« 風邪薬の副作用で131人死亡!? | トップページ | 世界の最新健康・栄養ニュース »

PL配合顆粒にカロナール

 疑義照会実例。

 といっても、実はこのケースで疑義照会するのは3回目だったり。

<処方実例>

PL配合顆粒 3g 
1日3回毎食後 5日分

カロナール錠200mg 2錠
屯用 発熱時 5回分

 以上

.

 んー、ちょっと「今更」感があるかも。去年記事にしておくべきだったかな。

.

 実はこの手の処方。2年くらい前なら疑義照会の対象にならなかった。
っつーか、ごくありふれた処方ですらあった。

PL配合顆粒は、総合感冒薬。いわゆる風邪薬。
カロナール錠は、ありふれた鎮痛解熱薬。子どもにも使われる。
成分はアセトアミノフェンだ。

.

 何が問題か、というと、アセトアミノフェンが重複していること。

総合感冒薬であるPLにも、アセトアミノフェンは入っている。
1g中に150mgのアセトアミノフェンが含まれている。

アセトアミノフェンは、急性上気道炎(いわゆる風邪)の場合、
上限が1500mgになっている。
カロナールを1日3回服用することになると、オーバーする・・・。

.

 とはいえ、アセトアミノフェン製剤って、子どもの解熱でも使う。
(坐薬では、アンヒバ、アルピニーなど。冷蔵庫に常備している人もいるだろう)
子どもに使うくらいなんだから、かなり「安全な薬」というイメージがある。

 また、風邪の場合は1500mg上限だけど、
鎮痛目的の場合は上限は4000mgまでOKになる。
(実は、これも去年くらいからの話なんだけどね)

 なので、2年前までならろくに疑義照会なんざしなかった。
その程度のアセトアミノフェンが重複しても、問題にならないと
思われていたから。

.

 ところが、昨年、カロナールの添付文書が改訂されて、「警告」が追加された。

<警告>

本剤とアセトアミノフェンを含む他の薬剤<一般用医薬品を含む>
との併用により、アセトアミノフェンの過量投与による重篤な肝障害
発現する恐れがあることから、これらの薬剤との併用を避ける。

.

 警告は、禁忌ほどではないけれども、かなり強い注意喚起だ。
この件は、確か日経DI(業界の雑誌)に載っていた気がする。
PLのメーカー(塩野義)も、カロナールのメーカー(昭和薬品化工)も、
「併用は避けてください」という見解だった。

 そりゃまぁ、安全性を重視すればそりゃ避けてくれって言うだろうけど。

.

 正直、風邪用量のアセトアミノフェンとPL程度の重複だったら、
量的に問題になることはまずない・・・と思うんだけどなぁ。
1日3000mgとか使うのであれば、それは肝障害も気になるけど。
ただ、そもそもの風邪の解熱目的のベネフィットと、肝障害のリスクを
考えると、それなりにリスクが大きい、という判断になるのかな?
風邪の解熱なんて、のまなくても重篤な事態にはならないだろうし。

.

 この件で疑義照会したのは、過去2例は添付文書改訂直後。
まぁ、変更するかどうかは医師の判断に任せるつもりで、
どちらかというと、情報提供の意味合いで疑義照会している。

 アセトアミノフェンの重複で警告が出ていることを、
医師が知らない可能性が高いと判断したためだ。

 実際、今回も含めて処方が変更になったことはないけれども、
医師の側にも少なくとも「警告があるんだ」ってことは伝わっただろうし。

.

 最近、もう一度疑義照会をかけたのは、
医師が知らない可能性もあるんだけれども、
突合点検などで、保険審査が厳しくなっていることが背景にある。

 今まではスルーされていたような処方であっても、
(コンピュータで)一律に減点されている、という事例を聞いていたので。
大丈夫だとは思うが、この「警告」を完全スルーして調剤していると、
こっちが保険者からにらまれる可能性もある。

 医師の方からは、面倒くさいなぁ、と思われていると思うけど・・・。
こっちも仕事だから仕方ない。あくまで保険診療なんだから。

.

