« ぼくにげちゃうよ | トップページ | インフルエンザ注意報・その2 »

ジェネリック医薬品と生活保護

 このブログの開始当初から、ジェネリック医薬品に関しては
色々と記事を書いてきているけれども・・・。

 最近は、私はかなり「推進」に傾いている。
まぁ、鼻先にニンジンぶらさげられているって理由もあるけど、
基本は、「自分の世代、あるいは子ども達の世代」でも、
ある程度のレベルで保険医療に生き残って欲しいからである。

 今週から、何回かに渡って、ジェネリックに関する話題を
毎週木曜日に連載しよう、と思う。ネタの続く限り。
少なくとも4回くらいは書けるかな?

 今回は1回目。主に、生活保護について。

. 

 医療費の高騰による保険財政の圧迫を受けて、
今年4月の診療報酬改定も、後発品推進を今まで以上に進めてきそう。

 保険薬局でいえば、「後発医薬品の使用量/全医薬品の使用量」を
薬価単位の数量ベースでみて、一定の基準に達したときに、
「後発医薬品調剤体制加算」が算定できる、という方式だ。

 これ、今の基準が20%、25%、30%の3段階なんだけど、
4月からは22%、30%、35%の3段階になる可能性が高い。

 ただし、計算の分母から、生薬、漢方製剤が除かれることになっている。
これらは、1日あたりの使用量が多いのに、後発品が存在しないので、
数量ベースの後発品調剤率を比べるときに不公平感があったが、
少しは解消されるだろう。
(もっとも、根本的に数量ベースってのがおかしいんだけど。)

 加算の欲しい保険薬局は、積極的にジェネリックに変更を勧める。
「金儲けのためか」と言われるかも知れないけど、これは仕方ない。
薬局にとって、なんのインセンティブもなしに後発品を勧める訳はない。
加算なしだと、後発品を勧めれば勧めるほど、売上も利益も下がるので。

.

 さて、この「後発品調剤率」の計算から、なぜか除外されているのが、
「生活保護」の患者さんだ。
 除外されている理由としては、「お金出してるとこが違うから」
生活保護の患者さんの医療費は、全て税金で賄われているが、
そうでない人の医療費は、一部負担を除くと保険が負担しているわけで。
 保険財政の圧迫と、生活保護は何の関係もない。
よって、生活保護の患者さんは後発品調剤率に関係ない

.

 そうなると、薬局としては生活保護の患者さんにジェネリックを勧める
インセンティブは何もない。それなら、先発でいいんじゃね?となる。
ルールとしては、生活保護の患者さんであってもジェネリックを使用するか、
意向を確認することになっているけれども。

 また、生活保護の患者さんは、窓口負担が全く発生しない
自分の懐が痛まない、となると、患者さん側からしても、
ジェネリックを使用するメリットはない

 よって、生活保護の患者さんはほとんどジェネリックを使っていない。
まれに意識の高い方が「私はジェネリックでよいよ。」と言ってくれるくらいで、
大半は先発品を使い続けているだろう。

.

 保険財政も逼迫しているが、国や市町村だって、お金に余裕がある訳はない。
できれば、ジェネリックを使っていって欲しいはずだ。
そこで、確か4年前だったと思うが、
「生活保護の患者さんはジェネリックを使うべし」という
事実上の強制が行われようとしたことがある。

 ところが、これは大反対にあい、あっさりと引っ込んだ。
いわく「生活保護の患者を差別するのか!」と。
当時は、まだジェネリックが勧められはじめた頃であり、
ジェネリックを使っている患者さんの方が、圧倒的に少数派だったから、
これはこれで仕方ないだろう。

.

 さて、今となってみてどうだろう?
診療報酬でのインセンティブにより、薬局は以前よりもかなり、
後発品調剤に積極的になっている。
 結果として、ジェネリックを使っている患者さんも、
以前とくらべて圧倒的に多い。

「保険料も税金も払っている患者さんが安物の薬で、医療費を節約しているのに、
 生活保護の患者さんは、ブランド物の先発品を使っている」という
明らかな逆転現象が進んでいる。

 どう考えても、これはおかしい

.

 では、どのようにして生活保護にジェネリックを導入するか。
これは、非常に難しい問題になる。難しいのは「制度」的な問題だ。

 少なくとも、薬局側へのインセンティブとしては、
後発品調剤率の計算に、生活保護の患者も組み込むべきだろう。
保険だって自治体だって、ジェネリック使って欲しいという点では一致してるし。

 ただ、生活保護の患者さん自体に「ジェネリックを使うこと」のメリットがないと、
薬局側にだけ働きかけても、薬局が負担に思うだけの話。
これは、セットでないと意味がない。

.

