史上最大の「賭け」
昨日は、ワクチンの基本的な考え方をおさえた。
今日は、実際にワクチンがどうなるか、について。
WHOは、今回の新型は病原性が穏やかなので、
ワクチンは季節性も並行して作るように、と言っている。
季節性のインフルエンザでも、国内で1万人程度が亡くなることを考えると、
これは当然の話。
ただ、悩ましいのが今回のA(H1/N1)がどうなるのか、誰にもわからない点。
変異した結果、病原性を増し、季節性の数倍の死者を出す可能性から、
消えてなくなる可能性まである。
季節性を優先した結果、新型へのワクチンが遅れて病原性が高くなれば、大惨事。
かといって、新型へのワクチンに力を入れたのに、新型が消えてなくなれば、大損害。
この、非常に難しい選択(というか、賭け)を迫られている。
ワクチンの選定は、季節性にしても「賭け」ではあるんだけれども、
新型に関して、その賭けの難しさは半端ない。
季節性と、新型を両方作れる余裕があればいいが、そんな製造能力はない。
世界各国のワクチン製造能力を全て新型に使っても、1年で世界全人口の1/3程度。
当然、全部新型に突っ込むという無謀な賭けはしないだろうから、
実際はもっと少ない・・・。
どうすれば、あらゆる可能性の中の死者数の期待値を下げられるか。
こんな恐ろしい計算が、世界の上層部で行われているんだろう。
一点張りは危険すぎるが、どう配分するべきか。。
さて、今度は日本国内の話。
日本では、今年は季節性インフルエンザのワクチンを、「約2500万人分」
用意するつもりだった。全人口の1/4足らず。
この製造能力を、全て新型に突っ込めばどうなるか?
実は、新型インフルのワクチンは、季節性と異なり確実に免疫をつけるために、
「2回接種」になる可能性がある。
そうなると、全力を突っ込んでも、全人口の1/8になる。
もちろん、季節性インフルのワクチンも必要だ。前述のとおり。
仮に製造割合を1:1とすると・・・全人口の1/16の新型ワクチンと、
全人口の1/8の季節性インフルのワクチン、となる。
どっかに余力はないのか?というと、ないこともないのだろう。
新型インフルが発生する前、
「新型インフルエンザのワクチンのみを全力で作って、
日本国民全てにいきわたるには1年半かかる」という記述を見たことがある。
こっちの記述を参考にするなら、半年で「全国民の1/3」のワクチンだ。
季節性インフルのワクチンを1:1で作るなら、「全国民の1/6」になる。
というわけで、半年後に新型のワクチンを接種できる人間は、
「3人~16人に1人」となる。
とても、全国民に行き渡らないのは明らかである。
製造割合にもよるが、季節性インフルのワクチンも圧倒的に不足する。
では、どうする?
奪い合い必至なら、接種する人間に順番をつけるしかないな。
今回の新型は、高齢者はかかりにくいという報告がある。
これを信用するならば、高齢者は新型ワクチンは後回しだ。
その分、季節性インフルのワクチンは、優先的に打ってもらおう。
新型は、なぜか中高生を中心に流行を広めた。
これを信用するならば、新型ワクチンは若者を中心にすべき。
もちろん、それぞれのハイリスク患者も接種優先順位は上げる。
・・・が、それ以前に医療従事者は最優先になるだろう。
医師、看護師は最優先。薬剤師は後回しにされそうだけど、、
早めに接種してもらえるとは思う。
あと、一番後回しにされるのが、「すでに新型にかかった人」だ。w
おそらく、この「優先順位議論」が、近い将来に沸騰すると予測する。
こういう議論は、日本人は苦手だろうな・・・。
.
海外から輸入するという選択肢はないのか?
その可能性0ではないものの、厳しいと思う。
まず、どこの国も、自国民を優先させるはずである、ということ。
他に輸出するのは、自分の国が終わってからじゃないか?
さらにいうなら、国際的な問題もある。
先進国による余剰生産分は、ワクチン生産能力をもたない途上国のために
使われるべきであろう。自力生産が可能な日本という先進国が、
途上国の分のワクチンを、金でもって買い集めたら、世界からどう見られるか?
もうひとつ、国内のワクチン事情、ワクチン行政のしばり、というか。
海外から輸入したワクチンを、あっさり使えるなら今まで苦労してないわ。(苦笑)
.
「新型インフルエンザのワクチンは、半年後にはできる」という情報を、
多くの人は、「半年後には自分も接種できる」と思っているんじゃなかろうか?
その認識は甘い。と言わざるを得ないだろう。
今年の冬から来年の春まで、1シーズンを、季節性インフルワクチンも、
新型インフルワクチンもなしで、過ごすことになる人の方が、多数派だと予測しておく。
もっとも、散々大騒ぎしたあげく、
「新型インフルエンザが消滅!作ったワクチン全て無駄!!!」
という、別の意味でショッキングな事態が発生する可能性も0ではないことを
明記しておこう。w
2009年、人類史上最大の「賭け」が行われようとしている。
果たして、人類はこの「賭け」に勝てるのだろうか?
なんてね。w
負けても、地球規模でみたら破産するわけでも破滅するわけでもないんだが。
一応、参考リンクをつけておく。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/19951.html
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