配合錠の落とし穴
疑義照会実例。といっても、今回は、薬剤師にとってはすごく簡単で、
そうでない人にとっては、さらに何のことかわからん話。
まずは、処方実例から。
<処方実例>
バイアスピリン錠 1T
エカード配合錠HD 1T
バップフォー錠10mg 1T
アリセプト錠5mg 1T
1日1回朝食後 14日分
ザンタック錠150mg 1T
ミカルディス錠40mg 1T
ノルバスク錠2.5mg 1T
リピトール錠10mg 1T
1日1回夕食後 14日分
マイスリー錠10mg 1T
キプレス錠10mg 1T
デパス錠0.5mg 1T
1日1回眠前 14日分
(一包化指示あり)
以上
長い処方の上に、患者さん(というか代理の人)が、
ジェネリック希望なもんだから、上記のさらに代替調剤、
さらに一包化。かなり、時間の取られる調剤である。
今回から、血圧の薬が変更になっている。
前回の処方を(血圧だけ)見ると、
ノルバスク5mg(朝)
ミカルディス40mg、ノルバスク2.5mg、カルデナリン1mg(夕)
(実際は、ノルバスク、カルデナリンはジェネリック)
つまり、ノルバスク5mgとカルデナリン1mgを中止して、
かわりにエカード配合錠HDを入れている。(ややこしい)
.
元の処方だけでも、疑義照会は必要だけれども、
前回の処方からの流れを考えると、「絶対に」疑義照会する内容。
「配合錠」というのは、2種類(あるいはそれ以上)の成分が入った
合剤のこと。OTCではほとんどがそうだけど、医療用では比較的珍しい。
エカード配合錠の成分は、カンデサルタンシレキセチルとヒドロクロロチアジド。
分類としては、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)と利尿剤の配合になる。
ところが、この患者さんは、他にもARBが出ている。
ミカルディス40mgは、ARB。
普通、同じ種類の降圧剤を2つ重ねることはしない。
つーか、ミカルディス40mgの成分(テルミサルタン)とヒドロクロロチアジドの
合剤だってあるんだから、そっちを使うのが普通じゃないか?
追加する薬を間違えている疑惑に、削る薬を間違えた疑惑もある。
もひとつ言うなら、頻尿の薬(バップフォー)が出てる人に、利尿薬の入った
合剤ってのは、どうなの?という疑義もある。
.
結果・・・ミカルディス40mgの削除、となった。消し忘れだったらしい。
.
ここのところ、配合錠がどんどん増えている。一般的なものをあげると、
ARB+利尿剤
プレミネント=ニューロタン+ヒドロクロロチアジド
コディオ=ディオバン+ヒドロクロロチアジド
エカード=ブロプレス+ヒドロクロロチアジド
ミコンビ=ミカルディス+ヒドロクロロチアジド
Ca拮抗+スタチン系
カデュエット=ノルバスク+リピトール
.
さらに、最近もう一つ、系統が増えた。
Ca拮抗+ARB
エックスフォージ=ノルバスク+ディオバン
レザルタス=カルブロック+オルメテック
・・・正直、覚えるの厳しい。w
まぁ、合剤であることは分かるから、その都度調べれば問題ないが。
医師も、うろ覚えで出したりしたら、結構こういう疑義照会は増えるかも。
.
合剤が増えている背景には、OD錠と同じような理由がある。
患者さんの利便性の向上。(そりゃ、2錠のむより1錠の方が楽)
さらに、合剤にした方が少し安くなる。(セット価格?)
もちろん、ウラの理由もある。
合剤には、(今のところ)後発品が存在しないからな。
薬局で後発品に変更される恐れがないわけだ。
たとえば、カデュエット(ノルバスク+リピトール)の場合。
すでに、ノルバスクは特許が切れていてジェネリックが出ている。
つまり、ノルバスク+リピトールで処方すると、
ノルバスクをジェネリックに変更される可能性は高い。
でも、「カデュエット」と処方してもらえば、変更されることはない。
これは、リピトールの特許切れの後、真価を発揮するだろうな。
ノルバスク+リピトールで処方されれば、どちらもジェネリックにされるが、
「カデュエット」と処方してもらえば、変更のしようがない。
そうやって、自社の製品を生き残らせよう、とするハラだろう。
.
もっとも、画期的な新薬がなかなか出てこないという、
非常にやっかいな問題が、根元にはあるわけだが。
ちゃんとした新作が作れないから、リメイクでごまかしている、とも
言えるかも知れない。どこの業界も一緒か?w
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