「新型インフルエンザH5N1」
書籍の紹介。
今年に入って、「新型インフルエンザ」についての報道が多くなってきている。
なので、ネット上で調べてみたんだが・・・なんというか、色々な意味でヤバイ。
他人事だと思ってたら、えらい目に遭う。調べてみてわかったのは、
「これは、私がこの病気で死ぬ可能性がある」
ってことだな。背筋の寒くなる話だ。
なので、一度書籍で読んでみたかった。図書館でたまたまあったので、借りてみた。
「新型インフルエンザH5N1(岩波科学ライブラリー 139)」
著者は岡田晴恵、田代真人の二人。amazonではここ。
著者の二人は、国立感染症研究所の研究員。
肩書きを見る限り、田代氏は岡田氏の上司にあたるようだ。
新型インフルエンザに関しては、岡田氏の方が著作が多いんだけど・・・
なんか、危険を煽りすぎに見えないこともない。(苦笑)
いや、わかりやすくていいんだろうけどさ。
本書は、田代氏との共著なので、さすがに煽りすぎってことはないだろうけれども・・・
その分、非常に難しい本になっている。(苦笑)
たった100ページちょっとなのに、読みこなすのには時間がかかった。
多分、2,3回読まないと、完全には理解できなさそう。
とりあえず、これだけ押さえておけ、っていうポイントは、
新型インフルエンザは、通常のインフルエンザとは全く違う病気
ってこと。
インフルエンザという名前で甘くみてはいけない。
何しろ、現状で致死率60%超というとんでもない数字だ。
強毒性の高病原性インフルエンザってのは、今まで人類が経験したことがない。
通常の(弱毒性)インフルエンザは、上気道でしかウイルスが繁殖しない。
だから、風邪と同じような症状になるんだが、新型インフルエンザは、全身で繁殖する。
多臓器不全といった症状や、脳炎まで考えられる。
今までのインフルエンザ最大のパンデミックは、1918年のスペインかぜだ。
wikiでの項目があったので、はっておく。(スペインかぜ)
この時の死者は、少なく見積もっても世界で4000~5000万人。
日本でも45万人が死亡している。んー桁が多すぎてわからんな。
当時の日本の人口が5500万人だそうな。人口の1%弱。
世界全体では、第一次世界大戦(ほぼ同時期だ)の犠牲者が約2000万人。
その倍以上の人が、スペインかぜで亡くなっている。
この時のスペインかぜは、(当時の)新型インフルエンザだ。
ただし、この被害でも「弱毒性」インフルエンザ。
今、話題になっている新型インフルエンザは、このスペインかぜより強い可能性が高い。
当時とは医療技術は比べ物にならないし、科学技術の進歩もすさまじい。
ただし、人の移動も当時とは比べ物にならない。
スペインかぜは1年かけて地球を一周した。
新型インフルエンザは・・・下手すれば1週間で全世界に飛び火するかも。。
スペインかぜは、特に若い人間の死亡率が高かったことが知られている。
現在の「H5N1」鳥インフルエンザも、同じ傾向がある。
免疫反応が旺盛な人・・・つまり、元気な人の方が症状が重く、死亡率も高い。
ただし、まだ「H5N1」は、ヒトからヒトへの感染ルートが弱い。
ウイルスが、ヒトからヒトへの感染力を持ったときに、「新型インフルエンザ」が発生する。
ちなみに、発生するのは「時間の問題」といわれている。
極端な話、明日おこってもおかしくない。
救いとしては、実際に新型インフルエンザに進化(変異?)した場合に、
病原性が低くなる可能性があるってことかな。是非そうなって欲しいんだが。
もっとも、致死率が高すぎるウイルスは、あまり流行しないというメリットもあるから、
一概には言えない。致死率20%くらいで収まるのが一番危険かも。
結局のところは、新型インフルエンザは最終的にどうなるかわかんない。
一番最悪のケースは、致死率60%のまま高い感染力で全世界に散った場合だろう。
死者が億単位になりかねない。
最良のケースは、封じ込めに成功して、新型インフルエンザが発生しないケースか。
こっちは、よほどの幸運に恵まれないと無理っぽい。
本を読んだ感じだと、H5N1がヒト型ウイルスに変異した瞬間の病原性がどうなっているか。
これがもう、「運」だ。おそらく高いだろうことはわかっているんだけれども。
と、本の中身をわかりやすく言うとこんな内容だろう。(多分)
ただし、実際の本の中身は、学術的な話が多い。
HAの、アミノ酸配列がこうなっているから、病原性が高いとか、
ここのアミノ酸配列がこう変ると危険、とか。
・・・多分、分子生物学の素養がないと、読みづらいと思う。
ただし、その分、説得力はある。(理解できればね。)
一つだけ、文句をつけておきたい。
色々と図や表をつけてくれているのは有難いのだが、出典をつけて欲しい。
つーか、巻末に参考文献リストくらいつけて欲しい。
そうでないと、どこまで信じていいものやらわからんのよね。
本書は、科学的に(おそらく)正確な分、読み手を選ぶ。
一般人にはきついだろ、これ。
岡田氏の著作には、同じH5N1を題材にした小説とかもあるみたいだから、
そっちの方がわかりやすいかも。
田代氏といえば、最近のインタビュー記事が掲載されているページがある。
本書よりも、こっちの方がはるかにわかりやすい。w
ちょっと長い記事なんだけれども
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/interview/90/
願わくば、この不安が杞憂に終わりますように。
あれだけ不安煽ったけど、大したことなかったね。で終われば、
こんなに素晴らしいことはないだろう。
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