リウマトレックス 3cp分3
疑義照会実例。
今回は、どちらかというと失敗例だが・・・。
<処方実例>
リウマトレックスカプセル2mg 3カプセル
分3 毎食後 1日分(土曜日)
以上
この処方を、よりによって金曜日の夜に受け付けた。
患者さんに聞いてみたところ、この薬を服用するのは初めて。
症状は、手のこわばり、とのこと。
.
リウマトレックス。一般名はメトトレキサート。
免疫抑制剤の一種で、関節リウマチの治療に使われる。
通常、1週間に1日ないし2日だけ服用して、後は休薬する。
つまり、この処方の場合、土曜日だけ服用。日~金は服用しない。
初めてなので、1週間分(1日分)処方。
問題は・・・「分3 毎食後」の部分だ。
リウマトレックスの添付文書に書いてある用法は・・・
「1週間2カプセルの場合、1日2カプセル、12時間毎」
「1週間3カプセルの場合、12時間おきに3回に分ける」
「1週間4カプセルの場合、12時間おきに3回で、2-1-1で服用する」
となっている。
「12時間おき3回」ってのは、2日にわたる。
たいがい、「1日目の朝、夜、2日目の朝」の3回になる。
つまり、1日3カプセル(だけ)という処方はありえない。
(2日目にもう1カプセル追加されるなら、ありえなくもないのだが。)
しかも、よりによって「毎食後」ときた。
そんな間隔で1日に3回も服用する薬ではない・・・。
リウマトレックスは、服用方法によっては重篤な副作用が起こる可能性がある。
(過去に、死亡事故が起きたこともあるくらいだ。)
こんな処方をスルーする訳にはいかない。
.
さて。問題なのは、この処方箋が金曜日の夜遅くに持ち込まれたということ。
で、病院は土、日が休み、と。処方箋の指示は「土曜日に服用」。
でも、疑義が解消されない限りは、調剤できない、、ので、
万一、医師に連絡がつかないと、なすすべがなくなる。
月曜日まで待ってもらうわけにもいかんし。
そこで、病院のルール無視で最優先で疑義照会をかけた。
通常は、FAXを送る必要があるのだが、無視。
そんなことしている間に先生に帰られてしまったら、終わりだ。
病院の薬剤部に電話して、早急に医師に確認してくれ、と訴えた。
.
結果・・・
.
薬剤部「先生はそのまま出してくれと言ってます。」
.
さて、困った。こんな能無し回答が帰ってくるとは、予想していなかった。
ちょっとかみついてみたが、それ以上の回答は引き出せない。
ちょっと考えてみる。可能性としては、
1.リウマトレックスを分3で出す処方は、添付文書には書かれていないが
専門医の間では、時々行われるエビデンスのある処方である。
2.医師が薬の使い方を全く理解していない。
薬剤部もそれを指摘できないほどの能無しである。
の、どちらかになるんだが・・・。
私は十中八九、2だと思っているが、1の可能性も否定できない。
(誰か知ってたら教えてください。)
ただ、1だとしても、少なくとも薬剤部にそれを説明できるだけの
能力がないことは確かだ。
まぁ、どっちに転んでも「薬剤部=能無し」は確定か。(汗)
最善の策は、「お前らに用はない、医師を出せ!」とやることだったと思う。
ただ、時間が遅かったせいもあり、この時はここで折れてしまった。
「医師照会済み」ですませて、そのまま投薬した。
ただし、副作用に注意するように、患者さんには厳しめに伝えた。
折れた理由としては、「1週間3カプセル」自体は問題がないということ。
「1日3カプセル」も、ありえない訳ではない、ということ。
症状と薬の選択に、それほど間違いがあるわけではない、ということ。
さらに、すでにこの時点でかなり患者さんを待たせてしまっていることもある。
.
うーん、それでも今になって考えれば、ちゃんと医師と話した方がよかった。
(直接医師とは話せないだろうから、薬剤部とケンカすることになっただろう。)
ただ、最低限の疑義照会を行ったことで、万一何かあったときに責任転嫁できる。
悪い言い方をすれば、アリバイ作りのようなもんだな。
「私は、ちゃんと本当にこの処方でいいのかどうか確認した」んだから。
これで何か不具合があれば、100%医師(病院)の責任だ、と言える。
これが結構重要。例えば、疑義照会なしで健康被害が発生した場合、
医師と薬剤師の責任は、50%ずつになる。薬剤師にも「疑義照会しなかった」
という重大な過失があったことになるので。
.
それでもすっきりしないのは、自分の中で「疑義」が解消してないからだろうな。
そして、本来ならその状態で投薬することは法律に反しているわけで。
なので、少し後悔している。
.
