天災か人災か?
今回の原発事故は、天災か人災か?
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報道では、「天災というより人災だ」という声の方が大きい気がする。
私の感覚では「どうみても天災だろ、常識的に考えて。」だが。(苦笑)
あまり東電擁護の記事を書くと、批判されるかもしれないが。
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そもそも、天災or人災?という二分法に無理があるだろう。
今回の事故でいうならば、「天災 and 人災」というのが一番しっくり来る。
全て天災であり、東電は何も悪くない、とはいえない。
が、逆に、「全責任は東電にある人災」ともいえないだろう。
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まず、当たり前の事実として、「天災なら怒りの鉾先がない」
極端な話、「運が悪かったね」としか言われない。
それじゃ、被災者がかわいそう過ぎる。
「被害者がいるのなら、必ず加害者がいるはずだ」
これって、全人類が必ずそうなのか、あるいは日本人が特殊なのか。
ともかく、日本人、というか日本のマスコミはそう考える傾向にある。
(薬害事件とかもそういう構図になることが多い)
ひどい言い方をするならば、「サンドバック」を探す。
たいていの場合は、国になる。今回の場合は、東電と国、だな。
ようは、他者をたたく、怒りをぶつけることで発散しよう、と。
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そりゃ東電にも国にも責任はあるけどさ、
両方とも「被害者」でもあるわけなんだから。
東電と国を叩いて、問題が解決するんならいくらでも叩けばいいけど・・・。
少なくとも、今のところ叩いたところで何も問題は解決しないぞ。
まぁ、感情の問題だからしょうがないけどさ。
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今回の「原発事故」そのものの対応について、
東電(や政府)が致命的にまずい対応はしていないと思う。
「あの時にこうしてれば、ここまで被害が大きくならずにすんだ」って、
確実に言えることはないだろう。
確実に言えるとすれば、「そもそも原発を作らなければ」ってことかな。
たぶん、そこまでいくのが一番わかりやすい。
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情報伝達、リスクコミュニケーションに関しては、
「こうしたらよかったのに」というのはいくらでも出てくると思うけど。
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ただし、どれに関しても正解はないんだ。
ここを通せば、あっちが通らなくなる。全てそういう問題だ。
例えば、原発を作らないということは、化石燃料依存を強めるということになる。
地球温暖化が問題にならないか?
日本で原発が推進されたのは、資源上の問題もあるだろう。
太陽光や風力などは、コストが高すぎる。
電気代を跳ね上げてもいいのか?という話になる。
そうでなくても、「現在稼働中の全原子炉を停止」すれば一番安全だけど、
そうすれば、全国的に電力不足が発生する。それでよいか?
では、少なくとも今回の地震と津波に確実に耐えられる設備を
各原子炉に、とすると当然経費がかかるから、電気代に跳ね返ってくる。
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少し前(5,6年前か?)電力のクリーン化を進めるドイツの電気代が高騰した結果、
電力コストによって倒産の危機に陥る工場があったような記憶がある。
電気代があがるということは、個人だけでなく企業にも大きな負担となる。
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一言で言うならば、「単純に解決する問題じゃない」んだ。
また、全員が納得できる解というのも、たぶん存在しないと思う。
「こうすればよかったのに」を、実際その時点で行っていれば、
また別の問題が発生する可能性は否定できない。
その問題は、元の問題よりも深刻である可能性まである。
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例えば、放射性物質の拡散シミュレーションを気象庁がなかなか公開しなかった。
理由は、「仮定が大雑把で、精度も悪い。実際には役に立たないから。」
シミュレーション結果よりは、実際の測定値の方が正確で確実。
また、よほどのことがない限り実際の測定値を見てから指示を出しても、
現状ではさほど問題がない。
避難準備に一ヶ月かけてもよい、っていうのは、ある意味で
「緊急を要する事態ではない」ってことでもある。
ところが、気象庁が公開しないことが、「情報を隠蔽している」と
いらぬ誤解を招いてしまった。
今となって考えれば、最初から公開しておいたほうがよかっただろう。
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でも、最初から公開していたらどうなっていたか?
「明らかに実測と合っていないシミュレーションを公開して、混乱させた」
って、批判される可能性はないか?
むしろ、無意味な風評被害を発生させるだけになった可能性もある。
そう考えると、どっちが正しかったのかはわからない。
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さすがに、放射能の汚染水に関しては
「もうちょっと早くなんとかならんかったのか?」とは思うけれども。
あれだけ放水していれば、「汚染水」が大量に発生することは予想できんか?
もう一手先を読めなかったの?とは思ったけど・・・。
でも、その辺は私は専門家じゃないからなんとも言えない。
私なんかよりも頭のいい人たちが、政府にも東電にも山ほどいるだろう。
その人たちが全力を尽くしてこうだったんだから、しょうがないじゃないか。
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私は、最近はもっぱら「kikulog」で情報収集している。
そこの常連コメンテーターの「技術開発者」氏の逆説的な話があった。
(探しきれないので、うろ覚えで要旨のみ)
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世界の原発関係者は、みな福島に注目している。
過去の原子力関係の事故は、チェルノブイリにしてもスリーマイルにしても、
東海村の臨界事故にしても、 「事故につながる重大なミス」が明らかである。
そんな無茶をすれば、そりゃ事故るのも当然、というくらいの。
ところが、今回の福島の事故は、重大なミスが見当たらない。
重大なミスがないのに、これほどの事故がおきるという方が恐ろしい。
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まぁ、そんな感じの内容。逆説的に言えば、
原発反対の立場の人は、今回の事故を「天災」とした方がよい。
ってことだ。
アメリカやフランスなどの原発大国は、
「ウチは福島とは違う」と強調してはいるけれども、
内心のところ、ヒヤヒヤもんじゃないだろうか。
結局、「想定外の何か」がおこる可能性は0にできない訳で、
そうなったときの被害の大きさを考えると、原発なんて絶対に割に合わない。
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原発の処理は、少なくとも6ヶ月から9ヶ月、なんて話も出ている。
その間放射性物質垂れ流しってことはないと思いたいけど。
人災でも天災でもいいから、とにかくトータルとしての被害を最小にする。
国は今後も難しい舵取りを任されるわけで・・・。
批判ばかりしているだけなら、楽だけどさ。
じゃぁ、実際のところどうするよってのは、果てしなく難しいぞこれ。
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