アクトスに思うこと
今回は、そんなに学術的な話ではない。
アクトス騒動について思うことを書いてみる。
(たぶん、まとまらないと思うが・・・)
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アクトスについては、過去に2度ほど記事を上げている。
「アクトスと膀胱がん」(2011/6/14)
「アクトスと膀胱がん(続報)」(2011/6/25)
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実際に、アクトス服用後に膀胱がんになった患者さんは、
かなりの数に上るんじゃないかと思われる。
これは、仮にアクトスが全く関係がないとしても、である。
(私はそう思うわけではない。あくまで「仮定」だ。)
仮に、アクトスが「真っ白」だったとしても、
アクトス服用後に膀胱がんになる患者さんは存在し続ける。
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がんという病気は、原因が一つではない。
複数の要因が複雑にからみあっておこる病気で、
しかも一人一人にとってみれば、何が原因か、なんてわかるわけもない。
私の知る限り、唯一の例外は「中皮腫」で、
これはアスベストの暴露がなければほとんど発生しない。
これくらい、因果関係がはっきりしているからこそ、
アスベストは被害がつかみやすかった、とも言える。
例えば、アスベストによって増えるのが、「ただの肺がん」だったら、
たぶん、未だに因果関係は証明されていないだろうし、
証明されたとしても、救済も非常に困難になっただろう。
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アクトスは、仮に「黒」だとしても、
膀胱がんを引き起こす原因の「ひとつ」に過ぎない。
コーヒーも、放射線も、「糖尿病」自体も膀胱がんの原因になりうる。
じゃぁ、アクトス服用後、膀胱がんになったとして、
原因がアクトスであると言えるのか?
そんなことは、誰にも言えないだろう。
アクトスよりも明確に発ガン性が指摘されているが、
アクトスと同程度(ハザード比1.2倍程度)のものとして、
「受動喫煙」がある。
例えば、職場が全く喫煙に無頓着な職場で常にタバコの煙が充満してて、
自分が全く喫煙しないにも関わらず、肺がんになった場合、
職場を訴えられるのか?きわどいところだと思う。
10年前なら「論外」だったと思うが、今なら訴訟もありえるかも知れない。
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「がん」というのは、因果関係の確認が非常に難しい。
まだ、多くの人が罹患すれば、統計で分かるけれども、
膀胱がんのように、そもそもなりにくいがんであれば、なおさらわからない。
今回、ヨーロッパのデータで有意差が報告されているが、
見た感じ、欧米では日本よりも膀胱がんの罹患率が高い。
この感じだと、日本で調査したら有意差が出ないかも知れない。
また、「そうらしい」ことがわかったところで、
自分自身のがんの原因がアクトスと分かる訳ではない。
がん、というのは何かとやっかいな病気だと思う。
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これは今後、放射線の被曝でも似たようなことが言えるだろうな。
福島県、または近隣の県で、今後、必ずがん患者は出る。
放射線とがんとの因果関係の証明は、二重の意味で困難だ。
一つには、あくまで「確率」の問題であるからして、
ある程度母数が揃わないことにはなんとも言えない、という事実。
5年、10年、20年調査してみて、初めてわかる、ということもあるかも。
さらには、「例えばがんになる確率が0.5%上がる」と分かったとして、
その人がかかったがんが放射線によるものかどうかは、やっぱり証明困難だ。
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10万人いれば、3万人くらいは何らかのがんにかかるとして、
それが、3万500人になることがわかった、とする。
「誰がその500人か?」は、誰にもわからない。
でも、おそらくその3万500人のうち、多くの人が「放射線が原因」と思うだろう。
これ、相当「高め」の設定にしたけれども、
例えば10万人中、0~10人増えることが分かった、となると、
さらに話がややこしくなる・・・。実際の「被害者」はものすごく少ないのに、
補償を求める人は、非常に多いという事態になる。
では、「一切影響はなし」ということになればどうなる?
それでも、がんにかかる人ってのは、一定割合で発生し続ける。
放射線が原因だろうが、何が原因だろうが、「がん」という病気の
深刻さに影響はないんだけれど。
何か、軽く扱われるような気がするのはなぜだろう?
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そもそも、医学というのは不確実なものである。
100%確実な医療など存在しない。
ある人には効果があっても、ある人には効果がないどころか、
有害でしかない。そういうことも普通におこりうる。
乳がんの手術後の、再発抑制なんかわかりやすい。
放射線による治療を行うか?ホルモン剤による治療を行うか?
どれだけ治療を行っても、再発してしまう人もいる。
逆に、何もしなくても再発しない人もいる。
その確率はおおまかに分かっているが、
自分自身が、どれにあてはまるかなんて、誰にもわからない。
例えば、放射線治療なんかだと、副作用があるかも知れないし、
最悪の場合、他のところでガンになる可能性だってあるだろう。
でも、放射線治療を行ったほうが再発率は低い。
なら、可能性の高いほうに賭ける方がよいだろう。
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ただし、常に「裏目」に出る可能性は残っている。
例えば、アクトスを、他の薬に変更したところで、
その薬で重篤な副作用がおこる可能性はある。
また、結果として血糖コントロールが悪くなり、
インシュリン注射を打つ時期が早まるかも知れない。
他の病気を併発するかも知れない。
最悪の場合、死にいたるような合併症の可能性も
高まるかも知れない。
確率はおおまかにはわかるかも知れないが、
「自分自身がどうなるかは、誰にもわからない」
医師は、常に合理的な判断が求められる訳だ。
たとえ発ガンリスクがあろうとも、ごくわずかであれば
薬を変更するリスクの方が大きい、と判断する医師もいるだろう。
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常に「確率」と戦いながら、個々の患者に接する医師というのは、
大変な職業だと思う。
何回「裏目」を引いたとしても、常に最善と思われる選択を続けなくては
ならないのだから。
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