薬が減ったのに、薬代が上がる?
久々の疑義照会。でも、番外編。(汗)
予想通り、ネタが少なくなってきている。
毎週の連載は不可能なので、すでに不定期になっております。
さて、処方実例。
.
アマリール錠1mg 2錠
メルビン錠250mg 2錠
朝夕食後 28日分
アダラートL錠10mg 1錠
朝食後 28日分
.
以上。
この処方だけでは、全く疑義照会の対象にはならない。
薬歴をみてみると、前回まではアダラートL10も、2錠分2だった。
それが、今回から1錠だけになっている。
患者さんに聞いてみると、高血圧の症状が改善されているので、
1錠減らして様子をみてみましょう、とのことだった。
これも、全く問題ない。
ところが、会計のときに問題がおこる。(苦笑)
前回よりも、今回の方が値段が高いのだ。
これに、患者様は激怒された。(汗)
「なんで、薬が減ったのに薬代があがるの?計算間違えてない??」
.
保険調剤に詳しい人だったら、簡単にわかるだろうが。
お薬代っていうのは、薬の値段だけではない。
いろいろ、技術料なるものがのってくる。
この先、ちょっと詳しく書いてみる。わからん人は、結論まで読み飛ばして。
その中に、「調剤料」というものがある。
これは、「服用方法1種類につき」、28日分で「81点」がつく。
つまり、前回は、服用方法は「朝夕食後」の1つだったので81点。
今回は、「朝夕食後、朝食後」の2つなので、162点。
ここで、81点も加算されてしまうわけだ。
でも、薬が減っているじゃないか?その分安くならんのか??
ところが、ここでも保険調剤のマジックが炸裂する。
この患者さんは、ジェネリックを使っていたことが災いした。
アマリールはまだジェネリックがない(2010/09現在。もうすぐできる予定)ので、
そのまま。メルビン、アダラートLはジェネリックに変更している。
薬剤料は、用法毎に、1日薬価を計算してその1の位を五捨五超入して、
点数(1点=10円)に変更して、日数をかける、という計算になる。
前回は、朝夕食後の薬が3種類。それぞれ薬価を書くと、
アマリール錠1mg 22.3円x2錠=44.6円
ネルビス錠250mg 9.2円x2錠=18.4円 (メルビンのジェネリック)
コリネールL10mg 5.6円x2錠=11.2円 (アダラートLのジェネリック)
1日薬価は合計して、73.2円。1の位を五捨五超入して、7点。
1日7点x28日で、合計196点となる。
今回は・・・。
朝夕食後が、
アマリール錠1mg 22.3円x2錠=44.6円
ネルビス錠250mg 9.2円x2錠=18.4円
1日薬価で63.0円。6点。28日分で、168点。
朝食後は、
コリネールL10mg 5.6円x1錠=5.6円
1日薬価も5.6円。1点。28日分で、28点。
朝夕食後と朝食後、両方あわせると、196点・・・あれ???
前回と変わってない。
理由は、そもそもコリネールが安すぎるため。
1錠で5.6円。2錠で11.2円。保険調剤だと、どっちでも「1点」だ。
つまり、1錠でも2錠でも値段変わらん。
結果として、薬剤料そのまま。調剤料だけに81点が加算されて、
自己負担金は240円(81点=810円の3割負担)増えてしまった。
結論:用法が増えて調剤料(嫌いだが、手数料と言い換えてもよい)が増えた。
減った薬が安すぎて、薬剤料は変わらなかった。
結果として、自己負担金は上がってしまった。
.
ま、そういうことだ。これはもう、保険のマジックとしか言いようがない。
ただ、どう説明しても患者様には納得していただけなかった。
もともとジェネリック希望なんだから、お金に敏感ってことでもある。
こっちは、ルール通りやってるんだから、しょうがないんだけれども、
患者様のお怒りも至極もっともだ。w
なので、できるだけのことはやってみた。
「前の薬に戻してもらうよう、先生にかけあってみましょうか?」
安くするなら、それが一番。それでコリネールは自分で調節してもらって、
余ってきたら処方を中止してもらう。それを繰り返す。
それができれば一番安い。
ただ、グレーゾーン・・・というか、かなり黒に近い反則技だと思う。(汗)
医師がルール通りで、とはねつけたら、もうおしまいだけど。
まぁ、その時は、こっちも「やるだけのことはやった」と患者さんに説明できるし。
.
正直、かなり無理なお願いではあったんだけれども、
(そもそも、病院側に保険調剤を説明するところから始まる訳で。)
医師は快く処方変更に応じてくれた。患者思いな先生だ。w
もっとも、これをやると薬局の収入は減る。(涙)
これ、逆のパターンもありえるしね。
即ち「薬が増えたのに、薬代が安くなる」なんてこともありえる。
その場合は、誰も「理不尽だ、変更しろ!」なんて言わないもん。w
調剤報酬は、複雑怪奇だなぁ。
もうちょっとシンプルにできればいいとは思うんだけど。
そもそも「調剤料」なんて名前にしているけれども、
実質的には薬局の利益になる部分(技術料)を調節しているだけだ。
なら、もうちょっとわかりやすくしてもらっても構わないんだが。
.
あ、技術料とるな!っていう突っ込みは勘弁してもらいたい。
こっちは、薬をほぼ原価で出してるから。技術料がないと利益がなくなる。
薬局に対して「技術料を取るな!」という要求は、
焼き肉屋に対して「原価で売れ!」という要求と、ほぼ同等である。
| 固定リンク
「疑義照会」カテゴリの記事
- ロキソプロフェン、食前投与(2017.04.16)
- 堺市立総合医療センターの対応(2017.03.09)
- 医師に直接(2017.02.12)
- 自分を信じろ(2016.10.30)
- 処方箋のフリーコメント(2016.10.09)
コメント