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タミフルと異常行動の因果関係

 タミフル騒動に関して、情報が錯綜している。
というか、厚生労働省が迷走している、といっても良い。
もう、科学者の範疇ではなく、政治の話なんだろう。
科学の素人が、わけもわからず引っ掻き回しているように見える。

 タミフルを服用後に、異常行動があったからといって、
タミフルと異常行動に因果関係があるとは限らない
前にも書いたが、インフルエンザ脳症でも異常行動は考えられるし、
熱に浮かされただけでもそういうことはおこりうる。

 よって、因果関係を証明するためには、
タミフルを服用した患者が異常行動をおこす確率が、
タミフルを服用しなかった患者が異常行動をおこす確率よりも、
明らかに(有意差をもって)高い、ということが示される必要がある。

 タミフル服用後に異常行動を起こした患者の数だけでは、議論にならない。
服用しない場合と比較して、初めて因果関係の議論に移れる。

 ところが、タミフルを服用しないで異常行動を起こした例は、
普通は、報告されることがない。
 今日、一件判明したが、あれはこれほど騒ぎが大きくなったからだ。

 たとえば、子供がインフルエンザで、病院に行かずに寝かせていて、
夜中にわめきちらして、窓から転落する事故があったとする。
これ普通、保護者は表沙汰にしたくないと思うんだが。
「タミフル」という悪役がいるから、マスコミに流れて報道するのであって、
仮にマスコミが情報をつかんだとしても、タミフル騒ぎ以前なら、
ニュースにならないだろう。

 タミフルなしで異常行動を起こす確率は、しっかり調査しなければわからない。

 で、今のところ例の教授らのデータでは、
異常行動の確率はほぼ同じ。よって、タミフルとは因果関係がない、とした。

 でも、あまりにも影響が大きい薬なので、これでよし、としなかった。
もっとサンプル数を増やして、今シーズンでもう一度調査をしているところだ。
この結果が秋には出てくるだろう。それをみて、最終結論としたい、と。

 なので、もともと最終結論は出ていない。
正式には「因果関係は認められない」という表現だ。
これは、「因果関係はない」とは似て非なるものだ。
「因果関係は認められない」は、肯定も否定もしていない。
「まだよくわかっていない、調査中」という意味だ。

 今回の「因果関係を見直す」という厚労省の発表は、まるで意味不明だ。
いや、最初から見直すつもりで大規模調査をしてたんじゃないのか?w
死亡にいたらなかった例を検討していなかったから、というわけわからん説明つき。
だから、問題なのはタミフルなしでの異常行動の数であって、タミフル服用後の
異常行動の報告だけでは、因果関係については何も言えない。

 
だから、今回の「因果関係を見直す」云々は、
何の意味もない発言である。万一、因果関係があった場合に備えて、
予防線を張った?くらいか。

 私は、因果関係はないと予想している。
この理由は、次にでも書くつもりだけど。

 だから、注意喚起までは問題なかった。実際、それで助かった人間もいる。
でも、10代原則禁止ってのは「?」だな。
数名の「異常行動」の報告くらいでは、因果関係は全くわからない。

 しかも、ここまでいくとプラセボ効果まで考えることも必要になる。
「この薬を服用すると、異常行動を起こすかもしれません」と言って服用させる。
・・・暗示にかかりやすい人だったら、どうなるかわからんぞ、これ。

 ただ、薬が安易に使われすぎている、という指摘は当たっている。
発熱後48時間以内じゃないと効かないのに、そうでない例にも使ってるだろうし。

 受験の時期ならともかく、春休みに入るこの時期なら、
10代の人間はほとんどが寝て治すことができるだろうから、
タミフルなくても、特に困ることはないな。

 ただ、インフルエンザ脳症の確率が比較的高い小さな子供や、
インフルエンザから肺炎に移行して亡くなることの多い高齢者には、
非常に有難い薬だろう。
 インフルエンザ脳症は、毎年数百人が発症し、2,3割が死亡。
そうでなくとも、重い後遺症が残ることがある病気。
 インフルエンザ→肺炎のコンボは、高齢者が亡くなる典型例で、
毎年、かなりの数の死亡例(数千人くらいか?)がでる。