 個人的には、「ジェネリックを使わないと罰則」みたいな形よりも、
「ジェネリックを使うとご褒美」のような形の方がいいと思うけど・・・。
どう制度設計すればいいだろうか?

.

 なお、原理原則として、
「ジェネリック医薬品は、値段は安いけれども、
 先発品と同等の効果がある」ということを前提とする必要がある。w
別に、粗悪品って訳じゃないんだけどなぁ・・・。

 ちょっと歯切れが悪いけど、続きはまた来週にでも。

 

|

« ぼくにげちゃうよ | トップページ | インフルエンザ注意報・その2 »

('10~13)仕事(薬局)」カテゴリの記事

コメント

生活保護に関しては
先発品との差額を自己負担していただくようにすれば
生保の方にもメリット?が発生しますね。

最低限度の生活を保障するという憲法の理念からも逸脱しないはず。
事務処理は大変でしょうが、今はほとんどレセコンで計算だから大丈夫でしょう。
薬局の後発品の在庫は増えるでしょうが、そのほうがさらに後発品の使用が促進されるかもしれません

投稿: マサ | 2012-01-19 13:24

医療扶助の観点から考えれば確かにそうですが、制度全体としてみると先発品との差額の自己負担分は生活扶助から出すことになります。その分生活扶助費が上乗せされることになってしまったというのでは根本的な解決にならないんじゃないかと思います。

投稿: とおりすがり | 2012-01-19 19:53

 コメントありがとうございます。

 マサさんの案が基本的にはベストだと思っていますが、
薬局側にも、保険(つーか審査側?)にもハードルがあって、
なかなか簡単には進まないだろうな、と思います。
 この辺、来週にも書く予定です。(苦笑)

>とおりすがりさん

 先発との差額を徴収することになれば、
事実上、後発品の強制になるんじゃないかと思っています。
その状況であえて先発を選ぶ方は、わずかでしょう。
 ただ、医療上の問題がある人もいたりして、
その辺、一律にするとまた話がややこしくなりそうです。

投稿: kitten | 2012-01-20 10:00

私はアメリカ在住でした。いつも薬はジェネリックでお願いしていました。 アメリカの場合は、医者にいうのではなくて、医者の処方箋もって、薬剤師にもっていき、薬剤師がジェネリックにするか?と聞いてくれる。

でも、日本では、お医者様が、処方箋だすときに、ジェネリックでといわないとだめなんですよね。 それを一回試したら、 一瞬しいんとなって、えっとーとかいって、分厚い辞書みたいの調べ始めて、やっと見つけて処方箋に書いてた。、えらく時間がかかった。 ジェネリックっていうと迷惑なのかなとおもって、それ以来 切り出す勇気がないんです。

実際迷惑なのでしょうか?どんな風、そのタイミングで切り出すのがよいのでしょうか? 

投稿: 都会人 | 2012-02-24 22:13

>都会人さま

 おそらく、かなり前の話と思われます。

 今のルールでは、医師が処方箋を出す際に、
「後発品変更不可」と書きさえしなければ、
薬局で後発品を選べるルールになっています。(4年前より)
 ただし、「変更不可」という医師もいるので、
病院で「ジェネリック希望」を言うほうが望ましいです。

 それ以降は、アメリカと同じです。
薬局で、「ジェネリックにするか?」聞かれると思います。
これは、ルールとして聞かなければいけないことになってます。(2年前より)

 最近は、健康保険の方から「ジェネリック希望」カードが
配られています。それを見せられる方もいらっしゃいます。

 昔ならいざ知らず、ここ数年でかなりジェネリック推進に
動きましたので、薬局では「ジェネリックで」と言われる
ことに慣れています。気にされることはありません。
おそらく、医師も同じで慣れてきていると思います。

 5年以上前なら、おっしゃるような状態だったと思いますが。(苦笑)


 

投稿: kitten | 2012-02-24 23:12

そうですか、3年前くらいのことだったんですが、ローカルなおじいちゃん先生だったから浸透がおそかったのか、、では、今度は遠慮しないで、ジェネリック!といってみます。喘息のインへラーが高いので、たすかります。 最近は、通常の風邪でしかかかってませんが、 薬局では一度も聞かれたことはないですね。 皮膚科の処方箋でも聞かれなかったなあ。 子供のは無料なので当然聞かれはしないかとおもうのですが。
どうもありがとうございました。

投稿: 都会人 | 2012-02-29 18:05

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ジェネリック医薬品と生活保護:

« ぼくにげちゃうよ | トップページ | インフルエンザ注意報・その2 »