉぃ)
処方箋出すってことは、常に自分の処方がチェックされるんだ、ってこと。
実際にあった例としては、
「起床時」に服用しなければならない薬を、「朝食後」で処方した病院があった。
いや、この薬は食後に服用すると効果が少なくなってしまう。
少し遠い病院だったが、疑義照会で電話を入れてみたところ、
「うちのドクターはいつもそうやって出してます」とか言われた。
そりゃ、もっとまずいわ!
近所の薬局は何も言わんのか、これで・・・。
かなり厳しく迫ったが、職員が困ってしまったようなので、一旦引いた。
この手の電話って、医師が直接出ることは稀である。
たいてい、間に入った事務員さんが苦労する羽目になる。w
まぁ、先生がそれでやれっていうんなら、うちとしては何も出来ない。
勝手に処方変える権利はないんだから。
でも、明らかに間違ってると思ったから、その薬のメーカーのMR(営業担当)に
動いてもらった。「先生のとこに説明にいってきて」。効果はてきめんで、
次回からちゃんと「起床時」で処方してくれた。w
せっかく、高い金を出して薬をもらうんだから、
一番効き目の高い方法で服用して欲しいわな。
・・・ってこんな風に、薬剤師は働いてます。
普段は、ハサミ使ってるだけと思われてるかも知れんけどw、、、
肉体労働者じゃなくて、頭脳労働者なんです。
医薬分業については、また時間があればもう少し書くつもり。
長くなったので今回はこのへんで。
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