産科医療保障制度をどうにかすべき
産科医療保障制度という制度がある。
できたのは、3年くらい前だったように思う。
確か、下の息子(いま3歳)は、この制度に加入した記憶があるので。
http://www.sanka-hp.jcqhc.or.jp/
どういう制度かというと、
「制度に加入している分娩機関で生まれた赤ちゃんが、
分娩に関連して重度脳性まひとなり、所定の用件を満たした場合に、
赤ちゃんとご家族の経済的負担を速やかに補償するとともに、
脳性まひ発症の原因分析を行い、再発防止に努める」
という制度。
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わかりにくいので、私の認識で解説。
分娩の際の重度脳性マヒというのは、一定の確率(すごく低いけど)でおこる。
でも、おこってしまった場合には家族にえらく経済的負担がかかるんだけど、
その補償というのは、今までロクになかった。
分娩機関(たいていは病院)に原因があるとして訴訟するにしても時間がかるし、
そもそも、訴訟してしまうとかえって原因究明は難しくなることがある。
病院側も、訴訟に負けたら莫大なお金を払わなくちゃいけない、となったら、
情報開示は積極的にはしてくれないだろうし、
そもそも病院側に過失がなくても起こりうる話だったりすると、救いようがない。
そこで、この制度は、「保険」にしてしまった訳だ。
とりあえず、分娩一人につき、3万円ずつ集める。
で、不幸にも脳性マヒの子供が出てきたら、とりあえず原因は無視して、
その家族に3000万円補償する。(つまり、訴訟ではなくしてしまう)
で、原因究明は、金のからまない形でしましょうよ?ということだ。
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3万円って誰が負担するの?というと、これはこの制度が始まったと同時に、
「出産育児一時金」が3万円値上げされている。
正確には、この制度を利用したら3万円上乗せしてくれる、かな。
つまり、妊婦さんの負担は、ほぼゼロだ。
もっとも、出産育児一時金は健康保険の方からお金が出ている訳で、
その大元は保険料だったり、税金だったりする訳だけどね。
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実質、負担なしで補償が受けられるんなら、問題ないよね、と。
実際、この制度が始まった時は私も支持していた。
不毛な犯人探しになりがちな医療訴訟よりも、
こういった制度がある方がよほど建設的じゃないか、と。
ただ、当初から「補償の要件が厳しすぎるんじゃね?」という声はあったと思うが。
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で、実際に制度が始まってどうなっているか。
yosyan先生が、財務状況を調べ上げて長々と記事にしてくれた。
新小児科医のつぶやき「医療機能評価機構の定期ウォッチング その3」
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20120808
.
まぁ、リンク先を読んでもらうほうがはるかに正確なんだけど、
この事業の大きな問題が書いてある。
一番の問題は、
「途方もない額の黒字」
ってことだ。
おおまかに書くと、年間300億円以上の保険金を集めながら、
実際に補償で給付された額は、せいぜい数十億円にすぎない。
事務経費なんかを差し引いていっても、剰余金が200億円/年は発生する。
ようは、事業主体がぼろ儲けしているってことだ。
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普通に考えて今後の対応策は二つ。
1.保険料を下げる。
2.補償額を上げる、または対象を広げる。
補償対象を今のままにするんだったら、掛け金は3分の1でいいんじゃね?
ふつーに考えて。
まぁ、いずれこの制度は見直すらしいけど、見直すのは平成26年からになりそう。
しばらくはこのよくわからん大黒字状態が続くんだろう。
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ただし、この制度、民間の損保会社なんかも微妙に絡んできているので、
実際に剰余金がどういう扱いになるのか、よくわからないところもあるが、
最終的には、「医療機能評価機構」に入ってくるらしい。
一応「公益法人」なんだけど、年間200億円の黒字出して、その金をどうするの?
個人的には、「3分の1で十分なら、2万円返せ!」と言いたいところだけど。w
まぁ、実際に負担しているのは健康保険だろうから、
実績に応じて、健康保険の方にお金を戻すのがスジじゃないかな。
健康保険の方は常にお金が足りなくて困っているだろうし、
余裕があるのであれば、それこそ保険料に反映してくれたらありがたい。
少なくとも、制度始まってから、見直されるまでの5年間x200億で1000億。
それだけの金が「余る」ことは、ほぼ確実なんで。
・・・こんな「ウマい」商売、ありえないよなぁ・・・。
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コメント
ご無沙汰しています。
産科医療保障制度ってそんなに大黒字なんですね。知りませんでした。それなら、ひょっとしたら医療過誤かもしれないうちの子にも可能性を広げてくれたらいいのに・・・。
この制度ができたとき、画期的だとすごく喜んで制度についていろいろと調べてみたのですが、うちの子はまず制度ができる2年前に生まれた時点でアウト。
在胎33週以降生まれという条件でアウト。(30週生まれなので)
と非該当(涙)
第2子は何としてでも33週までもたせないと!と思いました。(33週のうちに産まれましたが)
お金がほしいというより、なぜうちの子が今の状態になったのか。産科で、NICUで何があったのかを知りたい気持ちのほうが強いのですが、それを知るためには高額な出費を覚悟で訴訟を起こすしかない。
周りにもそういうお子さんがたくさん(すでに天国の子も含めて)いるので、黒字ならその資金を生かす道はいろいろあるのに・・・と歯がゆいです。
投稿: uzumaki | 2012-08-10 20:16
一歩ずつ、よりよい制度を目指していくように、
みんなで訴えていくしかないでしょうね。
産科医療保障制度自体は、「はじめの第一歩」です。
目指す方向性自体は、悪くないと思っています。
原因究明と、補償は分けるべきです。
一部、民間の保険会社がからんでいるので、
話がややこしくなっているところがあります。
動きが鈍いのも、そのせいかも知れません。
(国と違って、赤字が許されないんでしょう)
今後は救済範囲を広げる方向に進むと思いますが、
最初からちゃんとしておいてくれれば、ねぇ。
投稿: kitten | 2012-08-11 22:40