インフルエンザに新しい治療薬
そろそろ、涼しくなってきた。
もう少し寒くなると、インフルエンザの予防接種のシーズンがやってくる。
去年の「新型」(A/H1N1)は、今年は普通の季節性に混じることになる。
かわって、Aソ連型が世の中から消えてしまったようだ。
インフルエンザウイルスは、よくわからないが、
代替わりすることが知られている。
新しいウイルスが出てくると、古いウイルスはどこかに消えてしまうようだ。
今年のインフルエンザワクチンは、A香港、A/H1N1(去年の新型)、
それに、B型の混合ワクチンになる。
.
今年も、それなりに流行する可能性はあると思う。
とくに、去年ワクチンを受けていない人。かつ、かからなかった人は、
まだ免疫をもっていないからして。
傾向としては、去年、大流行した地域は、今年はそれほど広まらないと思う。
逆に、去年の新型騒ぎが大したことなかった地域は、
今年の方が要注意となる。
.
さて、この秋、新しいインフルエンザ治療薬が登場する。
4つ目になるのかな。
もっとも、世間的にはタミフルとリレンザくらいしか知られていない。
3つ目は、注射薬(点滴)だったから、あまり世間では知られていないだろう。
薬局としても、直接かかわる訳ではないので。
今回、第一三共から発売される「イナビル」は、
タイプ的には前3つと同じ。ノイラミニターゼ阻害薬、でくくられる。
内服薬ではなく、吸入薬である。
.
内服であるタミフルの方が使いやすいんだけれども・・・。
タミフルには耐性の問題がある。
もっとも、一番タミフル耐性の進んでいたAソ連がお亡くなりになったので、
実際のところは、それほど気にする必要はないのかもしれないが。
また、タミフル耐性といっても、開業医の感覚からすると、
「まったく無効という訳ではない」そうだ。
「少し効き目が悪いかな?」くらいの感覚らしい。
.
どうして、イナビルが吸入薬になったのかはよくわからない。
普通は、内服薬を目指して開発するだろうからね。
そうならなかった、ってことは、構造的な問題があったのだろうとは思う。
しかし、この薬が画期的なのは、1回で治療が終了するところにある。
一度の吸入で、吸収された薬が体内で徐々に活性体に変換されるため。
今までの「1日2回、5日分」ではなくて、「1回で終了」となる。
今までの薬は、症状が改善しても服用を続ける必要があるんだけれども、
そこでサボってしまう人も多かったと思われる。
本当は、ここでサボってしまうと、耐性ウイルスが出現するきっかけになるんだが。
イナビルは、1回で終了ってことは、そういう問題はまずおこらない。
.
効果も、メーカーが言うにはタミフルとほぼ同等らしい。
小児に関して言えば、むしろタミフルよりも効果がある、とか。
どこまで本当か知らないけど。w
1回で終了する。耐性ウイルスも出現しにくい。
それでいて、効果はタミフルと同等か、それ以上。
しかも、国産。w
なんか、いいことづくめでかえって恐ろしい気がするな。
一応、今年のシーズンは相当な数を用意するらしいので、
供給不足とかもおこらないんじゃないか、と言われているが。
こればっかりは、やってみないとわからん。
だいたい、タミフルは毎年のように騒ぎを起こしてくれたからな。
.
さて、問題点は、というと。。
まずは副作用。これも、他の薬と大差はないらしい。
異常行動も含めて。
まぁ、これは本当に副作用か、インフルエンザの症状かは、
まだはっきりしないんだけれども。
あとは、「1回で終了」というのが、諸刃の剣になりうる。
一つには、何か副作用が起こった場合、途中で止めることはできない。
1回で5日くらい効果があるって薬なんだから、
万一副作用が出れば、それも5日続く可能性は・・・十分あるよ。
もっとも、これはほかの薬でも言えることなんだけど。
もうひとつの問題は、、「失敗は許されない」ことだ。
吸入ってのが、ひとつ大きな壁になる。
薬局でも、医院でも、吸入の仕方は確実に説明するだろうし、
おそらくは、その場で吸入してもらうことになると思うんだけれども。
これ、吸入に失敗してしまったら、どうするの?という問題がある。
今までの「リレンザ」でもそういったケースはあった。
でも、リレンザの場合は、1回くらい失敗しても、あと19回分残っている。
そのうちに慣れてもらえれば、それほど問題はない。
ところが、イナビルは1回だ。(正確には、大人で4吸入。子供で2吸入)
これ、失敗してしまったら・・・普通に考えると、二度目は処方できないよ。
なので、確実に成功できる相手じゃなきゃ、出しちゃだめだろう。
まぁ、大人はいいとして。(認知症なら危ういが。)
問題は、子供だ。リレンザのときもあったが、
「吸う」場面で「吹いて」しまうと、たぶん、薬が飛び散って「失敗」する。
確実に吸入できる年齢が、いくつくらいからかはちょっとわからないけど。
薬局としては、そのケースが一番怖いな。
しっかり吸入指導したのに、目の前で失敗されてしまったらどうするか?(汗)
まぁ、そんなことがないように望むが。
.
同じ吸入薬なら、リレンザよりもイナビルの方が使われそうだな。
まぁ、こういうのは「いくつも選択肢がある」という状況次第が好ましくもある。
薬局としては、いろいろ在庫をかかえるので厳しいところだけれども。
| 固定リンク
「('10~13)仕事(薬局)」カテゴリの記事
- 2013年の記録&カテゴリ変更(2013.12.31)
- うがい薬「のみ」の処方が保険適応外?(2013.12.26)
- ジスロマック細粒の後発品(2013.12.17)
- 新しい吸入薬(2013.12.14)
- 薬が減ったのに薬代が上がる?(その2)(2013.12.03)
コメント