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ホメオパシーによる被害

 少し前の事件だけれども、こちらでも言及しておくことにする。
なにせ、私の見ているニセ科学系、医療系ブログのほぼ全てで言及された
大事件であるからして。(苦笑)

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 以下、ニュースからの引用

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生後2か月の女児が死亡したのは、出生後の投与が常識になっている
ビタミンKを与えなかったためビタミンK欠乏性出血症になったこと
が原因として、母親(33)が山口市の助産師(43)を相手取り、
損害賠償請求訴訟を山口地裁に起こしていることがわかった。
 助産師は、ビタミンKの代わりに「自然治癒力を促す」という錠剤
を与えていた。錠剤は、助産師が所属する自然療法普及の団体が推奨
するものだった。
.......
 しかし、母親によると、助産師は最初の2回、ビタミンKを投与せず
に錠剤を与え、母親にこれを伝えていなかった。3回目の時に
「ビタミンKの代わりに(錠剤を)飲ませる」と説明したという。
 助産師が所属する団体は「自らの力で治癒に導く自然療法」をうたい、
錠剤について「植物や鉱物などを希釈した液体を小さな砂糖の玉にしみ
こませたもの。適合すれば自然治癒力が揺り動かされ、体が良い方向へ
と向かう」と説明している。

.

 引用終わり

 このニュースには直接言葉は出てきていないが、
この助産師の所属する団体は、ホメオパシー関係であろう。
希釈した液体を砂糖玉にしみこませる、というのはホメオパシーの
レメディの作り方であるからして。

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 一番、議論が白熱しているところは、kikulogなので、
リンクをはっておく。

http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1278636524

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 私の感想。信じられない。あってはならない事故だと思う。
この母親は、特にホメオパシーの信者という訳ではないようだ。
たまたま、ホメオパシーを信じている助産師にあたってしまい
特に最初の2回は何の説明もなくビタミンKを与えていなかった。

 ビタミンK欠乏症は、生後間もない乳児にごく稀におこるらしい。
おこることは稀だが、おこってしまうとかなり危険で、死亡することもある。
ただし、ビタミンKを投与すれば、100%防ぐことができる
 なので、新生児には必ずビタミンK(K2シロップ)を投与する。

 この助産師は、ホメオパシーへの傾倒から、
そのビタミンKを与えずに、同じ効果がある(とされている)レメディを与えた。

 詳しい説明は省くが、ホメオパシーのレメディというのは、
単なる砂糖玉である。それ以上でもそれ以下でもない。
よって、ビタミンKと同じ効果なんざ、あるわけはない。

 なんとも、痛ましい結果になってしまった。

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 ホメオパシー自体は、代替療法の中では非常に安全な部類に入る。
なんせ、レメディ自体に全く薬効がないんだから。
通常の治療のジャマをすることもないし、
西洋薬との飲み合わせも、全く気にする必要はない。

 それでいて、手順をしっかり踏めば、抜群のプラセボ効果を発揮する。

 しかし、ホメオパシーを信じるあまり、通常の医療を否定してしまうと、
非常に問題である。今回のような悲劇がおこってしまうことになる。
通常の医療を否定する必要など、全くないんだが。

 薬剤師の目からみると、ホメオパシーのレメディは、
相互作用など気にする必要がない、優れたプラセボ」である。
通常の医療と併用してくれたら、全く問題ないのに・・・。

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 助産師の間で、ホメオパシーが広まっている、という話もある。
なるほど、ホメオパシーとの親和性が高そうな領域だと思う。

 まず、対象。妊婦にしても、乳児の母親にしても、
心理的ストレスは非常に大きい。ホルモンバランスの乱れもあるだろうが、
心身ともに、色々な不定愁訴がでることは多いだろう。

 偏見かも知れないが、そういう女性に必要なのは、薬ではない。
むしろ、「ちゃんと話を聞いてくれて、悩みを受け止めてくれる人」が必要。
助産師さんが、その役割を担うことは、十分にある。

 それに、プラスアルファとして、ホメオパシーのレメディ、というのは、
なんというか・・・理にかなっている。(苦笑)
 この時期の女性に、普通の薬は使えないんだから。
何の薬効もないレメディ、という利点を最大限に活かせるよなぁ。

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 にしても、プラセボ効果は心理的な効果であるからして、
当然、赤ちゃんに効く訳はない・・・。そこんとこ、わかってくれよ。(汗)

 もちろん、これは、薬剤師(私)から見た、ホメオパシーであって、
実際にホメオパシーを信じている人は、ちゃんと効果があると信じて
レメディを与えているんだから、わかってもらえなくても仕方ないが。

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 こんな事故で娘を亡くしてしまったご両親のことを思うとやりきれない。
しかし難しいのは、この助産師も、悪意があってやった訳ではない、という。
ただ、愚かだっただけだ。
 医療に関わる人間であるならば、最低限の科学的なものの考え方を
みにつける必要がある。
これは、助産師に限った話ではない。薬剤師だって、似たようなことをやる
可能性はある。

 何よりも、医師であってもおかしなことを言う人もいる・・・。
なんだろう。ある一定以上の人数が集まると、必ずおかしなのが混ざってくる。
これはもう防げないんだろう。

 あとは、おかしなものは「おかしい」と言い続けること。
ささいなことではあるが、みんなが批判することによって、
騙される人が少なくなるだろうし、被害に遭う人も減るだろうから。

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 こんな事件、二度とあってはならない。

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('10~)コラム」カテゴリの記事

コメント

助産院は危険です。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/09/images/s0905-7f1.gif

50年前、分娩場所が助産所や自宅から、病院や産婦人科医院(診療所)に代わり、母体死亡率が激減してます。

半世紀前に戻るのか????

投稿: beauty | 2010-08-11 18:58

 コメントありがとうございます。

 ただ・・・私は、
「助産院は危険だ」とまで言う気はないですね。
50年前の助産所と、今の助産院では比較できないでしょう。

 とはいえ、一部にはあまりにも「自然」にこだわり過ぎて、
お産とは本来「危険なもの」というのを忘れてしまったような
ところもあるかも知れません。

 

投稿: kitten | 2010-08-12 22:25

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