「H5N1」
岡田晴恵氏による、新型インフルエンザ日本上陸シナリオ。
前に紹介した新型インフルエンザの小説版。
amazonでは、ここ。
図書館にあったから借りてきた。
感想を一言でいうと、、これは、ホラーだ。めちゃくちゃ怖い。
amazonのレビューでは「煽りすぎ」という意見もあったが・・・
そんなこともないと思う。
強毒性の新型インフルエンザが発生したら、こうなる可能性は十分ある。
一応、小説という形態を取ってはいるけれども・・・
かなり、事実、現実に即した内容となっている。
多分、対策を考えている医療従事者や保健所、検疫の人間は、
本当にこれくらい悩んでいるはずだ。
もしくは、考えたくないから可能性から目を背けているか。
私の認識と違った点は・・・広がるスピードが半端じゃないってこと。
現在、WHOの新型インフルエンザフェーズ分類は、6段階のうちフェーズ3.
「トリからヒトへの感染が時々みられる。ヒトーヒト感染は起こらないか、
起こっても極めて稀。」という段階
これが、フェーズ4で、「限定的にヒトーヒト間の感染が発生する」
フェーズ5で「より大きな集団発生がみられる」
フェーズ6が「パンデミックが発生し、一般社会で急速に感染が拡大」となる。
こう書くと、フェーズ4からフェーズ6までかなり時間があるように見える。
でも、小説中では、フェーズ4からわずか5日でフェーズ5.
そこから2週間もたたないうちにフェーズ6.・・・早すぎる。
フェーズ4から対策を・・・なんて思ってると手遅れになる可能性がある。
具体的にどんなことがおこるか、はここに書いてある。
http://www.geocities.jp/influ3/simulation.html
医療が疲弊、崩壊。医薬品や物資も足りなくなるので、
最終的には患者は学校の体育館などに収容されることになる。
でも、医薬品は足りないので、できることはほとんどない・・・。
せいぜい、スポーツ飲料を飲ませる程度。
何も出来ないまま、ばたばたと人が死んでいく。
お葬式はできない。人が集まると感染するだけだし。
・・・それどころか、火葬すらできない。自治体の火葬能力を超えてしまう。
結果、「自衛隊が遺体の山を空き地に埋める」なんてことになる。
実は、厚生労働省のガイドラインでも「万一の場合」とのただし書きは
あるけど、そういう事態を想定して書いてある。
本書が一番強調している(と思われる)点は、
「事前の準備がしっかりしている人、企業、自治体は生き残る」
ということ。
全く準備できていない(もしくは、準備しようがない)人、企業、自治体は、
悲惨なことになる。
ちなみに、事前に準備したのに為す術もなくやられてしまうのは、
本書では、「医師」と「検疫」。最初からどうしようもないわな、これ。
もう一つ、大都市もあげておこう。
本書では、特に大阪がやばそうに書かれている(苦笑)
本書で書かれている検疫は、まるで無意味である。
インフルエンザは、発症前の潜伏期間でも、他人に感染することが理由。
潜伏期間中に検疫を通り抜けられたら、あとは拡散するだけだ。
本気で日本に入ってくるのを止めるつもりなら、
フェーズ4の時点で入国禁止、鎖国しないとダメだろう。
現実的にはそんな対応は不可能だ。
結論として、日本は対策が甘すぎる。
その原因として、著者は感染症の記憶がないため、としている。
日本は島国なので、歴史的にみても感染症の被害の少ない国だ。
それに対して、ヨーロッパでは、ペストなど甚大な被害を出した感染症があり、
その記憶がDNAに染み付いているらしい。(表現はオーバーだけど)
あと、行政の対応能力の問題。
こういう問題では、慎重さよりも拙速の方がよいんだけど、
「前例のない事態」ってのは、日本のお役人の最もニガテな分野だろうし。
と、とにかく恐ろしいことばかり書いてある本だ。
これが、現実になるか、というと・・・その可能性がある、というところだ。
絶対にこうなるとは限らない。いくつかあるケースの中で、最悪に近いものを
選べばこうなる、ってとこだ。
・・・実は、本当に「最悪」なケースじゃないところがなんとも。
著者は、これでも手を抜いている。(苦笑)
これほどひどくならない可能性も十分あるが、本書よりひどい事態もありえる。
長くなったので、続く。
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