生活保護と後発医薬品
昨日に引き続き、後発医薬品(ジェネリック)の話。
今月から、ウチの薬局でも後発医薬品を積極的に紹介している。
無理強いはしていない。あくまでも患者さんの意向に沿う形で。
「今までの薬で慣れているからそのままでよい」
「医師を信用しているから、医師の処方どおりで」
「安くなるって言っても、そんな程度(数百円)なら今まで通りで」
と、先発品を使い続ける人も多いが、
「一円でも安くなるなら、そうして」
「成分が一緒なら、安いほうがいい」
と、後発品に変更する人も多い。
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以前にも書いたことがあるが、後発品ってのは、
「中国産」と同じような感覚で思ってもらえればちょうどよい。
国産ほどの信用はないけれども、中国産の方が安いでしょ。
でも、信用がないっていっても、極端に不良品が多いわけでもないでしょ。
ようは、買う人がどれだけ「ブランド」を重視するかの問題になる。
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さて、国が後発品を勧めているのは、医療費削減のためだ。
健康保険を使っている人の医療費は、7割~10割、保険から出てるから。
つまり、患者さんの自己負担分もさることながら、保険金や税金の
節約にもなるってこと。
患者さんにとっても、お薬代の節約になるんだけれども・・・。
もともと、医療費を払っていない人も存在する。
何らかの公費(特定疾患や、一人親、乳幼児など)を持っている人、
それに、生活保護の人たちである。
この、「薬局での自己負担ゼロ」の人たちにとっては、
後発品は全く魅力的ではない。安いといっても、自分の金じゃないし。
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まぁ、特定疾患の人はともかく、問題なのは生活保護(以下、生保)だ。
生保は、全額公費、それも、税金で医療費が賄われている。
まずい表現で書くと、お金がなくて医療費が払えないから生保になっている。
そんな人たちが、高い先発品を使っていていいの?
ちゃんと保険金を払って健康保険に入っている人は、
節約のために安い後発品に変えていっているのに?
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実は、2年前の調剤報酬改訂の時にも問題になった。
2年前の改訂の時に、「生保の患者は原則として後発品とすべし」という
通達があった。
これが、生保の患者から激しい反発を受ける。
ま、そりゃそうだ。貧乏人は安い薬を使え、と言われたようなもんだからな。
この時は、その反発が激しかったので、通達は撤回された。
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でも、2年前と今では、また状況が違うわなぁ。。
2年前よりも、今の方が圧倒的に後発品にかえる人が多くなっている。
約半数の人が後発品を選ぶなか、生保がブランドものの先発ってどうなの??
そりゃ「無条件で後発使え」とは言わんけどさ。
今度は逆に、健康保険に入ってて、税金も払っていて、後発使ってる患者が、
生保に対して怒ってもおかしくはないと思うぞ。
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さて、うちの薬局では、自己負担金に関係なく、後発品の希望を聞いている。
というか、今年4月の改訂で全員に希望を聞く必要があるからなんだが。w
聞いてみると、生保の患者さんでも
「どうか後発品にしてください」という人が何人かいた。
「私の治療費はみなさんの税金から出てるんでしょ?
そんな私が、高い薬使ったら申し訳ないわ。
どうか、安い薬に変えてください」
涙でそうになった。
結論。「生保」と言っても一括りに見るべからず。
生保の患者さんでも、いろんな人がいるんだから。
ちなみに、生保でない公費もちの患者さんでも、
国の医療財政のことだけを思って、後発品に変えてくれる患者さんは何人もいる。
みんながみんな、「自分さえよければ」って思っている訳じゃない、って
ちょっと、うれしくなった。
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コメント
私は、特定疾患で、薬代が免除になっています(通院日は払っています)。でも、毎月、薬代を税金からもらって、生きさせてもらっていることに、心苦しく思っていました。去年、薬局からはなにも、言われませんでしたが、全部ジェネリックに変えて、少しでも心の負担を軽くしました。
私のように、聞かれない患者が多いと思うので、薬剤師さんは、もっとジェネリックへの変更を促した方がいいと思います。
投稿: | 2012-08-23 15:31
コメントありがとうございます。
医療費削減という目的のためには、
自己負担金がかからない方であっても、
(というか、そういう方ほど)後発品を使って欲しいです。
ただ、聞いても「私はタダやから関係ない」みたいな人が
圧倒的に多いので、聞くほうが疲れてくるんです。
それでも、中には趣旨を理解して後発品を選ぶ方もいるので、
薬剤師の方もめげることなく、勧めていくべきですよね。
投稿: kitten | 2012-08-24 22:33