あすか製薬の件(続報)
昨日のあすか製薬の記事。
少し動きが出てきたので、もう一本記事を書いておくことにする。
まず、チラーヂンの供給不足について。
これは14日、月曜日の時点でわかっていたことである。
私は、15日に発注していたチラーヂンが入荷しなかったことでわかった。
昨日の記事に(自分で)コメントをつけたけれども、
今日の記事にも再掲しておく。
あすか製薬は、昨日(3/17)に第2報として情報を出している。
.
この中で、あすか製薬は特にチラーヂンSについて言及し、
「製造委託会社による生産や、海外製品の緊急輸入、
または、いわき工場の操業再開などのあらゆる方策により、
供給再開が可能な見込みです」
と発表している。
残念ながら、供給再開の時期については書いていないが、
まぁ、そこはスルーするのが正しいだろう。
全力を尽くすに決まっているんだから。
.
ところが、こんな記事をみつけてしまった。
東洋経済の記事だ。(3/16)
深刻化し始めた医薬品供給。
チラーヂン生産停止で甲状腺機能低下症患者60万人に深刻な影響も。
以下、一部引用する。
(チラーヂンSは)あすか製薬のいわき工場で生産しており、国内シェアは98%。
(中略)
原発火災による放射能漏れや停電などで工場の被害状況もきちんと
把握できていない。従業員全員の無事が確認されたものの、
「放射能被害を防ぐために、従業員および家族がバスで非難を開始している」
(あすか製薬広報部)という。
引用終わり
.
私は、これを見てあすか製薬への同情が怒りにかわった。
なんで従業員が逃げ出しているんだ?これが事実だとすれば、
60万人にも及ぶ患者のことをどう考えているんだ?
あすか製薬のいわき工場と、福島第一原発の間の距離は・・・。
地図で見る限り、かるく40kmはあるぞ。
近いといっても、避難勧告も屋内退避指示もでていない。
原発関係の記事は、そのうちにもう少し書く気でいるけれども、
現時点での30km圏内屋内退避指示は、妥当な処置である。
逆に言うと、それ以上の避難は現時点では全く必要がない。
それ以上の避難が必要になる可能性は、私の感覚ではあるが、
どんなに大きく見積もっても10%もないのではないか?
あすか製薬は、仮にも医療に携わる企業であるならば、
放射線による健康被害が、実際にはどの程度のものかわかっているだろう?
現時点で放射線の健康被害が問題になっているのは、
現場で必死に作業している東京電力や自衛隊、警察などの人間だけだ。
それにしても、問題にならないように慎重にやっているわけで。
(だから、作業が遅々として進まないんだ)
現時点だけで問題にするならば、
正直なところ原発の敷地内に入らなければ健康被害は生じようがない。
この先、もっと深刻な事態になる可能性が0ではないので、
20kmという避難区域を設定しているだけだ。
.
ようするに、逃げる必要のない距離にいながら、
あすか製薬の従業員は仕事を放り出して逃げていることになる。
もう復旧する気はないだろ??
.
という訳で、あすか製薬は全くあてにならない。
元の東洋経済の記事に戻って、もう少し引用する。
(以下引用)
神奈川県保険医協会は。「チラーヂンSの緊急輸入・海外支援要請を緊急に」
と題した声明を発表。「海外からの緊急輸入と海外への支援要請が喫緊。
一刻も早く政府の行動が必要。その際、関税や薬事承認緩和など超法規的措置
が肝要」と指摘している。
(引用終わり)
海外からの緊急輸入しか手はないだろうな。
でも、通常はそんなことは簡単に出来ない。
新型インフルのワクチンを海外から輸入したときのような、
特別な(超法規的)措置が必要になるだろう。
でもこれは、何とかしてもらうしかない。
そうでないと、多くの人が治療に困る事態になるんだから。
.