 あと、もう一つ思うのが・・・。
「こないだまで、普通に出せていた薬が、出せなくなる」ということ。
いや、リスクがあるって言われてもさ、ついこないだまで、
なんの問題もなく出されていた訳で。

 その辺の感覚、ついていけないところがある。

 理屈では分かるんだけどね。
今までもリスクはあったけど、認識されていなかっただけなんだって。
ただ、逆にリスクを必要以上に恐れてしまうことも、どうかなぁ、と思う。

 例えは悪いけど、例えば原発だって今はものすごく危険だとか、
安全基準が甘いとか言われているけれども、
事故の前はそれよりももっとゆるい基準で、普通に運転してたんだよね・・・。

 ある一時点でもって、いきなり安全が危険になったりする訳はない。
同じことをやっていれば、安全性も危険性もかわらないはずだ。
変わっているのは、制度だったり、周りの認識だったり・・・。

.

 ところで、冒頭の事例、これからも疑義照会すべきかなぁ?
まぁ、一回やった医師相手にはもうやらないと思うけど・・・。
どうせ、何回疑義照会したところで、処方変更になることないし。
何のために疑義照会しているんだろう?と悩むこともあったりして。

薬剤師ブログタイムズ ブログランキング参加中!
by 薬剤師ブログタイムズ

|

« 風邪薬の副作用で131人死亡!? | トップページ | 世界の最新健康・栄養ニュース »

疑義照会」カテゴリの記事

コメント

確かに突合点検では、処方箋出した医療機関側が査定されてるみたいですから 教えたほうが良いのでしょうけど なんか変ですよね〜

投稿: すみぱん | 2012-06-04 03:14

 仕事なんで仕方ないといえばそうなんですけど、
何か、自らの保身のためだけに疑義照会しているような気がします。
 かといってアセトアミノフェンのリスクを力説するのも、なんか違うと思いますし・・・。

投稿: kitten | 2012-06-04 23:13

うちの薬局では疑義かけてるの見たことないですね。
たぶん上限4000mgに変わったから短期間なら大丈夫
だろうという認識なんだと思います。

たぶんかけたほうがいいんでしょうがいまさら感が強くて・・・。
先日もPLとカロナール併用でカロナールは6T分3で出ていました。

1500の上限量超えるなと思いつつ、どうせ疑義かけても
変わらないだろうと思って、PL飲んで効かなかったら
カロナール追加で飲んでと指導しました。

勝手に処方変えたみたいで気分よくなかったです。
他の薬剤師の皆さんはやっぱり疑義かけているんですかね?
うちの薬局では結構頻繁に出るのでこれで疑義かけて
いたらたぶん回らなくなるし、風邪薬で時間かかかり
すぎとクレームがきそうなんですが。

投稿:   | 2012-06-06 07:13

 さすがに、毎回疑義かけるのは業務に差し支えますね。

 私は同じ医療機関(先生)には、一回やったらそれ以降は
やらないようにしています。

 あるいは、先生と話をつけてしまうか、ですね。
例えば門前の先生相手なら、話をつけてしまいます。
「毎回疑義照会していることにしていいですか?」とか。
どっちむいて仕事してるのやら・・・。とも思いますが、


投稿: kitten | 2012-06-07 19:51

気になっていたケースですね。

勤務先でもこの組み合わせ(PL配合顆粒3gがピーエイ配合錠6Tだったりしますが)で処方しているケースがかなりありますけど、今のところ疑義紹介受けてませんね。

ただ、今後を考えると、

カロナール錠200mg 2錠 
屯用 発熱時5回分(1日2回まで)

のように処方するのも手かな?と考えていますが、どんなものなんでしょうね?

投稿: Qカメ | 2012-10-14 14:12

>Qカメさん

 疑義照会しようとも思わないのかも知れません。
警告は禁忌、ってほどではないですし。

 メーカーは屯用であろうが重複は避けてくれと
言うと思います・・・。
正直、保険さえ通ればほとんど問題ないような。

投稿: kitten | 2012-10-17 11:45

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: PL配合顆粒にカロナール:

« 風邪薬の副作用で131人死亡!? | トップページ | 世界の最新健康・栄養ニュース »