後日、他の病院の処方箋でもリウマトレックス1日3カプセルの処方箋を見かけた。
(この時は、1日2回朝2夕1だったから、前のよりはマシだが。)
となると、本当にエビデンスがあるのかも知れないなぁ・・・。
しっかりメーカーに問い合わせたほうがよいのかも知れない。
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コメント
何で添付文書道理にこだわるんです?
そもそも朝2C、12時間後1Cだろうと
毎食後1Cだろうと問題にするようなことですか?
副作用は増大するとでも?
>医者が薬の遣い方を全く理解していない
だって。。
う~ん、違う気が。
理解していないのは、あなたのようですよ。
投稿: 医師 | 2010-08-08 21:50
コメントありがとうございます。
お医者さまからのコメントは、勉強になるのでとてもうれしいです。
>何で添付文書道理にこだわるんです?
私が、「保険薬剤師」だからです。
添付文書にない使い方をする場合は、基本的には
疑義照会をする義務があります。
ただし、添付文書にない使い方であっても、
薬剤師が理解できていれば疑義照会は必要ない、、
というか、本当はそれでも必要なんですけれども
、お互いに煩わしいだけですからね。
今回のケースでは、
「なぜリウマトレックスをいきなり新患さんに
分3で使うのか?」が私にはまったく理解できなかったため、
疑義照会となっています。
もしよろしければ、何か合理的な理由、根拠を教えていただければ、とてもうれしいです。
.
>>医者が薬の遣い方を全く理解していない
>だって。。
>う~ん、違う気が。
>理解していないのは、あなたのようですよ。
うーん、表現が過激すぎたのは反省します。
状況が切羽つまっていたので、この時は本当にそう思ったんですね。
ただ、文章をよく読んでいただければ、
もちろん私が理解していないことも、想定しています。
(元の文章、二択で書いてますよね?)
できればお返事いただければ有難いのですが・・・。
投稿: kitten | 2010-08-09 00:38
この記事をネットで探している最中に通りがかったので、貼り付けておきます。
本人以外の方が判断できるようにしておくことは大切なことですね。
*持参薬(リウマトレックス)の過剰投与による免疫機能低下による死亡
以前から慢性関節リウマチで当該病院に通院されていた患者が深夜緊急入院した際、持参薬の中に外来で処方された抗リウマチ剤の劇薬「リウマトレックス」が含まれていた。外来では患者と主治医との間で1ヵ月分の処方(週1回決まった曜日に服用する)として了解された上で『リウマトレックス(1カプセル2mg)1日3カプセル、分3×4日分』という処方オーダーがされていたが、緊急入院時の担当の研修医は、1日3回4日間内服の指示を出し、その結果骨髄抑制及び肺炎の併発にて死亡。
上記「リウマトレックス」の添付文書に記載されている用法・用量を見れば、当該病院で出された処方せんは-患者と主治医の間で了解事項があったとしても-明らかに不適切な処方せんである。
まず上記の処方せんを手にした場合、薬剤師であれば医師に疑義照会の電話を入れる。処方せんに記載されている『リウマトレックス』の服用指示が、本剤の本来の服用方法と異なる指示になっているからである。
薬剤師の問い合わせに対して、医師は『患者にいってありますから』という回答をしたはずである。しかし、ここに重大な問題があることに医師は気づいていない。
この指示では薬袋に記載される用法・用量は『1日3回 食後 1回1カプセル 4日分』という最も古典的な形式のものになる。つまり主治医と患者の関係では、患者に説明がされているとしても、薬剤師は処方せんに記載された用法指示を正確に薬袋に記載せざるを得ない。従って第三者が薬袋を見て患者に指示するとすれば、『1日3回 食後 1回1カプセル 4日分』という指示にならざるを得ない。
この事例でいえば、『毎週○○曜日 ○時1カプセル服用 以後12時間毎 3回。その後5日間休薬』とする用法指示が、最善の服薬指示だと考えられる。処方せんにこのような記載がされていれば、薬剤師はそのように薬袋に記載し、今回の場合の研修医もその通り指示したはずであり、患者も間違った薬の服み方はしなかったはずである。その意味では処方医の処方せんの書き方に問題があったのであり、患者と口頭了解があるから大丈夫だ等という、用法指示はあり得ない。
今回、京大病院の死亡事故をきっかけに、持参薬問題が、病院の薬剤管理の“盲点”として急浮上しているなる記事が読売新聞に掲載された [読売新聞,第46293号,2005.2.3.]。
投稿: とおりがかり | 2012-05-25 10:24