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私が後発品を勧める理由

 仕事の話。

 このブログを始めた頃は、後発医薬品(ジェネリック)に関して、
中立的な立場をとってきたように思う。

 無条件に礼賛することもないし、かといって、非難することもない。
まぁ、一番の問題点は品質であり、その品質の良し悪しが
よくわからない、という点ではあるんだけれども。

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 最近は、というと、かなり強力に勧めるようになった。

 その理由を考えてみたい。

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 まず第一に、当初危惧していたよりも、
後発医薬品に変更したことに関する不具合が少ないということ。

「全く同等」という言葉は、いまでも首をかしげざるを得ないが、
「ほぼ同等」であれば、問題ないんじゃないかと思う。
後発品に変更したことにより、トラブルに発展した例はごくわずかだ。

 これは、時間がたつことにより、後発品は後発品なりに、
品質に関しては「信用」を獲得していた結果、といえるだろう。

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 もっとも、流通に関してはまだまだ問題大有りなんだが。
需給予測を読み誤ったために、流通が困難になった薬もあるし、
「諸般の事情で」販売を中止するものもあるし。

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 品質の問題がそれほどでもないのであれば、
患者さんにとっては金銭的なメリットだけが残るわけで。

 また、「規格変更OK」のルールも地味に大きい。
大病院の「アムロジン5mg 0.5錠」という半割処方は、
容赦なく「アムロジピン錠2.5mg 1錠」に変更する。

 薬局も、錠剤を割る手間が省けるし、患者さんだって飲みやすくなる。

 病院の採用薬品の壁を越えられるのは、ありがたい。

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 ただ、最近私が考えているのは、
「保険薬剤師であるから」という理由だ。

 保険薬剤師は、後発医薬品を勧める義務があるんだ。

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 日本の医療費は高騰を続けている。
保険財政が破綻するのは、時間の問題ではないか?
医療費を下げることは、国民皆保険制度にとて至上命題だ。

 今はなんとか、回っている。
では、自分が高齢者になる頃にはどうなっているか?
さらに言うなら、自分の子どもの世代はどうなる?

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 いつまでも健康保険制度が生き延びるとは思えないけれども、
少なくとも医療環境が今よりも悪くなっていくであろうことは、
間違いないんじゃないだろうか?

 将来の世代のために、医療費を節約して欲しい。
もっとどす黒く言うならば、団塊の世代の勝ち逃げは許したくない。
将来、自分達の世代が苦労するのは目に見えているからこそ。

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 まぁ、将来世代のため、というと聞こえはいいかも知れないが、
思い切り本音を言うなら、「私のため」だ。(苦笑)

 現役世代が、高齢者の医療費を支える構図になっている。
現役世代が必死こいて支えている上で、高齢者がブランド物で
着飾っていたら、腹立たないか?

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 もちろん、患者さんと接する時には絶対にそういう態度は出さないが。
絶対に無理強いすることはないし。
私がそういう価値観をもっていたところで、
相手には相手の価値観がある。

 価値観の相違は、どんな問題でもつきまとうだろう。
世代間ギャップがあるのであれば、さらに。

 

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('10~13)仕事(薬局)」カテゴリの記事

コメント

後発品を使うと医療費下がるけど新薬の開発費も下がるね・・・

医療費下げる観点からなら薬局の初診料とか再診料の2重取りもどうかと思うけどね。処方箋持ってきてる患者に今日はどうしました?って
もう診察済みだよね・・・

投稿: ふぇいく | 2011-09-12 17:57

ふぇいくさんへ

初診料、再診料はいずれも医院での報酬ですね。
薬局では払う必要は無いので安心してください。

投稿: とおりすがり | 2011-09-12 21:40

>ふぇいくさん

 コメントありがとうございます。新薬の開発費についてですが、
「新薬創出加算」なるものが設定されています。
(2010年4月より。)
これをスマートに説明する自信はないのですが、(苦笑)
まだジェネリックの出ていない「新薬」は、
2010年3月以前よりも、薬価が落ちにくくなっています。