3/24 追記
さらに続報を書きました。
http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-cb5b.html
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コメント
工場自体が、立ち入り禁止区域に指定されてしまって
どうにもならないと聞きました。
投稿: | 2011-03-18 13:55
こんにちは。薬局の事務をしています。娘が甲状腺全摘出して、チラーヂンを飲んでいます。薬局の先生が心配してくれて、主治医に相談したところ、ここ最近問題になっている買い占めと同じ扱いをされて、「大丈夫!」と一笑。でも、問題はとても深刻だと思います。まさか、大切な薬が国内一カ所でしか作っていないなんて、患者は知りませんから。薬価が非常に安いのですが、大切な薬です。今後このような事が無いように工場を分散して欲しいと強く願っています。患者の立場からしたら、本当に不安で仕方がありません(;ω;)
投稿: | 2011-03-18 15:12
工場自体が立ち入り禁止になっているのであれば、しょうがないですが・・・。
なんで軽く40km離れている工場がそんな目に遭うのかが不明です。
もしそうであるならば、おそらくあすか製薬さんは立ち入り禁止を解除するように働きかけている・・・はずですね。
もっとも、公式な発表ではないのでなんとも、ですが。
>「大丈夫!」と一笑
さすがに楽観的すぎます。(汗)
あすか製薬さんがこんな状態である以上、現実的には緊急輸入しかないと思います。
あとはそれにどれくらい時間がかかるか。
1ヶ月程度で可能なら、まず問題にはならないはずです。
市場に出回ってる在庫だけで、それくらいはあるはずですから。
>今後このような事が無いように工場を分散して欲しいと強く願っています。
これは、本当にそう思います。一社の一工場で98%シェアってのは、
リスクが偏りすぎています。
チラーヂンの薬価がもっと高ければ、ジェネリックメーカーが
もっと参入してくるので、少しはリスク分散になるのですが。
投稿: kitten | 2011-03-18 22:12
私は薬局薬剤師です。チラージンの緊急輸入がどれくらいでなるかわかりませんが、大学時代の友人たちにも対策をきくと、
処方日数制限、隔日投与、2~3日おき、1/2 錠や1/3錠による投与などの対応策でした。
一日も早く患者さんに安心して供給できることをねがってます。
投稿: 那須乃与一ん | 2011-03-20 10:55
なかなか情報がなくて困っていたのですが、
ようやく情報をみつけました。
http://square.umin.ac.jp/endocrine/hottopics/T4committee_0320ver3.1.pdf
これは、日本内分泌学会のページです。
これによると、供給再開は4月中旬を目処、とのことです。
あすか製薬さんから正式な発表がないのがあれですが、
おそらくは大丈夫ではないか、と。
また、このページによりますと、
「いわき工場の社員が逃げたかのような風評があるよう
ですが、調査と物資の確保に奔走しておりましたと
ご理解していただければ幸いです」
とのことでした。
ということは、東洋経済の記事に誤りがあったか、
もしくは現場が相当混乱していて、情報が錯綜していたか、
ということですね。
一応、「この記事が事実であれば」という前置きはつけたものの、
私自身も風評を広めるのに一役買ってしまったことは間違いなく、
あすか製薬のみなさまに大変申し訳なくおもっております。
おそらく、「工場自体が立ち入り禁止」という情報も、
仮に事実であるとしても、余震を考慮したものであり、
放射能が怖くて、ということではないと思われます。
なにはともあれ、一安心です。
この情報は、もう少し確度を高めてから本記事にします。
もう一回改めて、謝罪文書きます。(汗)
がんばれ、福島!がんばれ、あすか製薬!
投稿: kitten | 2011-03-23 11:26
こんな大切な薬が、いち製薬会社が独占していたなんて、驚きと怒りで一杯です、と同時に、厚生省にも問題があると思います、何か政治的、裏が有るようにも思います、今すぐにでも法制を変え、チラージンに限らず、大切な薬を、他の製薬会社でも対応出来るように、法改正すべきです。
投稿: ジミー | 2011-04-17 15:24
ジミーさん、コメントありがとうございます。
「なぜ、チラーヂンはあすか製薬しか作っていないのか?」
は、記事にするのを忘れてました。
長くなるので、新しく記事を書きました。
http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-4044.html
投稿: kitten | 2011-04-18 00:07
父があすか製薬にて一昨年まで働いていました。チラージンSのことはkitten様の続報のブログ記事にもありますが薬価が安くどこの企業も手をださないのが現状だそうです。あすかも国がある程度補助することで生産してるとのことです。
なので独占してると言われたり工場から逃げ出した等言われるとちょっと悲しいですが患者様から見れば今回のように供給が止まると大問題だと思いますのでどうにか対策をしてもらいたいと思います。
早く供給が安定することを願っています。
投稿: コム | 2011-04-19 07:59
>コムさん
コメントありがとうございます。
国から補助が出てるんですか・・・。そりゃまたすごい。
チラーヂンには、もはや「旨み」はないですからね。
かといって作るのを止めるわけにいかず、
供給が止まると大問題。むしろお荷物かも知れません。
緊急輸入品のレボチロキシンナトリウムが、昨日から出荷されている・・・はずです。
(まだ発注していないので見ていませんが。)
あすかさんは、まだまだ大変でしょうけれども、
薬局サイドとしては、「一息ついた」という感じですね。
最悪の事態は避けられましたので。
投稿: kitten | 2011-04-20 22:58