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LNT仮説とスロープファクターについて

 畝山先生の本を読んで。

「安全なたべもの」ってなんだろう?(2011/11/10)

LNT仮説とスロープファクターについて書いてみる。
もっとも、どこまで正しく書けるかは激しく謎。
本当に知りたい方は、畝山先生の本を読んでもらったほうがよい

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 まず、最初に「NOAEL」の説明がいるな。
「NOAEL」とは、毒性学の言葉で、
「この量以下だと、何の影響を与えない量」のこと。
食品添加物なんかは、NOAELを元に規制値を決められる

 でも、放射線や一部の発がん性物質では、このNOAELを求められない。
そもそも、がんってのは自然発生することもあるのだから。
バックグラウンドがあるので、暴露量が少ないと影響が見えなくなってしまう。
放射線でいうと、100mSv以下では発ガン性が認められない、ということだ。

 でも、「見えない」からといって「ない」とは言えない訳で。
「これ以下の暴露なら影響はない」とする「閾値」は一概に決められない。
(通常物質では、「閾値」=NOAEL、でいい)
そこで、ごくわずかでも発ガンに影響する、と仮定して管理することに。
これが、「LNT仮説」(閾値なし直線仮説)だ。

 影響が見えないところは、「原点を通る直線」と仮定している。
ようするに、危険性と暴露量は、きっちり比例する、という仮定。

ここ、あくまで「仮定」であることに注意しておくことが大事
実際は、閾値があるんじゃないか?という説の方が主流だ。
確実に確かめることはできないが。

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 放射線で有名になったLNT仮説だが、他の発ガン性物質でも、
低用量では影響が確認できないものもある。
そういった物質にも、LNT仮説を適用して管理する。

 じゃ、そういった、「低用量では影響が確認できない毒性」の強さなら
比較できるんじゃないか?
ここで出てくるのが「スロープファクター」一言でいうと「傾き」だ。

 原点を通る比例直線の「傾き」を意味する。
X軸は暴露量、Y軸が発ガン確率の上昇、とすると、
スロープファクターが高いほど、危険性が高い、ということはできそうだ。
もっとも、あくまで影響がみえない「低用量」領域のみの話

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 ただし、あくまで「仮説」を元にした数字であることに注意は必要。
例えば、「100mSvの被曝で1%がガンになる」とするならば、
「10mSvで0.1%がガンになる」(比例するので)となって、
100万人いれば1000人がガンになる、、とやってしまうのは、
あくまで「仮説」の話であって、実際にはどうなるかはわからんよ、と。

 管理上、安全の方にずれる分には問題ないので、LNT仮説が
採用されているだけのことで、必要以上に煽る必要はない、と。

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 スロープファクターを使えば、「LNT仮説」を使っている物質同士の
リスクの比較をすることはできる。(同じ土俵だから)
で、畝山先生の本ではやってくれている。
しかも、そのリスクを放射線に換算する、ということまで。
 低用量の被曝がどの程度のリスクになるのか、「相場」がわかる、という訳。

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 一つ、例をあげる。肉を炭火で焼くと「ベンゾピレン」という発ガン物質ができる。
仮に、体重50kgの人が、毎日50g、この肉を食べるとすると、
スロープファクターを介して計算すると、「6.6mSv」の放射線リスクに相当する。

 もう一つ。日本人にとって最もガンリスクの高い物質は「ヒ素」だそうで、
これは普通に海産物やお米に含まれている。
これも同様に計算すると・・・
「お米を一日三回食べる」=「20mSv相当
「ヒジキを毎日1g食べる」=「27mSv相当」なんだそうな。

 あ、ここでの放射線はあくまで「1回で被曝」する数値なので、注意。
さすがに毎日浴び続けるわけじゃない。

 あと、一般的な傾向として、だけど・・・
「ミネラルが豊富に含まれている」食べ物は、ヒ素も豊富に含まれている。
(だって、ヒ素だってミネラルなんだもん。)

 まぁ、ヒジキの戻し水を食するのは論外だと思うけれども、
「玄米」と「白米」なら、白米の方がミネラルが少ない=ヒ素も少ない。
一概に「玄米がよい」なんて言えないってことだ。

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 スロープファクターを使った計算では、数十~数百mSv相当の
発ガン物質が、ふつうの食品中に含まれている、ってのが解説されていた。

 特にヒジキに関してはちゃんとリスク評価すべきなんだが、
放射線のリスク評価を優先して後回しにされているらしい。
パッと見、ヒジキの方が圧倒的にリスク高そうなんだが。(汗)
一日平均1gくらいなら、普通に食べてる気がするぞ。

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 ここで示されているのはあくまで「相場」。解釈としては、
「普通の食品も、危険性が高い」と解釈するよりも、
「放射線のリスクったって、そんなもん」と解釈する方がいいと思う。

 一日三回米を食べている日本人は、平均寿命世界一なんだから。

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 一時期問題になった放射性物質が含まれる水道水よりも、
むしろミネラルウォーターのヒ素の方がリスク高いかも?
なんて話もあった。
 放射性物質を恐れるあまり、かえってリスクの高い行動を取るのは
合理的とは言えない、と思う。

 アメリカでは、「ガンの30%は食品由来」と言われているそうな。
その「食品」の中身も、残留農薬や食品添加物なんかよりも、
ヒ素やカドミウムのようなミネラルとか、調理法により発生する
ベンゾピレンやアクリルアミドのような発ガン物質の方が
よっぽど問題になる。

 発ガンでいうなら、タバコやアルコールの方が大きな原因。
この辺を無視して、放射性物質をとやかく言うのは、
合理的な判断とは言えないだろう。

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 ちなみに、この記事にどこまで書くかは少し悩んだ。(苦笑)
事細かに全部書いちゃうと、著作権に引っかかるんじゃないかと。(汗)
興味がある人は、ちゃんと本を読んでもらった方がいいので。

 畝山先生の本に関しては、もう一本記事を書く予定。

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コメント

こんにちは。

話がややこしいことに、発癌物質の摂取以上に、ストレスの影響が発癌率に大きく影響しているということが、ラット実験などから判ってます。
つまり、同じ発癌物質を同じ量摂取しているならば、何も知らないか楽天的に考えている人よりも、「これは癌になるかも」と心配してストレスを溜めている人のほうが癌を発症しやすくなるという…

投稿: えまのん | 2011-12-02 11:25

 コメントありがとうございます。

 必要以上に放射線の恐怖を煽る人たちって、
その存在自体が放射線よりもタチ悪いですよね。
ストレスを与えている=健康を害しているってことなのに。
また、本人に自覚がないのがさらに救いようがない。(汗)

投稿: kitten | 2011-12-05 22:09

自覚が無いどころか、本人たちは「俺は世間に警鐘しているんだ」ですから。

投稿: えまのん | 2011-12-06 15:58

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