インドネシアの危険な賭け
新型インフルエンザの話。
H5N1鳥インフルエンザは、ヒトへの感染が発生したらその都度、
WHO(世界保健機構)に報告が入る。
発生国は、ウイルスをWHOに提供する。
WHOはウイルスの遺伝情報を解析して、
ウイルスがどれほど「ヒト」型に近づいているかを検証したりする。
また、このウイルスの遺伝情報は、備蓄ワクチン(プレパンデミックワクチン)
の作成にも使われる。現在、流行している「H5N1」鳥インフルエンザから、
将来発生するであろう新型インフルエンザに(少しでも)効果のあるワクチンを
作ろうとしているわけだ。
ところが、鳥インフルエンザの発症が最も多い国である、インドネシアが、
この国際的な枠組みに難色を示している。
インドネシアの言い分は、要約するとこんな感じだろう。
わが国は、国際社会に鳥インフルエンザの情報やウイルスの提供を行ってきたが、
そのことがわが国に何の利益ももたらしていない。
鳥インフルエンザの発症者や死者が出るたびに、わが国の評判が悪くなる。
ウイルスの情報を提供して、備蓄ワクチンが作られるといっても、そのワクチンが
わが国で用いられることは無く、先進国の企業の金儲けのタネになっているだけ
ではないか。
というわけ。国際社会とは話し合いを続けているが、
ウイルスの提供が滞りがちになっている・・・のかも。
まだ、提供自体は続けられているという話も聞くが。
つい先日、インドネシアは鳥インフルエンザの発症状況を、
逐一報告しない方針を発表した。
死者数の発表も、半年に一度くらいにする、と。
この発表に、国際社会はとまどっている。
確かに、インドネシアの言い分もわからないではない。
WHOの言うとおりに素直に従っていても、自分の国は助からないかも。
現在でも、ある程度インドネシアに対する配慮はなされているが、
その配慮はインドネシアを救うためのものではなく、先進国を救うのが目的だ。
例えば、新型発生と同時に、発生国にWHO保有の備蓄タミフルを供給し、
新型インフルエンザを封じ込める。また、その感染のスピードを遅らせる計画は
すでにあるけど、それって、先進国が対策を整える時間を稼ぐためだ。
インドネシアが、鳥インフルエンザの発症や、死者数を報告しないと、
新型インフルエンザがインドネシアで発生したときに、
対策が遅れる可能性が高い。
・・・死なばもろとも?
これは、非常に危険な賭けである。
インドネシアは、このカードで先進国からの援助が欲しいのだろう。
備蓄ワクチンの無料援助とか、パンデミックワクチンの援助とか。
でも、失敗すると、全人類に被害が及ぶ危険な賭けなんだが・・・。
新型インフルエンザの対策は、先進国よりも途上国の方が大変だ。
世界で流行した場合、死者の大多数は途上国から出るとの予想もある。
自分の国の分すら確保できていないのに、途上国に回す余裕はないしなぁ。
とにかく、早急に話し合いで解決することが望まれる。
どこの国も平等に抱えてる問題だから、なかなか援助する余裕がないんだよな。
まず、自分の国が生き残ることが大前提だろうし。
各国が対策を整えて途上国の援助にまで回るのが先か、
新型インフルエンザが発生するのが先か。難しい問題だ。
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