 新型インフルエンザの問題もあるから、
どうやっても全面禁止にはならないだろうけど・・・
今の厚労省の迷走っぷりをみると不安だなぁ。

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(~'09)仕事(薬局)」カテゴリの記事

コメント

はじめまして。
私の職場では、タミフルを飲まない子供達にも、幻覚は起きていますよ。
カロナールを飲んだら、幻覚が起きたので、タミフルを結局1回も飲まなかったという患者さんもいて、勿論その人は、症状が長引きましたが、自然治癒力で回復しました。
いつも窓口で、「タミフルを飲んでも飲まなくても異常行動の報告はありますから、お子さんから目を離さないで!」と言うのが、少々疲れ気味の、3月になってインフルエンザが爆発している地区の薬剤師です。

投稿: kei | 2007-03-27 00:57

 私の職場では、そもそも子供が少ないこともあって、どちらの報告もありません。

 実は、今回の緊急安全性情報の引き金となった子供も、もともと(タミフルなしで)異常行動を起こした経験のある子供なんです。
今日、じっくり緊急安全性情報を読むと、そう書いてありました。どこのマスコミも報道はしていませんが。(苦笑)

 今年のインフルエンザはピークが遅いですよね。そろそろ予防接種の効果が切れやしないかと、心配になってきています。

投稿: kitten | 2007-03-27 22:59

よろしければ教えて下さい。
脳症でも異常行動が出る(タミフルのせいか
見分けが付きにくい)という主旨のようですが、
インフルエンザ脳症は相当予後が悪いと
お聞きしました。タミフル飲んで異常行動
を起こした子供は、事故を食い止めれば
自然に回復しているのではないですか?

また、インフルエンザ脳症が
毎年数百人が発症という数字は何処で確認
出来ますか?

投稿: よしじい | 2007-04-16 11:41

国立感染症研究所感染症情報センターのページがあります。
 医療従事者用のインフルエンザQ&Aでは、小児において年間100~200例の急性脳症の存在が書かれています。

http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/fluQA/QAdoc01.html#q03

また、インフルエンザ脳症に関するガイドラインもあります。

http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/flu-domestic.html

 インフルエンザ脳症の予後は悪いです。
ソースは忘れましたが、死亡率が2-3割、後遺症が残るケースも多かったと思います。

 そう考えると、単なる熱せん妄の可能性の方が高いと考えるのが妥当なようですね。
(もちろん、タミフルの副作用の可能性もあります。)
インフルエンザ脳症の前駆症状と、単なる熱せん妄を区別するのも難しいようですが。

 実際、緊急安全性情報の元になったケースでは、「インフルエンザ脳症ではない」という判断が書かれています。

投稿: kitten | 2007-04-16 22:16

丁寧なお返事有難うございました。
ただ、異常行動は発熱をしていない時にも
起こるとお読みした事があります。純粋な
発熱によるせん妄とも言い切れないかも
しれません。ただ、何らかのインフルエンザ
による症状の一環という事では納得出来ます。

kittenさんのおっしゃる通り、これまで
(タミフルなしで)出現した異常行動が
タミフルによるものと質的に異なるのか、
発言頻度が増しているのかがポイントだと
思うのですが、なにせ頻度が低いので、
これを調べだすのは大変難しそうですね。

投稿: よしじい | 2007-04-17 09:48

 タミフル服用のみで、インフルエンザ陰性での異常行動も報告されていたりします。
 結局、1件1件の報告では、全体像は見えないので、統計による調査が必要なんです。
 現在調査中の大規模試験の結果に期待していますが、
これだけやっても、「わからない」という結論になる可能性もあります。
報道の人間が気軽に言うほど、簡単な問題じゃないんですよね。

投稿: kitten | 2007-04-17 22:00

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タミフルと異常行動どんなに優れた薬でも薬は所詮くすりであって食べ物ではありません。食べ物はからだの一部になりますが、薬は身体にとっては異物です。その薬に作用があるということは必ず反作用がありますね。タミフルと異常行動の関係もそうでしょう。正式な...... [続きを読む]

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