一般名処方は薬局のため?
一般名処方について、その3.
(書き始めたときは、ここまで長くするつもりはなかったが。)
ここまで、「なぜ国は一般名処方を勧めるか」と、
「一般名処方に直面した薬局の混乱、医師へのフィードバックの仕事」
について書いてきた。
では、薬局にとって、一般名処方のメリットとは何だろう?
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一応、国からは「在庫の負担軽減」という話が出ている。
なるほど、それは確かにメリットだ。
薬局としては、一つの成分につき、先発1種、後発1種を在庫したい。
種類が増えれば増えるだけ、ややこしくなってミスの可能性が高まるし、
そもそも、それだけ在庫かかえるってことは、そんだけ金かかってるってことだ。
でも、実際問題として、一成分で複数のメーカーの後発を在庫することはありえる。
その理由を、解説してみる。
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国が後発品を使うように勧めているのは、薬局だけではない。
もちろん、病院に対してもそうだ。
病院に対しても、「採用薬品のうち、一定割合を後発品にする」ことで、
なんらかの加算があるらしい。
その結果、院内で後発品を採用するところも増えている。
入院している患者さんに対しては、病院内で薬が調剤されている。
そうすると、その中に後発品が採用されることになる。
では、退院した後はどうするか?当然、処方せんが出ることになるが、
この処方せんには、院内で採用されている後発品名が書かれることになる。
病院では、患者さんに対して「ジェネリックにするかどうか?」なんて
聞いていないだろう。(聞いたところで対応できないだろうし。)
ってことは、先発希望の患者さんに対しても、後発品を出すことになる。
先発希望の患者さんが、後発品の書かれた処方せんを持って薬局に来たとする。
で、薬局が、この病院の採用している後発品を持っていなかったとしよう。
(別メーカーのものならあるんだけど・・・)
患者さんは「先生の書いている通りに出して」と言う事が多い。
いや、ちゃんと説明できればメーカー変更に応じてくれることもあるけど、
「入院中にのんでいた薬を続けたい」と言われれば、それまでだ。
当然、入院患者以外に対しても、「その病院の採用している後発品」で
処方せんは書かれてくる。で、「先生の書いている通りに」と言われたら、
やっぱりそのメーカーのものを取りよせるしかなくなる。
(ここでもやっぱり、面分業やってるほど不利になる。)
こうして、薬局の(無駄な)後発品在庫が増えていくわけだ。(泣)
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この「病院採用の後発医薬品」を一般名で書いてくれると、これはありがたい。
とりあえず、「先生の書いている通りに」と言われないだけで、だいぶ楽だ。w
また、先発希望の患者さんに対して処方されていた後発医薬品を、
患者さんの希望どおりに先発に戻してしまうことすら可能になる。
(国の政策には逆行することになるが、患者さんの希望は尊重すべきだろ)
また、どんどん一般名処方が進めば、複数メーカーの併売品なども、
一種類だけ在庫しておけばなんとかなるようになるだろう。
最終的には、剤形までこっちに決めさせてくれるともう万々歳。
医師は成分量だけ決めてくれたら、後は薬局がどうとでもする。。
ちょっと前に、そんな記事を書いたなぁ・・・。
「先発品への代替調剤を認めて欲しい」(2011.12.23)
http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-6e50.html
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そのための、はじめの一歩。それがこの一般名処方だと信じたい。
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さて、薬局の在庫を増やす処方せんとして、勘弁してほしいなぁと思うのが、
「後発品のメーカー指定しておいて、変更不可」という処方せん。
メーカーから金でももらっているのか、門前の薬局からの強い要望があるのか。
(こういう処方せんは、門前に行かなきゃなんともならない→門前有利)
一部、外用薬なんかは確かに後発品同士の使用感の差が激しいから、
