先生は忙しい
疑義照会実例。番外編。
なんか、番外編がやたら多いような気もするが。w
今回は、処方内容自体は大した内容ではないので、記載しない。
.
インシュリンの注射と、内服薬が56日分の処方で出ていた。
この処方自体に、何の問題もない。
ところが、投薬時に問題が発生する。
「え、飲み薬でてんの?余ってるから、今回はいらんって先生に言ってんけど」
こう、患者さんに言われてしまった。
処方元は、市立の総合病院。疑義照会はFAXになるので、正直面倒くさい。
しかも、処方している医師は「疑義照会嫌い」という噂のある医師。(苦笑)
薬局のスタッフ一同、「頼むから次回、調節してもらってくれ」と思った。
・・・できるだけそういう風に話を進めたが、
「先生に聞いてみてよ」と言われてしまった。仕方ない、これも仕事だ。
時間がかかることは、あらかじめ患者さんに伝えた。
「それじゃ、一回帰って、後でまた来るわ。それまでに聞いといて」
うん、正しい選択だと思う。
.
正直、疑義照会はしたくないが、それはこっちの都合であるからして。
普通の病院、普通の医師相手であれば、間違いなく疑義照会するケースだ。
先生が、「出さない」といった薬が処方されているわけだから。
それでも、相手があの医師と思うと、気がひける。w
.
病院の薬剤部から、返答があった。
「先生は忙しいので・・・そのまま出してください。
お薬の調節は次回、もう一度患者さんから言ってもらってください」
電話を受けたのは私ではないので、又聞き。正確ではないかも知れないが。
薬剤部から、医師まで連絡がいったかどうかすらわからんな、これ。(汗)
まぁ、うちらが疑義照会を一瞬躊躇するような医師相手なんだから、
直接、話をする必要がある病院薬剤部はもっと腰がひけるのはよくわかるが。w
まぁ、先生には連絡した上での結果、として話を進める。
薬が余ってるから調節、ってのは、緊急性は全くないわけで。
症状が変わって薬が変更にならない限り、余っている薬が無駄になることもないし。
さらに言うなら、薬を余らせる患者さんにも問題はあるし・・・。
ってのが、医師(薬剤部?)の本心なんだろう。理解できなくもない。
.
にしても、その返事を患者さんにどう伝えればいいのさ?
先生は忙しいって言うけどな、患者さんだって忙しいかも知れないじゃないか。
忙しい患者さんを30分待たせたあげくに、そんな答えってひどくないか?
もっとも、今回の場合は時間がかかることを見こして、
あらかじめ患者さんに伝えていたから問題なかったけどさ。
そのもの言いは、もうちょっと何とかならんか、と問い詰めたい。
.
患者さんには、私から(かなりオブラートに包んだ表現で)伝えた。
「なんじゃそりゃ!」と言われたが、怒っているというより呆れている様子だった。
立場上、患者さんの前で医師を悪く言うことはできないが、
今回ばかりは共感しておいた。w
そりゃそうだろ。患者さんから見れば、
「医師が処方をミスした上に、時間かかって待たされた上に、
訂正もされなかった」訳で。
.
だいたい、この医師、こういうしょうもない処方ミスが多いんだ。
仕事が忙しい、疑義照会が嫌いっていうんなら、そもそも、
疑義照会にならないように、しっかり処方すればいいだけの話だろうが。
・・・疑義照会が多いから忙しいのか、
忙しいから(ミスが出て)疑義照会が多くなるのか。
あるいは、その両方か。(苦笑)
患者さんとの間に挟まれた、薬局薬剤師、病院薬剤師、ともに迷惑な話である。
| 固定リンク
「疑義照会」カテゴリの記事
- ロキソプロフェン、食前投与(2017.04.16)
- 堺市立総合医療センターの対応(2017.03.09)
- 医師に直接(2017.02.12)
- 自分を信じろ(2016.10.30)
- 処方箋のフリーコメント(2016.10.09)
コメント
この手の問い合わせ、よくありますね。
kittennさんの仰ることも良く分かりますが、病院薬剤師として感じたことを正直にコメントさせていただきます。
「薬は要らないって言ったのに薬が処方された」というケースですが、診察の時に薬が余っていることを本当は言ってない(もしくは医師に正しく伝わってない)ことが意外と多いです。
医師だけが聞いてないのではなく、診察介助に当たってる看護師も聞いてないんです。
相手を見て話をコロコロ変える患者は結構います。
今回のケースで問題視すべきは、薬が処方されるかされないかではなく、なぜ56日分もの薬が余っているか?ということ。
>処方内容自体は大した内容ではない
これは相互作用や重複投与の観点からだけ。
患者はインスリンをやっている糖尿病患者。
これは大問題です!!!
