小出裕章氏の見解
昨日の続き。
福島県の子供の尿中から、放射性セシウムが検出された問題で、
京大の小出先生の見解を見つけた。
http://hiroakikoide.wordpress.com/2011/07/01/tanemaki-jun-30/
(もっとも、非公式なものなんだけれども。)
.
小出先生は、「原発のウソ」という本を出されるなど、
昔から原発の安全性に疑問をもっていらした方。
簡単に言うと、原発反対派である。
だが、他の荒唐無稽としか言いようがない反対派と違って、
ちゃんとデータに基づいた話をされるという印象がある。
フェアな人だと思う。
小出氏の見解は面白いと思ったので、
ちょっと引用しながら、私の考え方との違いを解説してみる。
.
以下、一部引用
(そうすると、体に影響が出てくる可能性は考えられますよね)
影響はかならず出るのですね。ただ人間の体、尿の中にはカリウム40という
放射性物質もあってですね、通常のこれまでの状態で言えば、セシウム137の
約1000倍程度ありました。現在セシウム137が10倍になってるわけで、それでも
カリウムのほうが全然多いと思います
引用終わり(強調は引用者)
.
影響は必ず出る、と言い切るのはすごいと思う。
私は、「健康に影響を与えることは絶対にありえない」と書いたのに。w
この辺、物理学者である小出氏と、生物系の私の差とも言えるかも。
物理的に考えて、セシウム137から放射線が出る(これは確実。)
放射線が出る以上、身体の細胞に影響を与えるのも確実、
と考えておられるのだろうか?間違いではないけど。
それは正しいと思うんだけれども、人間の細胞の数は60兆個。
このうちの1個の細胞の染色体の30億もある塩基の1つ変異したとして、
生物学的に意味のある影響があるとは思えない。
放射線は1個じゃない、といわれるかも知れないが、
放射線1個が、確実に塩基を1個変異させるわけもない。
(ここも、相当に確率が低いと思う)
.
それでも、小出先生は放射性カリウムの例をあげた。
放射性カリウムは、自然界に普通に存在する放射性物質。
もちろん、人間の身体にもある。
天然の放射線は身体によい、なんてありえない主張をする人もいるけど、
さくっと無視することにする。w
実際の数字は調べていないけれど・・・小出先生は、
今回検出されたセシウムよりも、普通に人間がもっているカリウムの方が、
放射線は圧倒的に多い、と書いている。
私なんかだと、その事実をもって、「この程度の内部被曝など無視」という
結論になるんだけどなぁ。w
.
もう少し、小出先生の意見を引用する。
以下、引用
.
(将来の発癌のリスクを親御さん心配していますよね)
必ず増えます。必ず増えますけれども、今聴いていただいたけれども、
天然にはカリウム40という放射性物質があって人間の体にくまなくある
んですね。それから被ばくしながら人間の普通の発ガン率になっている
わけで、それと全く同じだけの被曝をしてしまうということになれば、人間
の発がんのうち放射線で出ているものの同じものが上乗せされるという
事になりますね。
そこまではいっていないように私は直感的に思いました。
.
ここでも、必ず増えると断言する小出先生。(苦笑)
ただ、ここも単に表現の問題、といえなくもない。
リスクが増えるかどうか?と言われれば、確かに増えるだろう。
たとえば、生涯の発ガンリスクが30%だったと仮定して、
このセシウムの内部被曝により、
30.000000・・・・・1%に「増える」
私なら、この程度の「増える」は「誤差範囲」で斬って捨てるが、
物理的には、(ごくごくわずかではあるが)「増える」で間違いない。w
.
どの程度増えるか?そうだなぁ。例えば・・・
夏の暑いとある日に、薄着で外出するとする。
おそらく、その日に長袖で外出するよりも、発ガンリスクは「増える」
(日光は「発がん性がある」とはっきりわかっている。)
その程度のリスク、無視する人がほとんどだと思うが、
でも、「増える」ことに間違いはないよねぇ。w
そういう話だろ。
.
そもそも、自然放射線でどの程度発ガン率が増えるかなんて、
ハッキリとはわかっていない。ある程度推測はできるけれども・・・。
自然の放射線が高いと言われている地域でも、
発ガン率に有意な差は出ないという話だから。
.
これ、元の話は文章でなくラジオ放送だと思う。
ラジオを聴いた人は、どう思っただろうねぇ・・・。
最初にとりあえず「影響がある」「リスクが増える」と断言しちゃってるから、
きちんと意味を把握できない人もいると思う。
小出先生は、ちゃんと「人体には放射性カリウムも含まれている」とか、
(引用してないけど)「過去の核実験で放射性セシウムで地球上くまなく汚染されてる」
とか言っているんだけど。
小出先生は、明らかに間違ったことは何一つ言っていないんだけどね。
それとも、私の解釈が間違っているのかなぁ??