メーカー指定もやむを得ない、、と思うものもあるけどさ。
内服薬で、しかもよりマニアックなメーカーを指定されると、
もう勘弁してくれ、といいたくなる。なんか罰則規定でもつけて欲しいくらいだ。
一般名処方もいいけど、これを取り締まってくれる方がうれしいぞ。w
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私の職場の近隣にも、そういう後発品指定、変更不可な医療機関はある。
その医療機関も、4月から一般名処方に切り替えた。一部だけ。
処方せんの中の、一種類の薬だけ一般名。後は全てメーカー指定後発品。
もちろん、(一般名で書かれた一種類を除く)全ての医薬品が変更不可。
・・・。早く、こいつを取り締まってくれ。(マジ)
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まぁ、極端な例だけれども。(苦笑)
病院、診療所の側も、「何のための一般名処方なのか」ということを
ちゃんと考えてやって欲しい。
「ただ2点が欲しいから」というだけの理由で、やって欲しくない。
例えば、病院採用の後発品を全て一般名で書いてきている病院がある。
これは、あるべき姿だと思う。そうでなきゃ、薬局にメリットが少ない。
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もう一つ、薬局側のメリットとして考えられるのは、
「後発品を勧めるチャンス」が改めて与えられた、ってことかな。
医師が一般名で書いてくれることで、もう一度患者さんに話ができるし。
今年の4月から、薬情(薬の説明書)に後発品の有無や価格差を表示する
ようになったから、その辺と絡めて勧めることもできる。
もちろん、薬局は後発品を多く使うことにより体制加算を狙うという
インセンティブがあるから、後発品を勧められる環境、というのはメリットだ。
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最終的には、「医療費削減」が大きな目的としてあるんだけどね。
これはあくまで私の個人的な意見だけれども、
配合錠を勧めるってのも、医療費削減には効いてくると思うんだけどなぁ。
あれ、後発品使うよりも安いものもあるし。
まぁ、薬局の在庫に負担をかけるというデメリットはあるんだけど、
例えば、後発品調剤率の分母から、配合錠を計算が除外する、とか
してくれてもいいと思うんだけど。
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コメント
はじめまして。
薬学部1年のゆうと申します。
今回、「一般名処方が急増していること」についてのレポートを授業で書くことになり、過去3回の記事を読ませていただきました。
本当に参考になりました!
ありがとうございました!
また、お邪魔させていただきます
投稿: ゆう | 2012-06-05 21:56
コメントありがとうございます。
1年生ってことは、入学して2ヶ月ですよね。
それで、そんな現場に近い話が出るんだ・・・。
昔とは変わったなぁと思います。
今では、現場の薬剤師の話なんかも、
探せば簡単に出てくるんですよね。ここみたいに。w
うらやましい限りです。
投稿: kitten | 2012-06-05 22:47
医師の立場からお話させていただくと
化学構造式に基づいた一般名での処方に統一して頂けるのならそれは、それでありがたいことだと思います。
先発品と後発品の薬理効果は同じなのに、商標名がちがったり、年度毎に商品のパッケージが変わるのは正直コリゴリです。先発品につけられた名前は憶えやすいが、化学的根拠に裏打ちされたものでないので、薬を必要とする世代の大半の高齢者には、化学構造としては同じですが、一貫性のないカタカナのロジックが世の中にわんさと普及すると、8桁の電話番号すら覚えきれないこの情報社会に普及すると、現場では混乱を招くだけの産物になるのです。
先発品と後発品に価格の差が出るのは開発特許を得るための権利としては当然の事と考えますが、薬理効果がそもそも同じであるのならば、同じ商品に二つ名はいらないかと現場の人間は思うのです。
先発品と後発品に名称の差が生まれるのは、企業利益が絡んでいると思いますが、現場に反映される利益は害があっても皆無という方が正しいかと思います。国と企業、法律はこうした末端の組織の悩みを一方的ではなく聞き届けてほしいと思います。
投稿: 一般診療所 | 2014-11-17 10:57