56日分もの薬を出すということは、診察時に医師は病状が安定していると判断している思います。
しかし、診察日の近くだけ真面目に薬を服用すれば病状が安定しているように見せかけることは可能です。
薬局薬剤師は薬の説明が非常に丁寧だと感じています。
しかし多くの医師が薬剤師に求めているのは、医薬品自体の説明よりもむしろ、患者が確実に薬を服用するような工夫と副作用の対処方法についてにあると私は思います。
この事例からは、普段からの服薬状況のフォローアップが足りなかったのかな?とも受け取れます。
>立場上、患者さんの前で医師を悪く言うことはできないが、今回ばかりは共感しておいた。
共感も大事ですが、患者の非も(やんわりと)指摘できる指導の方が理想かと私は思います。
インスリンを導入している時点で、コンプライアンスは決して良くないことは容易に想像がつくと思います。
疑義紹介に対する病院の返答が納得いかないケースがあることは理解できます。
しかし病院からすると「そんなことを聞いて病院に責任を押し付けるな」という疑義紹介が多いのも事実です。
長々と生意気なコメントですみません。
病院薬剤師としての立場からコメントしましたが、私が薬局薬剤師ならkittennさんと同じ考えだったかもしれませんね(笑)
投稿: 通りすがりの病院薬剤師T | 2011-02-04 01:33
>病院薬剤師Tさん
コメントありがとうございます。
病院薬剤師と薬局薬剤師は、立場の違いからなぜかしら
対立する傾向がありますので、
こういう場にコメントいただけることを大変ありがたく思います。
これは、社交辞令でもなんでもなく、真面目に。
コメントいただけてめっちゃ嬉しかったです。
患者さんの言うことは、原則として信用しますね。
この辺は問題が深いので、(そのうち)新しいエントリ書きます。
ただ、病院薬剤師さんの言われることももっともだと思います。
ちゃんと服薬できるように指導すべきというご指摘は真摯に受け止めます。
>「そんなことを聞いて病院に責任を押し付けるな」という疑義紹介が多いのも事実です。
うーん、これは具体例を出してもらいたいです。
誰か、匿名で良いから私みたいにブログ書いてくれないかな。
「病院薬剤師からみた疑義照会実例」みたいなのを。(笑)
お互いに事情があるんだと思うんですけど、
分からない部分は多々ありますので。
今回のコメントで言うと、患者さんを疑うという発想は、
無い訳ではないにしろ、薬局薬剤師からは出にくいと思います。
こちらの事情をもうひとつ書きますと、
疑義照会は、薬剤師法もそうですけれども、
保険調剤の面からも、やむをえないものがあります。
まさしく「責任を病院に押し付ける」疑義照会は
多々ありますよ。私もやります。
当事者からみたら本当に些細なことであっても、
疑義照会していないと支払い側の個別指導などで
「なんでこれを疑義照会していないの?」
とネチネチとやられますんで。
投稿: kitten | 2011-02-06 22:23
>kittennさん
先日コメントさせていただいた病院薬剤師Tです。
疑義照会実例ですか・・・。
いろいろありますが、薬剤師の質自体を疑われるような問い合わせも多いので、そういうのはあまり公表できません。
疑義照会に対して一番感じるのは、照会の仕方にあると思います。
照会の内容に対する薬局薬剤師自身の考えを述べずに、回答だけを求める照会の仕方は病院側として面白くないですね。
疑義照会実例①
キサラタン点眼液 2.5mL 両目1日1回
保険薬局「この患者さんはA医院でバップフォーが処方されていますが?」
私「そうでしたか」
保険薬局「・・・」
私は正直、何が聞きたいのかなぁと思いました。
バップフォーが緑内障に禁忌なのは解りますが、だからキサラタンを中止して欲しいと?
