2010年問題について
医薬品の2010年問題についての小文。
2010年問題とは、大手製薬メーカーの主力商品で、
2010年前後に特許が切れるものがたくさんあること、を言う。
新たに開発された医薬品は、発売後、何年かは、特許がある。
国によっても異なる気がするが、だいたい発売後15年から20年。
で、特許が切れると他のメーカーも同成分で薬が作れる。
この場合、開発費が非常に少なくてすむので、とても安くなる。
これが、後発医薬品。いわゆる、ジェネリック医薬品だ。
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後発品が出たもともとの薬はどうなるか、と言うと、
もちろん、販売自体は継続されるんだが、売り上げが減少する。
そりゃ、安くて同成分のものがあれば、そっちに流れるだろう。
日本ではそうでもなかったが、このところの国の
「ジェネリック推進」の政策のせいもあり、
日本でも後発品が普及した結果、先発品の売り上げは減少する。
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大手製薬メーカーは、特許のある間に売り上げ、利益を確保して、
開発費を回収する・・・というシステムだった。
「特許のある先発品の利益を、次の新薬開発の資金に」
あてていたんだと思う。
もともと、新薬を作るのはバクチの要素が大きい。
人間の体ってのは、まだまだよくわかっていないことも多いから。
試験管の中や、動物実験ではうまくいったとしても、
実際に臨床試験してみたら、全然効かなかったり、
思ってもいないような副作用がおこって、開発断念、なんてこともある。
つまり、製薬メーカーはまず、「一発、当てる」
そしてその利益を、次のバクチにつぎ込んで、「当たり」がくるのを待つ。
そういうギャンブルを続けていることになる。
普通、そういう賭け方をしていたら、バクチって必ず負ける。w
そこをうまく食いつなぐため、他のメーカーと連携、合併して、
なんとか「当たりを出し続ける努力」をしている訳だ。
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ところが、「次の当たり」が来なくなればどうする?
こんなもん、破綻するに決まってる。
このシステムが今まで成り立っていたのは、ある程度コンスタントに
「当たり」がでていたからだ。
「当たり」の確率がどんどん下がっていくと、どんどん厳しくなる。
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それが、「2010年問題」の本質だと私は思う。
つまり、大型の医薬品の特許切れ自体は、これまでにもあったんだけれども、
それに続く、新薬の開発ペースが極端に落ちていることが問題である。
次の新薬が間に合ってないのに、特許切れを迎えてしまった、と。
このままだとどうなるか。
大手製薬メーカーが、研究、開発に回せる資金が減少する。
開発資金が減少すれば、当然、新薬の開発もなかなか進まなくなる。
・・・これって、ジリ貧だよね・・・。
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なぜ「当たり」の確率がどんどん下がってきたのか。
色々な要因はあるんだけれども・・・。
単純に、「ほとんどの薬は、もう作っちゃったから。」という理由が大きい。
ちょっと例えてみよう。
学校の運動場に、たくさんの宝物がうまっている、としよう。
それを、みんなでスコップで掘り起こしていく。
最初は、一定の間隔でぽろぽろと、宝は掘り起こされていくだろう。
技術革新によって、宝を掘り起こす効率が上がっていくこともある。
でも、「もうあらかた掘り起こしたよ」という状況になればどうなる?
もちろん、宝はまだうまっている・・・とは思うけれども。
「簡単に」掘り起こせる宝は、もうほとんど取ってしまっている。
後は、最初から「難所」にあるのがわかっている宝とか、
地中深くに眠っていて、掘り起こすのにとんでもない手間がかかる宝とか。
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つまり、現状の製薬企業の状態がこの状態。
簡単に見つかる新薬は、あらかた探しつくしてしまっている。
新たに作るには、もともと、とても難しいとわかっているもの(抗がん剤)や、
とてつもなく手間ヒマがかかる(遺伝子系の薬)とか・・・。
新薬開発にかかるコストはどんどん高くなる一方で、
特許切れによる売り上げ減少(=開発費減少)という、
非常に厳しい状況におかれている訳。
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そうなるとどうなるか?
もう、新薬開発なんかやーめた!となる企業も出てくるだろうな。
すなわち、後発品、ジェネリック市場に参入して手堅く稼ぐ、と。
というか、普通の経営感覚(だけ)なら、そうなるのが普通だと思う。
新薬開発にこだわるから、莫大な開発費が必要になるわけで。
負ける可能性の高いバクチを続けるから、苦しいんでしょ?w
でも、そうもいかない事情がある。
それは、経営上というよりも、人として。
まだまだ新薬を必要としている人はたくさんいるし。
何よりも、人(とくに科学者)は、常に新たなことに挑戦したいんだ。w
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この先、新薬開発を続けられるメーカーはごく一部になるだろう。
おそらく、規模もどんどん小さくなっていく。
そのかわり、「当たった」時の利益は莫大になる。
そうしないと、継続して開発することは不可能だ。
ってことは、これから出るような「画期的な新薬」は、
すさまじく高い薬になることが予想される。
今でも、抗がん剤治療なんてまず間違いなく自己負担で月8万円を超えるのに。
そうなると、新薬は保険適応されないってことも多くなりそうだ。
つまり、「高度先進医療」のみ充実していく。
庶民には手の届かない値段で。
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で、この状況はがらっとよくなることは考えられない。
新薬を見つければ見つけるほど、次の新薬は見つけにくくなる、と思うから。
そうなると、新薬の価格上昇は指数関数的に伸びてゆくことが考えられる。
って、もう金持ちしか手の届かないレベルにまで行ってしまうって。
この市場、このまま放っておくとあまりよくないと思うぞ。
競争原理の中においておくと、一般庶民が置いてけぼりにされて、終わり。
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今のままでは、ダメだろう。メーカーも、流通も。
このままでは、いずれ手詰まりになるのは目に見えている。
「次の新薬」が出ることを前提とした経営スタイルは、通用しない。
この「2010年問題」に、各社はどういう解答を出すだろうか?
業界が大きく変わる、というか、変わらないところから消えていくだろうな。
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