奈良の妊婦死産?問題
実は情報が錯綜していて、よくわかっていないことも多いんだが、
ニュースになっている、奈良県の妊婦の死産?問題。
当初ニュースでは、奈良県橿原市の38歳の妊婦が、腹痛で救急車を呼び、
妊娠「3ヶ月」とのこと。あちこちの病院に問い合わせたが、10件以上断られ、
ようやく、大阪の高槻の病院に搬送される途中で、さらに事故にあった。
なんとか病院についたが、胎児は死亡していた。
というニュースだったように思う。ところが、これがどんどんかわる。
そもそも、妊娠3ヶ月なら流産。当初はそういうニュースだったが、
現在は「死産」という表現に変っている。実は、妊娠7ヶ月だったらしい。
さらに、事故直前に「破水」という表現だったはずだが、「死産」に変っている。
こうなると、もう交通事故そのものは関係ないなぁ・・・。
でも、交通事故がなければニュースにもならんかったはずだが。
実際の状況もよくわからないことが多い。
そもそも、妊婦本人が妊娠を自覚していなかったという説もあったり。
少なくとも、主治医がいなかったのは確か。ということは、検診を受けていない。
だからこそ、妊娠何ヶ月かもわからなかったのか?
実は、奈良県立医大は受け入れ可能体制だったとかで、
救急隊員と医師との連携不足とかも言われている。
さらに、奈良では1年前に大淀病院での事件があった。
お産の最中に脳内出血を起こし、搬送しようとしたが各病院に断られ、
大阪の病院まで搬送されたが、妊婦が死亡した事件だ。
その事件ともかぶるから、報道されているんだけれども・・・。
さて、この事件の一番の問題点はなんだろう?
仮定として、救急隊員は「妊娠3ヶ月の妊婦」と思っていたとする。
いくつか医師のブログを読んだが、妊娠3ヶ月の妊婦の切迫流産なら、
「よくあること」らしい。少なくとも、1年前の大淀の事件とは比べ物にならない。
実際に、このケース、救命センターにも要請しているけれども断られている。
理由はぶっちゃけ、「治療対象じゃない」ってことだな。
正直、こういうことを書くのは人でなしのようで怖いんだが、
3ヶ月の流産では、母体に対する危険度は小さい。
一方、胎児に関しては、もはや何も出来ない可能性が非常に高い。
救命センターとしては、「うちは、命に関わる患者で手一杯。
(失礼だけど)その程度の患者なら、他でも対応できるだろう。」
という意図が見える。
ベッドが空いている、とかいう問題じゃない。
ベッドが埋まっているならソファーに寝かせろとかいうアホな意見もあったけど、
ようは、医師の人手が足りてないっていうことだ。
たとえベッドが空いていても、医師の手が空いていないなら病院は受け入れない。
だって、ベッドに入れて放置しておくわけにはいかんでしょうが。
それくらいなら、よその病院に行ってもらう方が、患者さんのためだ。
さて、一番の問題は、「この程度の患者ですら、大阪に運ばなければならない」
という奈良の実態だ。これくらい、何とかならないのか。
実際問題、人手不足というのももちろんあるけれども、
奈良の産科医療は崩壊しているんじゃないか、という指摘があった。
原因は、1年前の大淀の事件だ。
大淀の医師は、大きな過失もなく、最善を尽くしたと思う。
その結果として、残念ながら患者さんは亡くなってしまった。
そして、遺族から訴えられたのだ。
結果として、大淀病院は産科を閉鎖。奈良県南部のお産が
さらに危機的な状況になり、そのしわ寄せは奈良県全域に広がることに。
またこれは、こうも読み取れる。
「最善を尽くしても、患者さんが亡くなれば訴訟の危険がある」
特に、小児、産科は訴訟の危険が高そうだ。
産科は人手不足。その中で、救急患者まで見れば、事故の可能性もあるし。
いっぱいいっぱいの中でがんばっていても、訴訟の危険がつきまとう。
そうなると、病院としても救急患者はできるだけ受けたくない、と思うよねぇ。
MBSの「ぷいぷい」では、今回の事件、比較的まともな伝え方をしていた。
「現場の医師は、正義感をもって頑張っている」
「産科医が足りていないのが問題」
この問題、間違っても医師のせいにしてはいけないんだ。
これを病院や医師の問題にしたら、何も解決しない。
「おまえら、もっと頑張れよ」って言ってるに等しいんだから。
この言葉、死ぬ思いで頑張ってる人たちにかける言葉じゃない。
あんまりこういうことが続くと、ただでさえ少ない産科医がますます減ってしまう。
逃げてしまう、といってもいいかもしれない。
結局のところ、医療制度そのものの問題になってしまうんだけれども。
解決にはお金が絶対に必要。でも、国は医療をどんどん削ろうとしているんだよね・・・。
なんか、もうこの国の医療が壊れていくのを、眺めているしかないのかな。
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