それとも緑内障の病型の問い合わせ?
保険薬局「バップフォーは緑内障に禁忌なものですから」
添付文書に禁忌の記載があるから問い合わせをしただけで、自身は対処方法を考えていない、しかも問い合わせ先は当院ではなくA医院ではないか。
結局は、当該患者は開放隅角緑内障であるため、バップフォーとの併用は可能であるとの回答をしました。
疑義照会実例②
ボナロン錠35mg 1錠 分1朝(毎週土曜日) 3回分
(その他、定期内服薬が21日分処方されている)
保険薬局「ボナロン錠の服用は朝のいつですか?それから、3回分ということは頓服ですか?」
私「ボナロン錠は毎週土曜日の起床時に定期で服用させてください」
問い合わせ内容に間違いは無いのかもしれないけれど、正直バカバカしい。
ボナロン頓服って・・・(骨がスカスカな時?)
事例は他にも沢山ありますが、大手チェーン薬局ほどこのような内容の薄い合わせが多いと感じています。
処方箋を面で受けている地元の薬局はある程度自己判断で処理し、事後に処方箋の訂正を求めてくるところもあります。
法的には大手チェーン薬局のやり方が正しいのかもしれませんが、ある程度薬剤師としての責任を持つやり方をしないと、連携も上手くいきません。
投稿: | 2011-02-07 00:48
病院薬剤師Tさん、コメントありがとうございます。
>照会の内容に対する薬局薬剤師自身の考えを述べずに、回答だけを求める照会
うーん、薬局薬剤師が自身の考えを述べないってのはありますね。
理由は二つ。
まず一つには、自分に自信がないからでしょう。
何も言わなきゃ、間違ったことを言う心配もないですし。(苦笑)
もう一つには、医師に対する遠慮です。
「疑義照会では医師に失礼のないように」というのは、
特に若い薬剤師は学校で教えられているようです。
なので、遠まわしに聞くことが多いのかも知れません。
疑義照会実例①は、意味不明ですね。(苦笑)
緑内障の病型の問い合わせならまだわからなくもないですが、
それにしてもよくわかりませんね。
実例②は・・・うーん、難しいですね。
まぁ、私なら疑義照会しないです。疑問点がないので。
(いくつかおかしなところはありますが。正解も見えてます)
ただ、おそらくは保険調剤としてなら「疑義照会しろ」が正解になるんでしょうね。
薬局薬剤師としては、「処方箋は正しく書いてくれ」と思いますが・・・。
それにしても、「ボナロン頓服ですか?」はないですね。
素で言っているのか、嫌味のつもりなのか。
どっちにしても、ひどいと思います。(苦笑)
チェーン薬局の方が、マニュアルがしっかりしている分、融通が利かないのかな?とは思いますが、
それにしても個人の資質によるところは多そうです。
>自己判断で処理し、事後に処方箋の訂正を求めてくるところもあります。
明らかに違法ですね。私も(たまに)やりますが。
大手チェーン薬局の薬剤師は、基本的に責任をいやがります。
これは当たり前で、何か問題があったときに上司からも怒られるからです。
自分だけの責任じゃすまないですから。
「内容の薄い」疑義照会は、やる方も気がすすみません。
「なんでこんなこと聞かにゃならんの?」と思います。
そりゃ、聞かれるほうもそう思いますよね・・・。
投稿: kitten | 2011-02-09 00:21