ギャバの話
健康食品の中でも、「トクホ」特定保健用食品なら、ある程度効果は確認されている。
じゃぁ、「トクホ」なら全て問題ないのか、というと・・・そうとも言い切れない。
今回は、ギャバ(GABA、γアミノ酪酸)を通して考えてみる。
ギャバは抑制系の神経伝達物質のひとつ。トクホとしては、ヤクルトのプレティオが、
ギャバを含有することで、トクホに指定されている。
「血圧が高めの方に」よい食品だ。
他に、発芽玄米とか、チョコレートにも含まれるらしい。
事実、体内でも血圧を上げる交感神経を抑制する働きをもつようで、
軽症高血圧の人や、正常だけれども血圧が高めの人が服用した場合、
血圧が下がったという報告がある。
だから、ギャバは「血圧が高めの方に」よい、というわけ。
・・・ここまでならなんの問題もないんだ。問題はこの先。
ギャバで検索してみればわかるけど、多くのサイトで「血圧降下」以外に期待している。
例えば、こんな感じ。
「ギャバは脳内に微量に存在する神経伝達物質です。
興奮を静める抑制系の物質なので、リラックス効果があります。
精神安定剤などの不安を抑える薬は、ギャバの働きを強める成分が含まれます。
脳の血流を活発にし、精神症状やイライラを緩和します」
なんか、リラックスできそうな物質に見えるなぁ。w
上記の文章はあちこちのサイトの宣伝文句を組み合わせて作ったものだけど、
科学的な誤りはないんだ。全部正しい。じゃぁ、何が問題かというと・・・
ギャバは、経口で摂取しても中枢(脳)まで到達しない。
この情報が抜けている。上記のギャバの効果は、全て「脳」での話だ。
ギャバが入った食品を食べても脳にまでギャバが到達することがない。
ってことは、精神安定効果とか、リラックス効果とかは認められないと思うぞ。
だいたい、外からとった異物があっさり脳まで到達したらえらいことになる。
食品由来のギャバがそのままの形で全て脳内にいったら・・・確実に死ぬ。
ごく微量で調節している物質なんだってば。
だからこそ、トクホとして認められているのは「血圧降下作用」だけなんだって。
それ以外の作用は、科学的には認められていない。
効果があるとしても、プラセボ効果で説明がついてしまいそうだ。
人間の身体ってのは、頑丈にできている。
何らかの効果を持つ物質は、そう簡単に体内(=血中)に入ることはできないし、
中枢(=脳)まで入るというと至難の業だ。
そりゃそうだろう。たいていの場合、それは「毒」になりえるんだから。
体内異物の侵入を防ぐために、人間はいくつもバリアーを持っている。
○○という物質は体内で××という優れた作用があります。
だから、○○という物質が含まれた食品をとりましょう。
こういう宣伝文句はよくみかけるが、
「じゃぁ、食品をとれば○○はしっかりと体内に吸収されるのか?」
「吸収されたとして、効果が発現される場所までたどりつけるのか?」
この疑問は、たいてい無視されている。人間のバリアーを甘く見すぎ。
うまく吸収されて、きちんと目標の部位に到達するのがどれだけ大変なことか。
薬に携わる人ならよくわかる。
製薬会社の人間は、健康食品がどれだけいい加減かと思っているだろう。
「それで効くなら、誰もこんな苦労せんわ!」
最後に、参照した情報源を。
独立行政法人 国立健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報
GABA http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail14lite.html
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