タミフルで緊急安全性情報
今日未明、ついに厚生労働省から緊急安全性情報が出た。
タミフルに関して、10代の服用を原則禁止するように、とのことだ。
びっくりした。非常にびっくりした。そんなのありか?
経緯としては、前回の騒動から新たに2名、異常行動が報告された為。
幸いにして、命に別状はなかったが、やはり恐ろしい薬と認識されたよう。
命に別状がなかったのは、事前の注意のおかげだろう。
この点で、厚労省の注意勧告は正しかったと言える。
一般の人間から見れば「ああ、やっぱり」だろうし、むしろ「遅すぎる」
という認識だろう。でも、業界の方からみれば、「ありえない」だ。
異常行動の話は前からあった話だし、「タミフルが原因」とは限らない。
以前にくらべて「タミフルが原因」とする積極的な情報が出たわけではない。
にもかかわらず、この措置だ。
これ、誰が決めたんだろう?多分に政治的な決着に見える。
政治的というのは、「科学的でない」という点で。
疫学調査無視かよ。突っ込んだ税金はどぶに捨てたようなもんか?
せめて、大規模試験の結果がでる今年秋まで待って・・・と思うが、
国民感情を考えると仕方ない結果と言えるかも知れない。
かつてのソリブジン薬害事件を思い出す。抗癌剤との相互作用によって、
多数の死者を出した薬害事件だが、あの一件でも、ソリブジン自体は悪くない。
相互作用があることは、添付文書にしっかり書いてあったはず。
ようは、説明書を読まなかった医師や薬剤師が問題なわけで。
でも、ソリブジンが一方的に悪者にされた結果、日本商事という会社は非常に
大きなダメージを受けた。・・・今はアルフレッサと名前変わってるけどね。w
まぁ、当時の日本商事がどれほど情報提供したのかは詳しく知らないが。
疫学調査、リスクの問題を一般人に正しく伝えるのは、非常に難しい。
BSE(いわゆる狂牛病)のときも、ここが問題になっておかしなことになった。
疫学調査の結果からわかることは、
「日本に住んでいる人がvCJD(狂牛病)にかかる確率は1億分の1未満」だ。
何の対策を取らなかったとしても、日本で一人でるかどうか、の確率だ。
その程度のものに、必要以上の対策をたて、お金を使っている。
でも、「自分がその一人になる可能性」は0じゃない。だから怖い。よって、
もともと非常に低い確率を、さらに低くする為に莫大な手間と金を使っている。
それでも完全に「0」にはならない。・・・もっと他にすることないか?
今のところ、タミフルの調査でも
「タミフルの服用の有無と、異常行動の発生に因果関係は見られない」という結果だ。
一部、「タミフル服用なしの異常行動なんて、聞いた事もない」という声もあったが、
そりゃ、ニュースにならないだけだよ。
「インフルエンザの結果として、精神異常を来たしマンションから転落した」
なんて、誰がニュースにするもんか。
もともとインフルエンザによって異常行動があるんだから、
「タミフル服用後の異常行動」の可能性はどうやっても0にならない。
ただ、非常に社会的な影響の大きな薬なので、念のために大規模調査を行っている。
今回の決定は、その大規模調査を無視するものと言っていいだろう。
政治的には仕方がない。国民がそれを望んでいるんだから。
疫学調査のような科学的な話を、理解できる国民が少ないってことだろう。
・・・この辺は理科教育で何とかして欲しいところだなぁ。
子供の理科離れは、こんなところにも影響をきたしているし、その結果として
科学の恩恵を受けることができないばかりか、大金をムダにすることになる。
もうシーズンも終わることだし、せめてこの秋になるであろう
大規模調査の結果が出てからにして欲しかった。
こっからは補足。
今回、原則禁止となったのは「10代」限定で、10歳未満の子供には使用できる。
こうなったのは、異常行動が10代の子供で報告が多いからだろう。
10歳未満の子供は大丈夫、という訳ではないが、10歳未満の子供には
インフルエンザが悪化してインフルエンザ脳症を発症する危険がある。
なので、原則禁止というわけにはいかなかったんだろう。
逆に、10歳以上になっていれば、インフルエンザ脳症の確率は低いし、
もともと体力があれば、タミフルなしでも自力で治す事ができるだろうし。
もっとも、体格の大きな子供は、異常行動を起こしたときに止めにくい、
という判断もあるだろう。メーカーとしては「子供は原則ダメ」だと大量に
余っているドライシロップ剤が全てムダになるという事情もあったのかも。
(いや、これは邪推だけどw)
10代にタミフルが使えないとなると、リレンザが処方されるケースが考えられる。
ただ、リレンザも「公式報告がない」だけで、使用後の異常行動はありうる。
インフルエンザそのものに異常行動がありえるんだから。
おそらく、来年はリレンザの処方がどかんと増えるだろうから、
異常行動の報告が上がってくるだろうな。
結局、たとえタミフルを服用しないとしても、
インフルエンザの子供には十分注意を払う必要がある。
このポイントだけは、しっかり押さえておく必要がある。
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