重複投薬・相互作用防止加算
仕事(薬局)の話。
重複投薬・相互作用防止加算という加算がある。
これは、大雑把に言うと医師に「疑義照会」を行った場合につく点数だ。
「薬剤服用歴に基づき、重複投薬又は相互作用防止の目的で、
処方箋を交付した保険医に対して照会をおこなった場合」に、
1.処方変更が行われた場合→20点(200円)
2.処方変更が行われなかった場合→10点(100円)
となっている。
一般的な例としては・・・
A病院で、ずっと痛み止めを処方されている人が、
B歯科で痛み止めを追加された場合。
「いや、これ重複してるからいらないんじゃね?」と歯科に連絡して、
「そうだね、やめとこう」となれば20点。
「こっちの方が強いからそのまま出しておいて」となれば10点。
そういう加算である。
.
個人的には、実に取りにくい点数であると思う。
今のところはともかく、以前働いていた職場では、
この加算、取ろうと思えばガンガン取れる環境にあった。
なぜって??
それは、処方医の併用薬の確認が甘かったから。
薬局で併用薬を確認。→疑義照会して変更、削除。
こういう流れがめっちゃ多かった。(苦笑)
まぁ、処方医は薬にあまり関心がない方だったので、
「ややこしい併用薬の確認は、薬局に任せる」という認識が
あったんだと思う。
ある意味で、医薬分業の意味を正しく理解していると言えなくもない。
.
ただ、いっちゃなんだが「処方医が甘いから」という理由で
点数をガンガン取っていいのかよ?という思いがある。
ちゃんとした(失礼)医師にかかっていれば算定されることのない点数だし。
(もっといえば、待ち時間だって短くなる。)
極論すれば、医師のミスを薬局が加点していいのか?と。そういうこと。
患者さんからみたら、「なんじゃそれ?」っていうような点数だろうし。
まぁ、薬局から見ればもっとも「仕事してるぞ」っていう点数でもあるんだけど、
する必要がなければそれに越したことはない訳だし。
正直、これは書いちゃまずいかも知れないけれども・・・
実際問題、この点数は自己負担金が発生する患者さんからは取っていなかった。
(逆に言うと、自己負担金のいらん人からは取っていた、ってことだ)
.
一つの案として、「薬局が算定した分、医院から削る」なんてことも
できなくはないと思うんだけど、そうしたらそうしたで、逆に
医院との付き合いとか考えると、やっぱり取れない点数になりそうだし。
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もっとも、重複していることが分かるためには、
「薬剤服用歴の記録に基づき」重複が認められる必要があったので、
先ほどの例で言うと、A病院とB歯科の、両方の処方箋を同じ薬局で
受け付ける必要があった。患者さんの自己申告では加算は取れない。
お薬手帳の記載で取れるかどうかは・・・微妙なところ。
昔は「手帳だけでは不十分。処方元にちゃんと確認しろ」って言われたけど、
今でもそうなんだろうか?
お薬手帳の意味を考えると、手帳だけで十分だと思うけど。
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さて、この重複投薬・相互作用防止加算だが、
実は今年の4月からの診療報酬改定で、少しだけ変わっているところがある。
それは、
「残薬の確認の結果、処方の変更が行われた場合」
でも、算定できることになった、という点だ。
残薬の確認、というのは、これも明文化されたのは今年の4月からなんだけど、
「家に薬が残っていたりしませんか?」と確認すること。
時々飲み忘れがあったりする人は、結構な量が余っていることもある。
ここで重複させると「もったいない」ので、処方量を調節してもらう訳だ。
まぁ、「次回、医師に伝えてください」くらいでいい場合もあるけど。
(つーか、大病院相手ではいちいち疑義照会かけると怒られる)
で、今年の4月からは、
「いっぱい余っているから、この薬は削除で」と疑義照会した場合にも
20点取れるようになった、と。
(ただし、処方変更で薬が減った場合のみ。増えた場合は算定できない)
これも、同じ理由で取りにくいなぁ・・・と思うんだけど。
病院で言ってくれたら、算定されることのない点数な訳で。
まぁ、削除した薬の値段を考えると、ちゃんと算定しても
安くなることが多いから、まだいいけど。
それでも、「次回調節してもらいます」の方が安上がりだかんね。w
正直、このケースで重複投薬防止加算を算定したことないわ。
まぁ、今の職場の近くの医師は、併用薬も残薬も、
割としっかりみてくれる医師だから、ってのもあるけど。
(お薬手帳をちゃんとみてくれる医師だ。)
あ、念のため。「あえて残薬にしている」人から
無理やり加算取ったりしないので。
念のためいつも少し多めにもらっているインシュリンの注射、とかね。
常備薬を少しキープしたい、というニーズも、昨年の地震以来増えているし。
(地震があって病院にいけなくなってもしばらく大丈夫なように)
.
こないだ、こんなケースがあった。
いつもA病院で薬をもらっている患者さんがいた。
ところが、この患者さんはA病院に不満があったらしい。
そこで、「病院を変える」といって、B医院に行って、
薬を出してもらった。
ところが、出たのがほぼ同じ薬。
しかも、A病院の方が処方日数が多かった。
B医院の薬をそのまま出しても、完全に重複してしまうだけだ。
そこで、B医院に疑義照会したところ、
「処方全削除」とあいなった。
(たぶん、患者さんとの意思疎通にも問題あったんだろう)
.
こうなってしまうと、「重複投薬防止加算」は算定できない・・・と思う。
なんせ、処方箋自体が消えてしまった訳だから。w
医療費削減には貢献したと思うけど。
医院側の「処方せん料」すら削除された訳だし。
結構手間ヒマかかっただけに、これは評価して欲しいな、とも思ったりして。
.
もうちょっと、積極的に点数取っていってもいいかな、と思っているけど、
「疑義照会」でお金がかかる、なんてのが分かると、
絶対に「余計なことはすんな」みたいな患者さんが出てくるだろうから、
それはそれで面倒くさいなぁ・・・とも思うなぁ。
せっかく取れる点数なんだから、しっかり取っていった方がいいんだろうけど。
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コメント
ホントに、ここにも安易な点数な決め方による弊害というか・・・時間と労力を費やして点数取れないなんて 変ですよね〜
投稿: すみぱん | 2012-07-10 03:46
この辺の仕事は、点数に関わらずやるのが当たり前なんで、
それこそ、薬剤服用歴管理指導料あたりに組み込んでもらっても
いいと思うんですけどね。
投稿: kitten | 2012-07-11 23:05