病院の中の勉強を。
調剤薬局の薬剤師は、病院の中を知らないことが多い。
6年制の薬剤師なら、まだ病院実習をしっかり受けてくるだろうけど、
それまでに卒業した薬剤師(もちろん、私も含まれる)は、
病院の中の実務をほとんど知らないことも多い。
難しい領域だと、抗がん剤、化学療法なんかは、
ほとんどが注射剤なので、薬局にいてもまるでわからない。
でも、患者さんは来るから、知識としては知っておいたほうがよい。
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先日、こんな例があった。
タスオミン錠(一般名:タモキシフェン)の処方箋がきた。
これは、ホルモン剤で、乳がんに使われる。
薬歴を見ると、その患者さんは1年ぶりの来局。
1年前も同じ薬が出ているが、1年分出てた訳ではない。(当たり前)
私は、「この患者さんは、おそらく他の薬局で薬をもらっていたんだろう」
と解釈した。近くの医療機関の処方箋ではなかったし。
気が向いたとき、(あるいは、何かの都合で)、たまにこっちに処方箋を
もってきてくれるんだろう、と。
ところが、後輩の新米薬剤師は、「再発したんですかね?」
とボケたことを言ってくれた。(患者さんに言ったわけではない。さすがに)
とりあえず、「何をぼけとんねん」と突っ込んではみたものの。
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簡単に解説すると、
タスオミンは普通、乳がんの手術後に、再発を抑制するために服用するもの。
なので、「タスオミン処方」=「乳がん再発」な可能性は低い。
(もっとも、薬の服用をさぼっていたケースは考えられる。)
新米薬剤師は、タスオミンは発生した乳がんを治療する薬だと思っていた訳だ。
で、私が「そんなわけあるか!」と突っ込んだ。
と、こ、ろ、が。
薬の添付文書を見ても、効能効果/乳がん。と書いてあるだけ。
具体的にどんな時に使用するかは書いていない。
「外科的手術後、再発抑制のため5年間服用」ってのが常識なんだけれども、
その常識は、どこにも書いていない・・・。
確かに、私も教科書で勉強した記憶はないなぁ。
なんで知ってるか、と言われると・・・おそらく、新聞の医療欄で読んだとか、
一般向けの医療書に書いてあった、とかだろう。
薬学教育として、教わった記憶はない。
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でも、医師や病院の薬剤師(たぶん看護師でも)なら、
もう常識のレベルなんじゃないかと思うんだけれども。
大学を出ている薬剤師が、そんなことも知らない。それも教わっていない。
これに、ちょっと頭を抱えてしまった。
さて、こういう内容を一体、どうやって勉強したらいいんだろう?
また、どうやって教えていけばいいんだろう、と。
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この事例、私は「偶然」知っていただけだ。
もちろん、それなりに勉強してるから知っている、ということもあるけど。
でも、他の事例ならどうだろうか?
病院の中なら常識とも言えるようなレベルの話を、
全く知らない、わからない、ということも十分ありえる。
薬の説明書にはこう書いてある。でも、実際には全然違う使い方をする。
そういうことって結構ある。実際、わからんことも多いけど、
薬局の薬剤師相手だと、誰に聞いてもわからないことの方が多い。
(今の職場だと、私がわからなければたいてい誰もわからない。)
例えば、Dソルビトールは何のために使うのか、とか、
ガスター散を子供に使うのはどんなとき?とか。未だにわからん。
添付文書にも、「治療薬マニュアル」のような薬の辞書にも載ってない。
誰か、知っていたら教えて欲しいんだけど・・・
でも、病院の中の人なら、あっさり知ってそうな気がする・・・。
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つまり、問題は薬局薬剤師が臨床に疎いこと。
さらに、教科書にも載っていないから、勉強のしようがないこと。
でも、しっかり知ってないと、医師と対等に話すなんてできないし。
それどころか、患者さんにすら馬鹿にされてしまう。
それでも、勉強するために一番手っ取り早いのは・・・
患者さん本人に訊いてみること、だろうな。
恥ずかしいけど、しょうがない。知らないんだから。
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