全頭検査はムダ
日本のBSE対策として行われている、全頭検査。
まぁ、当初からそんなことしなくてもよい、と私は思っていた。
それは、リスクの小ささを理解していたから。
私はBSE騒動の時に、
「よし、これで牛肉が値崩れすれば安く食べられる」
と考えた不届きものだ。w
もともと、何の対策を取らなくっても、日本でのリスクは低い。
そのリスクをさらに下げるのに、多大なコストを使うのは、
バランスに欠けるなぁ・・・という意味で、全頭検査に反対だった。
.
9/12付け、朝日新聞のオピニオン欄に、
食品安全委員会の吉川先生のインタビュー記事が掲載された。
(どっかに、テキストが転がってないか探したんだけど、
今のところ、ネット上では見つけられない。)
吉川泰弘・東京大学大学院教授は、実は少し前に話題になっている。
食品安全委員会への人事が、民主党などの反対で不同意になった。
この件も、ブログに書こうと思ってたけれども、もう旬じゃないので書かない。
詳しくは、松永和紀blogに書いてある。
http://blog.goo.ne.jp/wakilab/e/aaacd7eaf6d77a4da10f6aa75cb4778c
なぜか、関わることになった中西準子先生も雑感を書いている。
http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak481_485.html#zakkan485
まぁ、ここはもう終わった話なので、詳しくは触れない。
.
さて、本題の吉川先生の主張。
私も知らなかったこと、おぼろげに知っていたことが結構あった。
知らなかったことは、
国際社会から、「日本の牛肉はリスク管理できている」とされたのは、
つい最近、2009年の話である、ということ。
これは、特定危険部位の除去の対策、ピッシング禁止の対策が遅れたため。
アメリカは、とっくに対策を取っていたので「リスク管理できている」
国の仲間入りをしている。
つまり、国際社会の評価としては、
日本の牛肉は、アメリカの牛肉よりも危険、と判断されていたわけで。
実際、日本の牛肉を輸入禁止にしていた国は結構あったと記憶している。
日本の言う「世界一厳しい全頭検査」は、科学的にはあまり意味がないため、
評価されていない。それよりも、特定危険部位の除去が不完全だったために、
日本の牛肉のリスク管理の評価が低かった、という・・・。
.
月齢24ヶ月未満の牛に関しては、異常プリオンの検出が難しい。
難しいというか、実用レベルでは「不可能」と言った方がわかりやすい。
(「たまに」成功する、というレベルなんだろう)
つまり、24ヶ月未満の牛に、検査する意味は・・・ない。
最初っから、結果のわかっている検査をしているわけで。
例えてみよう。
入学試験が全て終わった後で、受験生全員におみくじを買ってもらう。
このおみくじで「大凶」を引いてしまうと、入学できない。
でも、このおみくじで「大凶」が出ることはないとわかっている。
このおみくじ、必要か?
(実は、厳密にはもう少しややこしい話なんだけど、
大筋として間違ってはないと思う。)
アメリカが全頭検査を拒否した理由がこれだ。
アメリカ「なんで、そんな無駄な検査やらないかんの?非科学的だ」
日本「いや、これはわが国ではどうしても必要な儀式だ」
・・・内向きにはそれでよくても、国際社会では通用しないわな。
吉川先生は、この「全頭検査」をムダだ、とはっきり言っている。
この主張なら、ムダとしか言いようがない。
しかも、このムダな全頭検査を続けても安全性は一向に上がらない。
本来必要な対策であった、特定危険部位の除去の対策が遅れた結果、
ついこないだまで「リスク管理できない国」認定されていた、と。
.
民主党の人間でも、わかる人はわかってるはずだ。
すなわち、この全頭検査は、「安全」のためにやってるんじゃない。
国民の「安心」のためにやってるんだ、と。
もっとも、民主党だけが悪いわけじゃない。
今まで政権与党だった自民党だって、わかってやってたはずだ。
「全頭検査はパフォーマンスに過ぎない」と。
.
国民を馬鹿にしてんのか?
「この程度の科学的な話でも、国民は理解できないだろう。
だから、安心させるために、パフォーマンスを行う。
なぁに、国民は馬鹿だからパフォーマンスの意味に気づかないさ。」
ってことだよね、結局。
即刻、全頭検査を中止すべきである。
そんな金があるなら、他に回せ。こんな「ムダ」なことはないと思うが。
しかし、リスクコミュニケーションというのは、難しいものだ、、
という話でもあるよなぁ。
環境ホルモンしかり、ダイオキシンしかり・・・。
一部の人が煽るのはわかるけど、政府がそう簡単に煽られてどうするよ。
・・・いや、煽られるのは政府というよりも、世論であり、政治家であるんだが。
ただ、少なくとも現状の説明はするべきだろう。
「日本は世界で一番厳しい基準でBSEに取り組んできたはずなのに、
なんで世界では「リスク管理できてない国」にされていたんですか?」
内向きな日本人ではあるが、たまには外も見てみよう。
.
| 固定リンク
« 父「で」あそぶ娘 | トップページ | 25%削減 »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- カテゴリ変更のお知らせ(2010.01.07)
- 充電予定(2009.12.31)
- 2009年を振り返る(その3)(2009.12.30)
- 2009年を振り返る(その2)(2009.12.29)
- 2009年を振り返る(その1)(2009.12.28)
コメント
リスクと必要経費のバランスは大事。実際日本人は賢明とは言えない。特に老人。
投稿: | 2009-11-03 12:56
賢明な日本人もいるんですけど。
そういう人の意見が主流にならないんですよ。
マスコミの問題なんでしょうね。
投稿: kitten | 2009-11-03 22:16