PL配合顆粒にカロナール
疑義照会実例。
といっても、実はこのケースで疑義照会するのは3回目だったり。
<処方実例>
PL配合顆粒 3g
1日3回毎食後 5日分
カロナール錠200mg 2錠
屯用 発熱時 5回分
以上
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んー、ちょっと「今更」感があるかも。去年記事にしておくべきだったかな。
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実はこの手の処方。2年くらい前なら疑義照会の対象にならなかった。
っつーか、ごくありふれた処方ですらあった。
PL配合顆粒は、総合感冒薬。いわゆる風邪薬。
カロナール錠は、ありふれた鎮痛解熱薬。子どもにも使われる。
成分はアセトアミノフェンだ。
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何が問題か、というと、アセトアミノフェンが重複していること。
総合感冒薬であるPLにも、アセトアミノフェンは入っている。
1g中に150mgのアセトアミノフェンが含まれている。
アセトアミノフェンは、急性上気道炎(いわゆる風邪)の場合、
上限が1500mgになっている。
カロナールを1日3回服用することになると、オーバーする・・・。
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とはいえ、アセトアミノフェン製剤って、子どもの解熱でも使う。
(坐薬では、アンヒバ、アルピニーなど。冷蔵庫に常備している人もいるだろう)
子どもに使うくらいなんだから、かなり「安全な薬」というイメージがある。
また、風邪の場合は1500mg上限だけど、
鎮痛目的の場合は上限は4000mgまでOKになる。
(実は、これも去年くらいからの話なんだけどね)
なので、2年前までならろくに疑義照会なんざしなかった。
その程度のアセトアミノフェンが重複しても、問題にならないと
思われていたから。
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ところが、昨年、カロナールの添付文書が改訂されて、「警告」が追加された。
<警告>
本剤とアセトアミノフェンを含む他の薬剤<一般用医薬品を含む>
との併用により、アセトアミノフェンの過量投与による重篤な肝障害が
発現する恐れがあることから、これらの薬剤との併用を避ける。
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警告は、禁忌ほどではないけれども、かなり強い注意喚起だ。
この件は、確か日経DI(業界の雑誌)に載っていた気がする。
PLのメーカー(塩野義)も、カロナールのメーカー(昭和薬品化工)も、
「併用は避けてください」という見解だった。
そりゃまぁ、安全性を重視すればそりゃ避けてくれって言うだろうけど。
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正直、風邪用量のアセトアミノフェンとPL程度の重複だったら、
量的に問題になることはまずない・・・と思うんだけどなぁ。
1日3000mgとか使うのであれば、それは肝障害も気になるけど。
ただ、そもそもの風邪の解熱目的のベネフィットと、肝障害のリスクを
考えると、それなりにリスクが大きい、という判断になるのかな?
風邪の解熱なんて、のまなくても重篤な事態にはならないだろうし。
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この件で疑義照会したのは、過去2例は添付文書改訂直後。
まぁ、変更するかどうかは医師の判断に任せるつもりで、
どちらかというと、情報提供の意味合いで疑義照会している。
アセトアミノフェンの重複で警告が出ていることを、
医師が知らない可能性が高いと判断したためだ。
実際、今回も含めて処方が変更になったことはないけれども、
医師の側にも少なくとも「警告があるんだ」ってことは伝わっただろうし。
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最近、もう一度疑義照会をかけたのは、
医師が知らない可能性もあるんだけれども、
突合点検などで、保険審査が厳しくなっていることが背景にある。
今まではスルーされていたような処方であっても、
(コンピュータで)一律に減点されている、という事例を聞いていたので。
大丈夫だとは思うが、この「警告」を完全スルーして調剤していると、
こっちが保険者からにらまれる可能性もある。
医師の方からは、面倒くさいなぁ、と思われていると思うけど・・・。
こっちも仕事だから仕方ない。あくまで保険診療なんだから。
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あと、もう一つ思うのが・・・。
「こないだまで、普通に出せていた薬が、出せなくなる」ということ。
いや、リスクがあるって言われてもさ、ついこないだまで、
なんの問題もなく出されていた訳で。
その辺の感覚、ついていけないところがある。
理屈では分かるんだけどね。
今までもリスクはあったけど、認識されていなかっただけなんだって。
ただ、逆にリスクを必要以上に恐れてしまうことも、どうかなぁ、と思う。
例えは悪いけど、例えば原発だって今はものすごく危険だとか、
安全基準が甘いとか言われているけれども、
事故の前はそれよりももっとゆるい基準で、普通に運転してたんだよね・・・。
ある一時点でもって、いきなり安全が危険になったりする訳はない。
同じことをやっていれば、安全性も危険性もかわらないはずだ。
変わっているのは、制度だったり、周りの認識だったり・・・。
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ところで、冒頭の事例、これからも疑義照会すべきかなぁ?
まぁ、一回やった医師相手にはもうやらないと思うけど・・・。
どうせ、何回疑義照会したところで、処方変更になることないし。
何のために疑義照会しているんだろう?と悩むこともあったりして。
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コメント
確かに突合点検では、処方箋出した医療機関側が査定されてるみたいですから 教えたほうが良いのでしょうけど
なんか変ですよね〜
投稿: すみぱん | 2012-06-04 03:14
仕事なんで仕方ないといえばそうなんですけど、
何か、自らの保身のためだけに疑義照会しているような気がします。
かといってアセトアミノフェンのリスクを力説するのも、なんか違うと思いますし・・・。
投稿: kitten | 2012-06-04 23:13
うちの薬局では疑義かけてるの見たことないですね。
たぶん上限4000mgに変わったから短期間なら大丈夫
だろうという認識なんだと思います。
たぶんかけたほうがいいんでしょうがいまさら感が強くて・・・。
先日もPLとカロナール併用でカロナールは6T分3で出ていました。
1500の上限量超えるなと思いつつ、どうせ疑義かけても
変わらないだろうと思って、PL飲んで効かなかったら
カロナール追加で飲んでと指導しました。
勝手に処方変えたみたいで気分よくなかったです。
他の薬剤師の皆さんはやっぱり疑義かけているんですかね?
うちの薬局では結構頻繁に出るのでこれで疑義かけて
いたらたぶん回らなくなるし、風邪薬で時間かかかり
すぎとクレームがきそうなんですが。
投稿: | 2012-06-06 07:13
さすがに、毎回疑義かけるのは業務に差し支えますね。
私は同じ医療機関(先生)には、一回やったらそれ以降は
やらないようにしています。
あるいは、先生と話をつけてしまうか、ですね。
例えば門前の先生相手なら、話をつけてしまいます。
「毎回疑義照会していることにしていいですか?」とか。
どっちむいて仕事してるのやら・・・。とも思いますが、
投稿: kitten | 2012-06-07 19:51
気になっていたケースですね。
勤務先でもこの組み合わせ(PL配合顆粒3gがピーエイ配合錠6Tだったりしますが)で処方しているケースがかなりありますけど、今のところ疑義紹介受けてませんね。
ただ、今後を考えると、
カロナール錠200mg 2錠
屯用 発熱時5回分(1日2回まで)
のように処方するのも手かな?と考えていますが、どんなものなんでしょうね?
投稿: Qカメ | 2012-10-14 14:12
>Qカメさん
疑義照会しようとも思わないのかも知れません。
警告は禁忌、ってほどではないですし。
メーカーは屯用であろうが重複は避けてくれと
言うと思います・・・。
正直、保険さえ通ればほとんど問題ないような。
投稿: kitten | 2012-10-17 11:45