がんの補完代替医療として、健康食品があるが・・・
正直、効果はあまり期待できない。
というか、まともな根拠のあるものはないのが実情である。
そんな状況について、朝日新聞が記事にまとめている。
「がんの補完代替医療 健康食品の効果、乏しい根拠」
これは、ほぼそのままの状態で新聞に掲載された。
なかなか、よい記事だと思う。素直にGJ。
(めっちゃ上から目線だけど。w)
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まず、気になっているのが「どうして健康食品を始めたか?」
「家族や友人からの勧め」が78%らしい。
私も立場が微妙ではあるけれども・・・。
医療従事者としては、正直困る問題である。
科学的には、全く根拠のないものも多い。
効果がある、というデータがあるものは、何一つない。
(あれば、普通に医薬品になるはずだ。)
それどころか、「効果がない」というデータのあるものもある。
ただ、ほとんどの健康食品は、そもそも検証すらしていないのが実情。
なので、可能性としては「効果のあるもの」が潜んでいることもありえる。
よくいえば、「玉石混交」の状態、と言える。
ただし「可能性としては」の話。限りなく0に近いと思うが。
これは、抗肥満薬についてでも書いたことがあるが・・・
本当に癌を治すことができる可能性のある物質があれば、
まず間違いなく大手の製薬会社が抱え込みに行くはずだ。
抗がん剤は、まだまだ発展途上。さらに、当たれば莫大な利益を生む。
効果のある物質、どころか、可能性のある物質は、手当たり次第に
調べつくされているはずだ。
大手の製薬企業でないメーカーが、健康食品としてがんに効果がある?
食品を売っている時点で、もう効果がないと断言してよいくらいだ。
(そもそも、癌に対する効能をうたった時点で薬事法違反になるんだが。)
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なので、医療従事者としては、勧めることはありえない。
(ほぼ)効果がないことはわかっているから。
ところが、それをがんの患者さんに勧める人が大勢いるってことだ。
しかも、悪意ではなく、善意で。
「家族や友人」は、その患者さんのことが心配でならない。
だから、少しでもよくなって欲しい。生きていて欲しい。
それで、「効果のある」と言われている健康食品を勧める。
その行為を否定するってのはなぁ・・・。
また、どんなものであれ、効果のある可能性は0ではないし。
あとは、患者さん本人の判断になるだろうが・・・。
正直、本人が困っている例もたくさんあると思う。
むげに断るわけにもいかんだろうし。
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現在では、癌は告知するほうが一般的である。
また、医療者には「正しい情報」を患者さんに伝えることが求められている。
そして、癌というのはまだまだ克服されていない病気でもある。
結果として、
「あなたは、もう助かりません」と言うしかなくなることがありえる。
その場合の、患者さんに対するケアが非常に難しい。
結果として、健康食品に流れ、何百万とお金をつぎ込む人が出てきてしまう。
癌をなおす魔法の薬など、どこにもない。
いや、可能性は0ではないが・・・限りなく0に近い。
でも、さすがにその事実を突きつけるのは厳しすぎるのではないか?
結局、医学、科学の両方から「見放された」患者は、
代替医療や健康食品に流れるしかなくなる。
悪くいえば、食い物にされる、とも言える。
見放すな、と言うかもしれないが、
「できないことはできない」と言うのが、いまの医学のルールである。
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では、どうするか?
末期がんについては、話が変わってくるのでここでは触れない。
そうでない場合。まだ、通常の医療で何とかなる場合。
私は、健康食品は、「通常医療の邪魔をしない範囲で」認める。
薬の飲み合わせ等で問題なければ、目をつぶることにしている。
一律で「やめなさい」と言うことはない。
あとは・・・やめたい人に対しては、背中を押すこともある。
特に、経済的負担の大きいものに関しては。
普通の治療でも相当負担が大きいのに、さらにそれ以上ってのは、ね。
記事では、「医師と相談すること」となっていた。
医師と相談することが「怖い」とか「悪い」と思っている人もいるかも知れない。
大丈夫。がんになって健康食品を使うのは、みんながやっていることだ。
医師も、相談されることに慣れているはず。
頭ごなしに否定する医師は、まずいないと思う。
それよりも怖いのが、医師から離れていってしまうことだな。
(この辺、現代医療を否定して問題になったホメオパシーと似てる。)
健康食品も、はまりすぎると通常の医療から遠ざかる結果になるかも知れない。
こと、癌に関しては勝手な自己判断は厳禁だ。
医師が気に入らないなら、セカンドオピニオンを求めよう。
あとは、その辺の本の内容を鵜呑みにしないこと。(苦笑)
健康食品に関しては、バイブル本みたいなのも、まぁ、危ないな。
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補完代替療法の、日本における特徴として、
「直接、癌に対する効果を期待する」人の割合が多いことがあげられる。
欧米では、痛みや症状の緩和などを期待する人の方が多い。
ようするに、「あくまで代替療法である」と社会に浸透しているわけだ。
直接癌に効果を期待するのは、通常医療に任せておいて、
代替療法は、QOL(生活の質)の向上に用いる、と。
この辺、日本とは大きく状況が違う。
医学は大きく進歩しているが、がんはまだ克服できていない。
当たり前だが、「医学には限界がある。」
また、人はいつかは死ぬ。その事実も、忘れてはいけない。
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また、相手の弱みにつけこんで(無駄に)高い健康食品を売りつける。
そんな業者は、駆逐されるべきだと私は考える。
効果がないとわかってやっているのなら、明らかな詐欺であるし、
効果があると思っているのなら・・・無知であり、愚かであるからして。
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