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感染症学会の提言の問題点(新型インフルへの対応)

 9/15に、日本感染症学会が、新型インフルエンザへの対応について、
緊急提言を行っている。

http://www.kansensho.or.jp/news/090914soiv_teigen2.html

 いくつか、ポイントをおさえて紹介したい。

1.新型インフルエンザは「弱毒」ではない。

 本来、ヒトのインフルエンザに強毒、弱毒という区別は存在しない。
また、新型インフルエンザの重症度は、「中等度(moderate)」である。
季節性と同じ「弱い(mild)」ではない。
 この重症度は、アジア風邪、香港風邪と同等であり、
季節性と同じと侮るのは誤りである。

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2.日本の致死率が低い理由

 今回の新型インフルエンザ、日本で報告されている死者数は、
諸外国に比べてきわめて少ない。
その理由として、日本は諸外国よりも、かなり早期に病院に受診して、
タミフルなどの抗インフルエンザ薬を処方してもらっているからだ。

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3.タミフル等の抗インフルエンザ薬を早期から使うべき

 WHOは軽症の若年者や健康な成人に対しては、タミフルなどの
抗インフルエンザ薬を必ずしも投与する必要はないとしている。
しかし、死亡例の多くは、抗インフルエンザ薬を使用していない。

 早期から抗インフルエンザ薬を使うことで、致死率が下がるのは明らかで、
WHOの提言に従う必要はない。

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 それぞれに、私から解説をいれる。

まず、1.新型インフルは弱毒ではない。

 「弱毒」の定義がばらばらで混乱していることは、以前紹介したとおり。

「弱毒性の意味は?」(2009/5/13)

 また、新型インフルエンザの病原性は、「中程度(moderate)」とされている。
発生当初は「弱い(mild)」だったが、確か、フェーズが6に変わる直前に、
moderateに引き上げられたと記憶している。6月くらいの話だ。

 その理由としては、ほとんど国内で報道されていないんだけれども・・・
死者の1/3~半数は、何の基礎疾患も持っていない」ため。
それまでは、「何らかの基礎疾患のある、ハイリスクの人が亡くなる」という
認識だったので、mildという表現だったんだけど。

 致死率は、おそらく全体で見ると新型の方が低いと思われる。
ただ、季節性のインフルエンザの死者は、大半が高齢者であるのに対し、
新型の死者は、比較的若い人(子供含む)が多い。
そこのところで、社会に与えるダメージが異なる。

 なので、たとえ季節性と同程度の致死率であったとしても、
新型をなめてはいけない、ということになる。
 ただし大多数の人は、季節性インフルと同等か、それより軽い症状
ってのが臨床上の印象のようだ。

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次に、2.日本の致死率が低い理由

 もちろん、途上国の中南米に比べて、医療体制が整っているのが大きい。
しかし、アメリカやイギリスなどの先進国と比較しても、
まだ日本の方が死者が少ない。おそらく、世界で最も致死率は低い。
抗インフルエンザ薬の早期使用が、致死率を下げていると思われる。

 これは、日本という国の国民性もあるだろうな。
風邪を引くと、すぐに病院に行く。すぐに薬を出す。
また、それが可能な医療制度であるっていうのも忘れてはいけない
(国民皆保険が効いている。アメリカだと抗インフルエンザ薬は、
 入っている保険によっては使えないことの方が多い。)

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最後に、3.タミフル等の抗インフルエンザ薬を早期から使うべき。

 WHOと見解が異なっているが。(苦笑)
これはこれで、ありだと思う。

 WHOは、基本的に「途上国を相手に」提言を出している。
つまり、途上国にできること。必要最小限のことしか言っていない。
(途上国相手に、「すぐタミフル使え」って言っても無理だろう。)

 そりゃ、全員に抗インフルエンザ薬を使うことができるなら、それでいいさ。
そんな大盤振る舞いができるのは、先進国の中でも限られた国だけだろう。

 日本では全員にタミフル使うくらいの余裕もあるし、いいんじゃないか。
副作用とか起きなければいいけど・・・。たぶん、みんな忘れてるな。w

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 ここまでは特に問題がないんだけれども。。

 もう一つ、「検査キット」に頼るな、という話がある。
これは、この提言でもそうだけど、最近よく言われる話でもある。

 インフルエンザ簡易検査キットは、それほど感度が高くない。
特に感染初期は、感染してても陰性と出ることが多い。
今までなら、簡易キット陰性なら、抗インフルエンザ薬は処方しない。
(というか、保険上できないんじゃないのか?)

 ところが、この数日の遅れが命取りになるケースがいくつかあった。
なので、検査キットを信用せずに、医師の裁量で新型インフルエンザと
判断すれば、抗インフルエンザ薬を処方すべきだ、という話。

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 これは、言うだけなら簡単だよなぁ、と思う。
まず、現実的な話として、、保険通るんだろうな、それ。(苦笑)
医師の判断でタミフル出したとして、たとえば健康保険側が、
「それはダメ」とか言うことがあれば、医療機関は保険からお金が入ってこない。

 普通に考えて、厚生労働省がいいと言ってるんなら、、と思うが、
保険をなめちゃいけない。なので、医療機関側としては、確実な保証が欲しい。

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 あと、「新型インフルエンザ」の場合は、簡易キットの検査をあてにせず、
抗インフルエンザ薬を出しても良い、とする。
これ、「季節性インフルエンザ」の場合はどうなの?
ここを「今までどおり」とされると、現場はいずれ大混乱に陥る。

 今のところ、A型インフルの症状であれば、ほぼ9割方新型だろう。
でも、冬になって季節性インフルがある程度混ざってくればどうする

 感染症学会の提言では、「各地のサーベイランスを徹底せよ」と。
つまり、どの地域では新型が流行っていて、どの地域では季節性かという
状況を見極めて、適切に対処しろ、ということだ。

 ・・・普通に考えて、無理だろう。
それなら、季節性であっても検査キットの結果を待たずに
抗インフルエンザ薬を出すべきだ。

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 さらに、そうなると日本人の習性として「早めにタミフル」となる。
検査キット陰性のインフル疑い患者がいたとして、
本人もタミフルを希望する。医者としても、ここで処方せずに
万一のことがあれば、訴訟の危険性まである、となれば、
タミフルを出してくるだろう。

 いくら5000万人分の備蓄があっても、そこまで乱発すれば
タミフルが枯渇する可能性はないか?
下手すれば、風邪を引くたびにタミフルを要求する患者まで出るぞ。

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 あとは、個人的な感想だ。
もちろん、国益は大事だと思うが、もう少し国際貢献できないか?

 金持ち国の日本は、自前でワクチンを製造する力をもちながら、
少しでも早く手に入れるために、金の力で輸入する。

 しかも、他国では貴重品のタミフルを、湯水のように浪費して、
死者数をごくわずかに押さえ込もう、と。

 途上国でどれだけ死のうが知ったこっちゃない、と言わんばかり。
備蓄タミフルを供給せよとは言わんけどさ、
大量にタミフル使うんなら、ワクチン輸入する必要ないんじゃない?
その分、途上国にまわしてやればいいのに。

 WHOからは、白い目で見られそうな提言だと思うぞ。(苦笑)

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