疑義照会にクレーム(その2)
日曜日不定期連載の疑義照会シリーズ。
前回に引き続き、疑義照会でクレームを受けたという例を紹介する。
<処方実例>
バイアスピリン錠100mg 1錠
アムロジピン錠5mg 1錠
クレストール錠2.5mg 1錠
分1朝食後 14日分
ユーロジン錠2mg 1錠
不眠時 14回分
以上
患者さんは80歳の女性。近くの内科の医院からの処方箋。
実は、この処方実例は、正確ではない。(おぃ)
朝食後以外にもいくつか薬は出ていたと思うが思い出せないので。
ポイントは、最後の部分。
「ユーロジン錠2mg 不眠時」だけだ。
.
もちろん、これだけでも全然問題にならない。
問題なのは、この患者さん、他のクリニック(心療内科)にも通っている。
そちらの処方は・・・
ユーロジン錠2mg 1錠
ハルシオン錠0.25mg 1錠
分1 寝る前 14日分。
この処方が、7日前に出ていること。
ユーロジンもハルシオンも、睡眠薬である。
一目みてわかるのは、ユーロジンが重複していることだ。
片方が寝る前、もう片方が頓服の「不眠時」だから、
厳密に言うとありえない訳ではないんだけれども・・・。
両方とも同じ先生から出ているのであればともかく、
別々の先生から、全く同じ薬が出されるのは問題だろう。
さらに、薬歴を確認してみると、事情がわかってきた。
.
もともと、この患者さんは内科の方だけにかかってきたが、
最近、睡眠薬を服用しても眠れないことが多くなってきた。
内科の先生も、色々と薬を変えて試してみたんだけれども、
どうもうまくいかない。
そこで、内科の先生が、心療内科の先生を紹介したらしい。
その流れで、心療内科の先生を受診したのが7日前で、
ユーロジンにハルシオンが追加された、と。
.
そういう状況なら、内科の先生が継続して睡眠薬を出す理由はない。
この患者さんの不眠に関しては、心療内科の先生が専門で診るべきだろう。
というわけで疑義照会。薬が重複していることを内科の医師に伝えると、
すぐに、「じゃ、削除で」となった。
たぶん、「前回の処方をそのままコピーしちゃって、ユーロジン消し忘れた。」
ってのが真相なんじゃないかと思っている。
.
ところが、問題はここからだった。
当の患者さんから、「なんで医師に連絡したのか?」と言われた。
患者さんは、そのままユーロジンを両方から欲しかったそうだ。
「でも、同じ薬を別の先生から出してもらうのはややこしくなりますし。
両方服用すると、ユーロジンの量が多すぎます。
不眠の症状については、心療内科の先生が専門なので、そちらで言ってください」
と説明したんだけれども・・・
「この薬局は、患者の意向を無視するのか!」と激怒された。
でも、それで何かおこったら、確実に私の責任問題になる。
患者の意向よりも、安全を優先する。当たり前だ。
実はこの患者さんは、最近少しおかしいかな、というところがあった。
もっとはっきり書くと、認知症を疑っている。
おそらく、内科の医師もわざわざ心療内科に紹介したのは、
その辺もあるんじゃないかな?と思っている。
患者さんには、「薬を安全に使っていただくために、必要なんです」で
押し通したけれども、納得していただけたかどうか。
.
それでも、この患者さんのよかったところは、
ちゃんと両方ともウチの薬局に処方箋をもってきてくれたところだ。
これ、別々の薬局に行かれると、チェックをすり抜ける可能性がある。
お薬手帳をちゃんと活用できていれば、防げる可能性は高まるけれども、
手帳を活用していない人だと、そのまま重複してしまう可能性は高いな。
.
ま、なかにはそれを知っていてあえて手帳をもたない人もいるんだが。
以前、同じように睡眠薬が重複していた人に注意したところ、
「うん、こっちの薬は、お父ちゃんの分やねん。」と堂々と言われた。(苦笑)
いや、それでも重複だから疑義照会で削除してもらう必要がある、と言うと
「わかった。じゃぁ、そっちの処方箋は別の薬局に持っていくわ。」
・・・・・。通報してやろうか。
.
それはさておき。
このケースでは、いくら患者さんに恨まれようが疑義照会すべきである。
ぶっちゃけ、疑義照会しなかったら医師に怒られる。(苦笑)
保険薬剤師としても問題だし。
トラブルになることもあるし、面倒なこともあるんだけれども、、
「それが薬剤師の仕事」なんだから。
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