ヒヤリハット
薬局での出来事から。
ヒヤリハット事例というものがある。
エラーや過誤、事故というくくりでよく言われる内容だ。
なんとかの法則・・・(忘れた。w)
ひとつの重大事故の裏に10個の軽い事故があり、
10個の軽い事故の裏に、100個の「ヒヤリハット」事例がある。
ヒヤリハットって、カタカナで書いてあるけど、日本語だ。w
「ひやり」とした、とか「ハッと」した、という
ミスを見つけてドキリとした経験のことを言う。
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先日、私の職場で立て続けに2件あったので、紹介してみる。
処方1
「ノボラピッド30ミックス注フレックスペン」 3キット
これを、「ノボリン30R注フレックスペン」で調剤しそうになった。
どちらもインスリン製剤ではあるが、効き方は異なる。
監査(患者さんに渡す前に、薬剤師が確認する)で発覚したが、
調剤した人間は、「名前が似てるからつい・・・」と。
雷を落としておいたが。w
インスリン注射で違うものを調剤すると、低血糖症状が現れることがあり、
大変危険。患者さん本人が気づいてくれるとは思うが・・・恐ろしい。
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もうひとつ。こっちはもっと危険なミス。
処方2
イスコチン原末 100mg 朝食後 14日分
これは、処方箋がこう記載されていた。
実は、散剤(粉薬)の処方箋表記の方法は、統一されていない。
成分量で書いてくる医師もいれば、製剤量で書いてくる医師もいる。
たとえば、アスベリン散10%なら、製剤1g中、100mgがアスベリン。
伝統的に、「mg」表記なら成分量。「g」表記なら製剤量とされる。
アスベリン散10% 30mg、と、
アスベリン散10% 0.3g
は、同じ意味になる。上の処方なら、薬剤師は、30mgから0.3gと計算して、
実際には0.3gを秤量することになる。
元の処方に戻ろう。
イスコチン「原末」 100mg
mg表記ってことは、これは成分量。ってことは製剤量に計算して秤量する。
ところが、、「原末」とある。これは、何も足していないってこと。
いわば、「100%イスコチン」という意味だ。
それなら、100mgを単純に単位を変えて、0.1gでよい・・・のだが・・・。
担当の薬剤師は、何をトチ狂ったのか1回1gで秤量した。
私が指摘しても、何を間違えているのかしばらく気づかなかったほど。
(当然、こいつにも雷を落とした。w)
えーっと、背景を説明すると、「原末」の医薬品ってごく少数だ。
私が知っているのは、他にアスピリンとピリナジン、ピラマイドくらい。
逆に、「10%」の医薬品は結構ある。
つまり、100mgを「何の計算もなく」0.1g計るという作業は滅多にない。
むしろ、100mgを「1.0g」で計るのはしょっちゅうだ。
くだんの薬剤師は、イスコチンの調剤は初体験だった。
こういう状況が重なった結果、10倍量を計るという恐ろしいことが起こった。
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私が発見したので、未然に防ぐことができたが・・・
恐ろしくなったので、他の薬剤師に確認もこめてテストしてみたところ、
即答できたものは一人もいなかった。情けない。
もちろん、ゆっくり考えれば確実に答えは出るんだけど。
もっとも、「私がテストする」から萎縮して答えが出ないという傾向はある。
(常に、裏のある問題しか出さないからな。w)
それにしても、これくらい即答してくれよ。。
最悪、私がいない時だったら調剤事故を起こしていた可能性があった。
ギリギリで止まったと信じたいけど。
粉薬で間違えると、先ほどの注射と異なり、患者さんが気づけない。
そのまま服用することになる。間違えるときは、たいてい1桁間違えるので、
10倍量とか、1/10とかで出ることになる。そうなると影響が大きい。
重大な調剤事故の、半分くらいは粉薬でおこる・・・。
絶対に間違えてはならない、と自戒したい。
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コメント
私は月に一度通院し院外処方で薬をもらっています。
薬は錠剤で毎回同じなので、処方されたものを全く疑うことなくもらってましたが、これを読んでからはきちんと確認してもらうようにしたいと思いました! ところで院外処方の場合、敬遠したい理由などありましたら私見でも結構ですので教えて下さい。
投稿: ななし | 2010-01-27 00:49
コメントありがとうございます。
薬の確認は大事です。薬剤師がこんなこと言うのもなんですが、
100%は信用しないでください。人間のやることですから。
(といっても、95%くらいは信用して欲しいです。)
院外処方箋で敬遠したい理由・・・。
ちょっと質問意図がわかりにくいんですけれども。
保険薬局として、こういう処方箋が来たら困る、というのは、
揃えるのに手間ヒマがかかる処方箋ですね。
聞いたこともないようなジェネリック(後発)医薬品を、
メーカー指定で来られると、手配するのに1週間かかることもあります。
チェーン薬局でない、個人経営の薬局だと、特にそうですね。
在庫管理の問題もありますので、一回しか使わない薬を取り寄せたりすると、ぶっちゃけ赤字になります。
投稿: kitten | 2010-01-27 21:48
わかりにくい質問でしたが早速回答をありがとうございます。
以前、漢方薬が処方され病院と薬局で扱ってるメーカーが違った様で薬剤の事典!?を調べたり色々と電話をして調べていました。
自分ではこんなに大ごとになるとは思っていませんでした。それからは迷惑なのかも?と思う様になり質問させてもらいました~
これからも楽しみに読ませてもらいます♪
投稿: ななし | 2010-01-28 00:32
子供が粉薬を飲んでいるのですが、今回処方されたものを飲むと「味が違う」といいます。もう、何年も飲み続けているもので、今まで、問題なく飲んでいたのに、「はきそう」と言って、なんとか飲んでいます。家族も、「何となく、色が違う気がする」と言っています。正直言って私はわかりません。
粉薬の成分を調べてもらえるようなところはどこかありませんか
投稿: うみか | 2011-10-03 23:39
>うみかさん
一番確実なのは、調剤した薬局に聞いてみることです。
薬局によっては、記録が残っているところもありますし、
しょっちゅう調剤している薬剤師なら、色を見れば分かります。
成分を調べるのは、、不可能ではないですが、簡単ではないです。少なくとも、町の薬局でできるレベルではないです。
同じものを同じように作ることはできるので、、
それと色、粒状、味を比べれば、違っているかどうかは
判断がつきます。
親御さんから、「子どもの薬が何か違う気がする」と言われて、
「そんなはずはない!」と怒る薬剤師は、いないと思います。
親にとって、子どもの薬が気になるのは当たり前ですので、
堂々と聞かれた方がいいです。
それで、たとえ薬が間違っていなくても、薬剤師は怒ることはなく、
「間違ってなくてよかった」とホッとすると思います。
(私なら、間違っていないと思っても念のため取り替えますね。)
投稿: kitten | 2011-10-04 00:10