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ドラッグラグ

 舛添厚生労働大臣が海外で承認されている医薬品の、国内審査期間を、
今までの「平均4年」から「1年半」に短縮する、と発表した。

 いや、実はこれは舛添さんがいきなり言い出したことではなくて、
前々から厚労省が言っていたこと。だけど、具体的に期限を「1年半」
と言ったのは、舛添さんが初めてかも。

 海外で普通に使われている医薬品が、日本では承認に時間がかかるため、
なかなか普通に使用できない状態にあることを、「ドラッグ・ラグ」という。
「ラグ」はタイムラグのこと。時間差ね。

 新薬の承認には、実際に患者さんに使ってもらって効果・副作用をみる。
悪い言葉で言うと、人体実験(普通は治験って言う)のあとで、
そのデータをもって厚生労働省が審査を行う、という手順。

 この期間が日本では長く、「平均4年」かかっていたわけだ。
でも、この期間は厚生労働省が決めているわけではない。
いろいろやった結果として4年かかってしまうってことだから。
これを1年半にしようと思うなら、対策をたてないといけない。

 とりあえず、厚生労働省の審査官の数が少ない、と言われている。
アメリカの10分の1しかいないから、まずこれを倍増するつもり、らしい。

 報道ではそこまで。でも、これだけじゃどうやっても1年半にはならんぞ
一番の問題は、日本での治験のやりにくさじゃないか?
最近は改善されつつあるけれども・・・。
だって、どう言い繕っても治験って「人体実験」なんだし。
「社会の、医学の発展のために、自分を犠牲にする」ってことだ。
その社会貢献の意識が、欧米の方が日本よりも高いってことなんだろう。

「最新の治療薬を使えるなら」って治験に参加する人もいるけれども、
ダブル・ブラインド(二重盲検)なら躊躇する人もいるんじゃないか?

 普通、実験には対照実験が必要になる。
医薬品の場合は、「新薬」を投与される人と、「偽薬(プラセボ)」を
投与される人とで、効果や副作用の違いの判定するんだけど、
誰が新薬で誰が偽薬にあたるかは、患者さんはもちろん、医師すら知らない。
(どちらも知らないから、二重盲検という。)

 しかも、承認されていない医薬品だから安全性は(完全には)保障されない。
欧米で使われている薬なんだから大丈夫、って言っても、人種差ってもんがある。
お酒を例にとって考えてもわかるんじゃないかな?
飲めない人、下戸の割合は日本人が圧倒的に多いだろう。
 逆に、日本の薬は欧米人には効かないことも多いし。

 とりあえず、審査官の人数を増やすのは当たり前として、
問題はその次。どうやって治験をスムーズに進めるかを改善する必要がある。
舛添さん、大風呂敷広げたのはいいけど当然次の一手も考えているんだよね?

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