コレステロール論争
先日、日本脂質栄養学会が「コレステロール値は高いほうが死亡率が低い」
という研究結果をまとめた。
日本動脈硬化学会は、「高コレステロールは動脈硬化が起こり、心筋梗塞の
リスクになるとして、LDL(悪玉コレステロール)140mg以下、
総コレステロール220mg以下にすべき」というガイドラインを出している。
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ぱっと見には、この二つの意見は矛盾しているように見える。
日本脂質栄養学会の方が、従来とは異なる(ように見える)だけに、
マスコミが報道して、話題になっている。
とりあえず、まとまった記事として、ひとつ紹介しておく。
Jcastニュースより。
「コレステロール高いほうがいい 医学界を二分する衝撃新説が登場」
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ま、上記の記事は典型的な記事だな。悪いとは言わないが、よい記事とも言えない。
普通にこのニュースを読めば、「今までは、だまされていたのか?」とか、
「結局、コレステロールは高いほうがいいのか低いほうがいいのかどっち??」
みたいな反応になるのかも知れない。
そこで、(一応)医療従事者の端くれである私が、少し見解を述べておく。
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まず、上記の記事を読んで、私が「そうかな?」と思った点。
コレステロールが高いほうがいい、という日本脂質栄養学会の説は、
別に「衝撃新説」というほどのことはないぞ。w
昔から、普通にあった話だろう。
今回、脂質栄養学会がガイドラインを発表したから注目されただけで、
この学会の人たちは昔からそういう主張をしていたと思う。
対する動脈硬化学会は、大して反応を示していないように見える。
まぁ、もともと動脈硬化学会は、「自分たちの方が格上」と思ってるのかも
知れないけれども。w
そうだとしても、別に「定説を覆された」とは思ってないんじゃないかな?
実は、この両学会の主張は、ほとんど矛盾していない。
一部、検査基準値をもって対立しているかも知れないけれども。
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コレステロール、高いほうがいい?低いほうがいい?という問いには
ものすごく簡単に答えられる。
「高すぎるのもダメだし、低すぎるのもダメ」
単に、それだけの話。これこそ、「定説」でしょう。
今回の脂質栄養学会のデータは、
「コレステロールが低すぎる人は、高すぎる人よりも死亡率が高い」というもの。
コレステロールが低いってことは、言い換えると栄養状態が悪いってことでもある。
コレステロールは身体にとって、大事な成分。免疫なんかにも関わってくる。
だから、足りないと身体に悪いのは当たり前の話。
いや、原因と結果を履き違えてるんじゃないの?という人もいるくらい。
即ち、「コレステロールが低いから、死亡率が高い」んじゃなくて、
「死亡率が高い人は、(栄養が悪いから)コレステロールが低い」という。
(ちょっと乱暴な話だけど、まぁそういう話だ。)
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一方、高コレステロールが動脈硬化から心筋梗塞になることも、立証されている。
だから、高すぎるコレステロールは下げる必要がある。
これは、脂質栄養学会も反論しないんじゃないの?
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そもそも、コレステロールを「総コレステロール」の数字だけで語るのが、
今の主流から言うと外れている。
今の主流は、悪玉コレステロール(LDL)が高いことよりも、
善玉コレステロール(HDL)が低いことの方が問題じゃないの?という説。
いや、LDLとHDLの比が大事なんだよ、という説とか。
総コレステロール(TC)だけでは、それほど問題にしないと思う。
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そもそも論でいうと、動脈硬化をコレステロールだけで語るのも無理がある。
いや、動脈硬化学会はコレステロールだけで語っているわけではないんだけど、
脂質栄養学会が、そう見せているような感覚がある。
動脈硬化はメタボリックシンドロームとも密接にからみついた話である。
例えば、同じコレステロール値であっても、患者さん個々の背景によって、
薬を使うかどうかはぜんぜん異なる。
糖尿病や高血圧を併発しているような人なら、かなり早い段階から投薬するし、
逆にコレステロール「だけ」高い人なら、生活指導だけでも十分じゃない?
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もちろん、脂質栄養学会にしてもその辺の話もちゃんとわかっているはずで。
それでも、動脈硬化学会の決めた「基準値」をその辺のバックグラウンド無視して
一般人が使おうとすると、問題だよね、という意識があるんだと思う。
例えば健康診断とかで、コレステロールの数値「だけ」では何も判断できない。
まぁ、その辺を総合的に判断しようってのが「メタボ検診」な訳だけど。
動脈硬化学会としては、基準値が低めなのはわかっているけれども、
基準値をオーバーしたからといってすぐに薬という訳ではなくて。
動脈硬化学会の基準値は、「他に危険因子をいっぱい持っていた場合に」
治療が必要となる最低値、という位置づけ。
つまり、「基準値超えたからどんな人でも即治療」とは思っていない。
まぁ、本音と建前みたいな話もあるのかも知れない。
動脈硬化学会はそう言っていても、現場の医師はどうなのよ?といえば、
うーん、難しいところではあるんじゃないか、、とか。
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というわけで、私の見解としてはこの両学会は、
根本的には対立してないよ。
コレステロールのもつ、それぞれの側面に別々の方向から光を当てているだけで、
その「光の当て方」について、対立しているだけだ。
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ただ、脂質栄養学会の主張には、(まだ私の勉強が足りてなくて)
一部、よくわからないところもあったりするが。(汗)
私の感触としては、「どっちも(それなりに)正しい」と感じている。
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