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ジェネリック医薬品を生活保護に勧めるには?

 ジェネリックについての短期集中連載(木曜日)2回目。
 先週の続き。(下のリンクは先週の記事)

http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-16d0.html

 どうにかして、生活保護の方にジェネリックを使って欲しい。
そのためには、どうすればよいか?
というか、なんでこんなに苦労しているか?という話。

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 現状どうなっているか、というと、
薬局から、生活保護の方にジェネリックを勧めるということは、
ほとんど行われていないのが現状である。 

 薬局側には、ジェネリックに変更するインセンティブがない。
生保の患者さんにとっても、メリットはない。この状況で進む訳はない。

 来年の4月からは、生活保護の医療券などの発行の際に、
担当者が患者さんに対してジェネリックを使うように勧める、という話が
去年の年末に出ているけれども、果たして効果のほどはどんなもんか。
 強制なんかできそうにないので、あくまで「お願い」レベルだろう。
果たしてどの程度効果があがるのか、正直なところ疑問に思う。

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 では、どうすればいいのか?となると、これがまた難しい。

 ベストの形は、(前の記事でマサさんからコメントいただいたが)
医療扶助でお金が出るのは「ジェネリック医薬品」の値段までとして、
先発品を希望するのなら、差額を徴収する、という案だろう。
 国民感情にも、沿うものだと思う。

 では、この形の問題点は、というと、
この「ジェネリック医薬品の値段」がまちまち、ということだ。
ジェネリック医薬品は、多数のメーカーから出ていて、
メーカーによって薬価がばらばらである。
 えいやっと「一番安いメーカーの値段」と決めてしまうと、
薬局はそのメーカーの品目を在庫せざるを得なくなる。
たいてい、一番安いのはジェネリックの中でも聞いたこともないような
三流メーカーだったりして、これはこれで大変なことになる。(苦笑)

 かといって、一番高いジェネリックメーカーにすると、
本来あるべき姿から離れていくような気もするし・・・。難しい。

 差額といっても、これを自費でとなるとかなりの値段になってしまうので、
事実上の後発品強制とも言えるかも知れない。

 あとは、薬局側も、それを審査する側も、新たに計算するシステムを
作る必要がある。実際に作るのはレセコンメーカーとかの仕事になるんだろうけど。
今までになかった仕組みだから、これはこれで大変だ。

 もう一つ、院外に処方箋を出さない、院内調剤の医療機関はどうなる?
(この問題は、他の案でも常について回るが)
ジェネリック医薬品は、調剤薬局だからこそ対応できる、という点はある。
病院内の薬となると、そこまで強権を発動できるかどうか、疑問だ。
(ここでいう強権は、病院の採用薬品まで当局が介入できるかってこと)

 さらに、あくまで医師側が「変更不可」としてきたらどうするのか
問答無用で差額を徴収することになるのか??
治療上必要だから、と認めてしまうのかどうか。

 と、ぱっと思いつくだけでこれだけの問題点が浮かび上がる、と。

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 さらに言うなら、この方式はある意味「新たな一歩」になりうる。
この方式が、生保だけでなく通常の保険調剤まで導入される可能性だ。
お金がないのは、健康保険の方も同じだし。

 正直、将来的にはそうなる可能性がかなりあると思っている。

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 既存のシステムの応用でいけるパターンを考えてみる。
とりあえず、「自己負担なし」だからコスト感覚が発生しない。
これを、例えば「1割負担」にしてしまえばどうか

 といっても、上限を設定しないと払える訳がない人がいるので、
例えば「上限5000円」で、上限に達したら支払う必要がない、とか。
(これは、自立支援や肝炎公費なんかで使われている方式)

 問題点は、、すぐに浮かぶ。
例えば、普通にやったら7000円かかる人で、ジェネリックに代替して5000円。
これって、どっちにしても上限だから、自己負担金変わらない、とか。

 ってことは、あれか。「いっぱい医療費使う人ほど、ジェネリック使わない」と。
やっぱり、なんか問題がありそうな傾向になるな。(汗)
それでも、ある程度の方向付けはできると思う。

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 もう一つ考えてみた。
市町村の医療費助成制度なんかは、最初から自己負担がないのが基本だけど、
これ、一旦窓口で支払ったあと、役所の方から返金、ということもできる。

 この仕組みを応用してみる。
生保の患者さん自体に窓口では負担してもらって、
あとで、役所から返金
、という形にしては?
 もちろん、全額10割負担は不可能だから、例えば1割だけにして。
どうしても厳しい人は、特例で「0割」の受給者証でも持ってもらう、とか。

 「どうせ後から返金」されるんなら、あまり意味はないんだけど、
「自分の財布」から(一旦は)お金を出す、というプロセスをはさむことで、
コストを意識してもらって、節約につなげよう、と。

 問題点は・・・どれくらい効果が上がるか疑問ってことだな。w
「どうせ(お金)かえってくるから」と気にしない人が圧倒的に多数なら、
この方法は成立しない。(苦笑)

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 生活保護っていうのは、基本的には市町村が管理している。
国や保険じゃないから、かなり細かいこともできるかも知れない。

 例えば、薬局の方から「ジェネリックを希望した生保の患者さん」に
何か特別な証書を発行する、とかはどうだろう。
で、その証書を役所に持ち込めば、何らかの特典が与えられる、とか。

 偽造の恐れはあるかも知れないけれども、
どうせレセプト請求したら、実際にジェネリックを使っているかどうかは
簡単にわかるし。
薬局の不正にしたところで、レセプトみればわかるっしょ。

 これだと、レセプトシステム自体をいじる必要はほとんどない。
薬局と、市町村の取り決めだけで何とでもなる。

 問題は、「特典」を何にするか、ってところか。
これ、お金にしたらマズい。お金ほしさに、無駄な診療を受ける人が
増えないとも限らない。
 となると、、うーん。「罰則回避」みたいな形にならざるを得ないかな。
この証書なしだと、支給される金額が減る、みたいな形で。

 ただ、他の市町村にいくと全く通用しなくなる可能性は高い。
やるなら、全国レベルで、市町村にやってもらう必要があるかも知れない。
それはそれで、大変かなぁ・・・。

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 とまぁ、いくつかの案を考えてみたが、
「これで決定!」というようなよい案はない。
つーか、そんないい案があるなら、とっくにやってるんじゃないだろうか?

 また、生活保護の患者さんに、ジェネリックを使うことによるメリット
(というか、使わないことへのデメリット)を与えるだけでは半分。
薬局側にも、何かインセンティブを与えないと、うまく回らない。

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 結局、この記事で言いたいことは、
「生活保護の患者さんに、ジェネリックを勧めるのは一筋縄ではいかない
ってことになるかも知れない。(汗)

  

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