「ウソ」じゃないけど、「大げさ、紛らわしい」ではあると思うぞ。
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コメント
はじめまして。
現在、セシウムによる被曝の影響はよくわかっていませんが、チェルノブイリでは心臓疾患や脳梗塞が増加したとの報告があります。同じような放射線を出すカリウムでは、心臓疾患や脳梗塞の増加が顕著ではないと言われています。
さて、カリウム40もセシウムも放射線も放射線の強さは別にして、DNA分子結合を破壊するだけの電子ボルトの放射線を放つという点では、同じとみなすことができます。では、なぜ心臓疾患や脳梗塞が増加したのか、オカルト的に仮説をたてました。この仮説は以下の条件を満たす必要があります。
(1)人体内でセシウムは、カリウム40と同様な振る舞いをする。
(2)細胞には、イオンポンプにより取り込まれる。
(3)排出は、イオンポンプもしくはイオンチャネルで行われる。
セシウムが細胞内に取り込まれた時に核変が起こったとします。セシウムはバリウムになります。生まれたバリウムは、反応性が高く、排出に必要なイオンポンプもしくはイオンチャネルに対して障害を起こす可能性が高いと予想できます。また、イオン半径が大きいので、詰まることもあるかも知れません。一方、カリウム40は、核変してもカルシウムに変わるので、問題はありません。
カリウムは、必要とされるので、カリウムポンプで細胞内に取り込まれます。バリウムによりカルシウムの排出がうまく行かない場合、カリウムが核変したカルシウムを排出することができにくくなります。同様にカルシウムが細胞内に入った場合も排出されにくくなります。すなわちカルシウムが蓄積された細胞が出来上がります。
カルシウムが蓄積された細胞は、血管の場合動脈硬化を起こす原因の一つになり得ます。これが、心臓疾患や脳梗塞を起こしているのではないでしょうか
投稿: SFタイガース | 2011-11-02 13:50
>SFタイガースさん
コメントありがとうございます。
面白い仮説だと思いますが、少し無理があります。
放射性物質の量が少なすぎることです。
例えば、100万ベクレルのセシウムを摂取したとしても、
セシウム原子100万個=1/6x10^(-17)mol
=2.3x10^(-18)g
ナノグラムやピコグラムのオーダーですらありません。
もっともっと、ごくごく微量です。
一般的な医薬品は、たいていmg単位で効果を発揮します。
非常に大雑把な計算ですが、小数点以下のゼロの数が、少なくとも10個は違います。
放射性物質の「化学的性質」では、あまりに微量過ぎて
検出されないと思います。
もっとシンプルに、原発事故による心理的ストレスによる
血圧の上昇で説明がつきますよ。
これだって立派に「原発事故」による影響です。(苦笑)
投稿: kitten | 2011-11-02 22:34
返信ありがとうございます。原子の数の計算が間違っていると思います。1ベクレルは、一秒間に一つの放射性核種が崩壊することを意味しています。さて、1ベクレルのCs137が体内から検出されたとします。
各時点で残存する原子数をNとして、放射壊変の速度がその時点の原子数に比例することを時間 t に関する常微分方程式で表すと
-(dN/dt)=λN
となります。これを解くと、
λ=0.693/T
Tは、半減期ですから
T=30*365*24*3600 となります。
ここで、(dN/dt) は1ですから、
N=1/(0.693/(30*365*24*3600)) となり、1365194805の原子核がなくてはなりません。
投稿: SFタイガース | 2011-11-24 14:08
ええ、放射性セシウム原子の数はそんなもんでしょう。
微分方程式なんざ、10年以上見てもいないので
もはや計算もできませんが。(苦笑)
ただ、SFタイガースさんの仮説では、
全ての放射性セシウム原子の数じゃなくて、
核変するセシウム原子の数のみが問題になるはずです。
なので、Bqで計算してもいいかと。
>セシウム原子100万個=1/6x10^(-17)mol
と書きましたが、正確に書くならば、
「セシウム原子」は1秒間に核変するセシウム原子ですね。
核変しないセシウム原子はとりあえず無視しても
いいんじゃないですか?
もっとも、私の計算もものすごく大雑把です。
医薬品と比べるならば、「1秒あたり」を「1日あたり」
くらいに変換する必要はありますし、
生体内の半減期の問題だってあります。
ただ、その辺を加味してもまだまだ桁が違うと思います。
もうひとつ、今思いついたのですが、
「核変していない」セシウムの挙動も大事ですね。
体内のイオンバランスに影響を与える量になれば、
血圧が変動してもおかしくありません。
「普通の」セシウムは、核変するセシウムよりも圧倒的に多いんですから、
そっちの影響も無視できないんじゃないかと。
ま、あくまで仮説ですけどね。
投稿: kitten | 2011-11-25 08:36
おっしゃる通り、確変するCs137の数が重要です。現在の日本の環境やベラルーシなどでは、体内に少なくとも数ベクレル常に溜まった状態になっています。これは、生体半減期を考えても、補給される分があるからです。
Cs137はアルカリ金属ですから、同じK40と同等な振る舞いをするものだと思われます。数ベクレルあるということは、一日に
24*3600*数ベクレル
の細胞のカルシウムポンプになんらか影響を及ぼしていると仮定できます。複数のカルシウムポンプが細胞にあるはずですから、それほど問題が発生しません。しかし、経過する時間とともに、影響が出始めると思います。何らかの原因で特定の器官に集まる場合、確率は上昇するはずです。実際にチェルノブイリの影響では、その傾向にあるようです。また、25歳以上の方は、大気圏核実験やチェルノブイリ事故の影響で、細胞が変わらない部位例えば心臓などでは、カルシウムポンプに障害があるかもしれません。
投稿: SFタイガース | 2011-11-25 11:12