ジスロマック錠250mg 1錠 28日分
久しぶりの疑義照会シリーズ。
早速、処方実例から。
<処方実例>
エブトール錠250mg 2錠
ジスロマック錠250mg 1錠
分1朝食後 28日分
ファロム錠200mg 3錠
ビオフェルミンR錠 3錠
分3毎食後 28日分
以下省略。
.
患者さんは、70代の女性である。
とりあえず、抗生剤を28日分だからなぁ・・・。普通じゃない。
エブトールは、普通は結核に使う薬なんだけど、
(というか、結核菌にしか保険適応がない)
実は、処方箋を見ただけで結核ではないのが推測できた。
結核だと、公費(国からの医療費助成)がつくはずなんだけど、
処方箋にその記載がないからだ。
ただし、処方元の先生は・・・呼吸器科の専門医なので、
処方箋の書き間違いとか、単純ミスとかはちょっと考えにくい。
他のドクターには失礼な話ではあるけれども、
薬局サイドとしては、処方医がどんな医師かによって、
疑義照会する、しないを決めることはある。
.
さて、エブトールはまぁいいとしよう。
結核ではなくても、使う事例があったような記憶が(かすかに)ある。
量的にも問題はない。
問題は、ジスロマック錠250mgの28日分だ。
・・・そんな使い方、みたことない・・・。
.
ジスロマックは、マクロライド系の抗生物質なんだけど、
「1日1回、1回2錠、3日分」が、普通の服用方法。
3日服用すれば、1週間ほど効果が続く、と。
まれに、「1回4錠服用、1回だけ」なんてのもあるけれども。
毎日服用するもんじゃないよなぁ・・・。
それを言うなら、ファロムも継続して服用するような薬じゃないが。w
もちろん、添付文書には載っていない。
.
ただ、処方したドクターは呼吸器の専門医。
勘違いしたミスなんてのは、いくらなんでも考えにくい。
これは、私の知識が足らんだけだろう。
疑義照会するかどうかは悩んだんだけれども、
実は、他にも疑問点があった(手書き処方箋で規格が抜けてた。w)ので、
ついでに確認することにした。
「ジスロマック錠は毎日服用でよろしいでしょうか?」
答えは、「処方箋どおりに出しておいて下さい」
・・・ま、そうだろうなと思ったけど。やっぱりか。
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まったく、こちらが不勉強なので申し訳ない限りなんだけれども、
こういう場合は、(物知らずな)薬剤師に分かるように、
もう少しコメントを付け足してもらえると有難いんだけど・・。
ま、忙しいだろうから無理だな。(苦笑)
その後、自分で調べてみてもよくわからず。
医師がそういうんだから、間違いであるはずはなかろう、とそのまま出した。
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その後、メーカーに聞いてみたけれども、メーカーも知らない、と。
で、メーカーから(なにかのついでに)医師に確認してもらい、
やっと処方意図が分かった。
.
実は、ジスロマック錠には、600mgという剤形が存在する。
私は見たことがない。見たことがある薬剤師はごく少数だと思う。
つーか、600mgがあるってことを知っている薬剤師の方が少数派だろう。
なぜか、というと、600mg錠の適応が・・・
「後天性免疫不全症候群(エイズ)に伴う
播種性マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症」
しかないため。ようするに、HIVの患者さんにしか使われないからだ。
HIVの治療をする病院は、非常に少ないので、その近くの薬局でしか、
600mgをお目にかかることはないだろうな。
で、今回の患者さんは、もちろんエイズではないんだけれども、
病名としては、マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症
だったそうだ。この病気は、HIVの患者さんしかかからない訳じゃない。
非結核性抗酸菌症の一種。結核菌と同じ抗酸菌だけど、結核菌じゃない。
なるほど、それでエブトールを使うわけか・・・。
ネットで調べたところ、代表的な治療法としては、
クラリスロマイシン+エサンブトール(エブトール)なんだけれども。
クラリスロマイシンと同じマクロライドのジスロマックを使うってのも、
ないわけではないだろう・・・、と思う。
非常に半減期が長い薬だけれども、どうせ継続服用するのであれば問題ない。
6錠で1週間、と考えると、毎日1錠なら7錠/週。
そう考えると、そんなに問題はないのか。
ネットで軽く調べた感じでは、確かに、(HIVではなくても)
クラリスロマイシンのかわりにジスロマックを使う例もあるようだった。
.
非結核性抗酸菌症は・・・なかなか難しいという印象がある。
なので、医師もいろいろと研究しながら、抗菌剤の組み合わせを探っている、
と思われる。(ファロムを使う例は、ネット上では見つからなかった。)
ただ・・・どう見ても、保険適応はないんだけどなぁ。(苦笑)
なので、(念のため)やっぱり疑義照会は必要なんだろう。
でも、たぶん保険で切られることはないように思う。
そんなに杓子定規に査定されるわけではないので。
おそらく、専門医による処方であるならば問題なく通るだろう。
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コメント
http://blog.goo.ne.jp/gimmedicineuptodate/e/0e596bf5f85a9bdaeadef6cd61c8098a
内科のDr.のブログにこれと同じ使用例が載ってます。
投稿: | 2011-04-11 21:50
コメントありがとうございます。
キーワードとして、MAC(もしくは肺MAC症)、
あるいは「非結核性抗酸菌症」をつければ、
検索すれば情報は色々でてきます。
今となってみれば、なぜわからなかったのか不思議ですが、
実はこのネタは、疑義照会から謎が解けるまで
3ヶ月以上も時間がかかっています。(苦笑)
投稿: kitten | 2011-04-13 22:37