対照実験の必要性
いきなり問題。
対照実験とはどのような実験のことか?
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答え:結果を検証するための比較対象を設定した実験。
例えば、鉄と硫黄を混合して加熱すると、硫化鉄となる。
硫化鉄は、磁石にくっつかない。
塩酸をかけると、腐卵臭(卵の腐ったにおい)がする。
ところが、この実験だけでは本当に硫化鉄になってるのかわからん。
そこで、対照実験が必要になる。
鉄と硫黄を混合しただけで、熱を加えないものを用意する。
磁石はくっつく。
塩酸をかけると、無臭の気体が発生する。
対照実験があって、初めて、
鉄と硫黄を混合して加熱してできる物質は、
混合しただけの物質とは異なる性質をもつことが証明される。
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この実験例、覚えている人もいるんじゃないかと。
中学校の理科で、頻出する実験である。(今でもそうかな?)
つまり、対照実験という言葉は、中学校で習っているはずだ。
一つの事象だけでは、大したことは言えない。
他の事象と比較することで、初めて証明ができる・・・ということ。
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と、ここまでが前ふり。
natrom氏のブログに、ニセ科学を見抜く練習問題が出ていた。
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090925
以下、一部引用
インフルエンザの患者さん(成人)のうち、
71%はインフルエンザのワクチンを接種していた。
これではワクチンに予防効果があるとは言えない。
さて、問題。
Q.上記のデータからインフルエンザワクチンの予防効果の
有無について判断できるか?
引用終わり。
答えは、「判断できない。」対照がないから。
インフルエンザにかからなかった人の、ワクチン接種割合まで
調べないと、何も言うことはできない。
例えば上記の例でも、「ワクチン接種率が95%」とか言われると、
ワクチン非接種者の方が、圧倒的にインフルにかかりやすいのがわかる。
逆に、ワクチン接種率が70%程度であれば、ほとんど効果がないと言える。
詳しくは、上記リンクを参照のこと。
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ワクチンの効果について、ここで論じるつもりはあまりないが、
簡単にふれておく。
ワクチンって当たり外れが激しい。
なにせ、「半年後に流行しそうな株」を先読みして作っている訳で。
読みが当たれば、有効率は高いけれども、
外れれば、それほど有効ではない。
・・・それでも、接種しないよりは、接種したほうが重症化は
防ぎやすい、といわれている。
昨シーズンのワクチンは、かなり「外れ」っぽい印象だ。
ワクチンを接種してるはずの人が、何人かインフルかかってたし。
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インフルエンザのワクチンは、「接種しておけば、まずかからない」
というほど、強力な効果はない。
でも、「接種してもムダ」というほど、弱くもない。
中途半端で、説明しずらい。w
個人の結果としては、「インフルにかかる」「かからない」と、
結果が白黒はっきり出てしまうので、
「接種しておけばかからない」とか、「接種してもムダ」とかいうような、
極端な話になりがちである。
それも、自分の周りの体験談を元にしているだけに、どうしても引きずられる。
一個人の体験を、全体に当てはめることはできないんだけど、
やっぱり「自分の体験」ってのは強く印象に残るから。
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話がずれてしまった。
この記事の本題は、統計データの読み方。特に、対照の重要性について。
「対照実験」という言葉は中学校で習うはずなんだけれども、
たぶん、覚えている人は少数派なんじゃないかと。(苦笑)
理系に進んだ人か、文型でもロザン宇治原のような秀才なら
覚えているかも知れないが。w
科学的な数字の見方ってのは、社会に出ても必要になる。
ここんとこ、義務教育でしっかり教えるべきだろう。
そうすれば、変な詐欺にひっかかる人が少なくなるだろうに。
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