 乱暴に言うと、
「まだ特許の残っている新薬は、利益を確保しやすくするから、
ジェネリック推進しても我慢してね。」という意味があります。

>処方箋持ってきてる患者に今日はどうしました?って

 ある意味、「無駄」といえば無駄なんですけどね。(苦笑)
「ダブルチェック」という意味合いがあるんです。
医師だって、(稀に)間違えることがあるんです。
処方箋に病名は書いていないので、患者さんに聞くしかないんですね。
 症状を聞いて、明らかに薬が違うことが発覚することもあります。

 そもそも、ダブルチェックって、ある意味「無駄」でしょう。
二度手間だし。でも、それでも簡単には削減できないんですね。


 ただ、言われていることはわからなくはないです。
医療費削減というのなら、保険薬局も身を削る必要があります。
 医療費全体の話としても、「安くなる」ということは、
すなわち安全性に劣る、ということにつながりかねないです。
そういう視点は大事だと思います。

 

投稿: kitten | 2011-09-12 22:39

>とおりすがりさん
調剤基本料と書けばわかりやすかったですか?
まぁすなわち診断料です。
とうりすがりさんの薬局もしくは行きつけは調剤料と薬剤料しか
請求されてないところかもしれませんね。
中にはそういうところもあります。

薬価についても新薬は高いですが、高くつけられすぎて売れずに
似たような作用のゾロを使うケースも多いですね。
結果薬価が落ち着くまでは売れずに売れ始めたころにはゾロが出ると・・・
僕はメーカーの人間ではないですが
医療費を下げる≒とにかくジェネリックを売る これはどうなんでしょう?
先発屋さんが後発屋を買収してゾロを売るって、おかしな感じですね。

投稿: ふぇいく | 2011-09-13 09:45

>ふぇいくさん

>薬価についても新薬は高いですが、高くつけられすぎて売れずに
>似たような作用のゾロを使うケースも多いですね。

 うーん、裏づけがないのでなんともいえませんが、
私個人の印象としては、多いとは言えないと思います。
そんな医師が多ければ、薬剤師が必死こいてジェネリック
勧める必要はない訳で、楽なんですけどね。w

 もっとも、あくまで「調剤薬局の」話ですね。
病院内だと、また別の事情が入ってきそうです。


 あくまで印象でしかありませんが、
あえて後発品使う医師よりも、「後発品変更不可」とする
医師の方が多いと思いますよ。

 似たようなゾロに負ける新薬って、所詮その程度の力
しかないのが問題なのでは?
(その辺は、また別の話になりそうですね。)

.

>医療費を下げる≒とにかくジェネリックを売る これはどうなんでしょう?

 他に医療費を下げる手段はあるだろう?というご指摘なら、合意します。

投稿: kitten | 2011-09-13 14:48

調剤基本料について少し誤解されている感じがします。

調剤基本料は、最低限薬局の機能を維持するために必要な経費を勘案しているものです。具体的には、医薬品を在庫・保管しておくための経費・薬剤師をそろえておく経費・調剤に当たって必要な機器の経費など。忘れてはならないのが、薬の袋・水薬などの瓶・用紙などの費用もこれに含まれているというところですね。このため、薬局では患者さんからこれらの代金を別途頂くことを許されていないわけです。

ですので、「今日はどうしました?」と薬剤師に聞かれなくてもとられちゃいます(苦笑)

>薬価についても新薬は高いですが、高くつけられすぎて売れずに
>似たような作用のゾロを使うケースも多いですね。

私もそうは思えないですね。むしろ、ゾロにできないように似たような作用を持つ薬が数種類ある中、あえてゾロが無い薬を処方する医師が多いように感じます。

余談ですが、「調剤基本料」っていうのが何かっていうのはちょっと説明しにくいのでいろいろ探したところ、

http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-28c5.html

ここがhitしました(笑)。うーむ、ぼかして書いてある(笑)

投稿: とおりすがり | 2011-09-14 23:34

>とおりすがりさん

 調剤基本料の説明は、難しいんです。w
薬局側からみれば、その説明でもいいんですけど、
患者さん側からみて、それで納得できるか?と。

 患者さん側からみれば、一番わかりやすいのが
「カウンター利用料」じゃないかと思います。
処方箋を渡した瞬間、発生する金額ですからね。
・・・それで納得できるかと言われるとまた別問題ですが。

 全体的に調剤報酬は説明しづらいです。
加算はまだ、わかりやすいですけれども、
調剤料とか「剤」の概念とか・・・。

投稿: kitten | 2011-09-17 01:37

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