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「大気を変える錬金術」

 珍しく本の話。

「大気を変える錬金術 ハーバー、ボッシュと化学の世紀」

作者はトーマス・ヘイガーなる人らしいけど、よく知らない。w

一応、amazonにリンクはっておく。

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4622075369?ie=UTF8&tag=jnakanhomepag-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4622075369

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 この本、買ったのはつい最近だけれども、
かなり長いこと「いつか機会があれば読みたい」と思っていた。

中西準子先生が、紹介していたからだ。

http://homepage3.nifty.com/junko-nakanishi/zak526_530.html#zakkan527

 2010年7月の「雑感」

 中西先生の「雑感」は、ほぼリアルタイムに読んでいたはず。
2年前に「読みたい」と思ったまま放置していたことになるな。w

 なんですぐに買わなかったか、というと・・・
気軽に買える値段ではなかったからだ。
さすがに、3570円はキツい。

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 図書館に入ってないかどうかとか、粘ってみたけどどうにもならず。
いつか、読みたいなぁ、と思いながら時間だけが過ぎていった。

 じゃ、なんで今更買ったのか、というと、
直接的には、運動会の場所取りの待ち時間に読む本が欲しかったから。
(夜明け~9時くらいまで)

 ネットで調べてみると、中古品でも出てきていたので。
(それでも2000円以上はしたけどさ。)

 もっとも、すぐに読み終わってしまったので、結局運動会では
別の本を読んでいたが。w

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 読んだ感想。面白かった。
化学がおそろしい勢いで進んでいた時代のすごさを感じた。
当時の科学者って魔法使いのようだ。

 私は、世界で発見された化学反応式で最も重要な反応は、

N2  +  3H2   → 2NH3

窒素と水素からアンモニアを合成する、ハーバーボッシュ法だと確信する。

この反応式自体は、中学生でも分かる代物だ。
中学で習うかどうかは、微妙なところだけれども。

高校化学では、確実に出てくるだろう。
私は、ハーバー、ボッシュの名前も覚えている。
ハーバーがこの合成法を発見し、ボッシュが、工業的に生産できるように改良した。

・・・ただ、いかに高校の化学で出てくるとはいえ、こんなもん覚えている人間は
ごく少数派じゃないだろうか。w
(私が覚えているのは、単に高校時代は化学マニアだったから)
 さらに言うなら、ハーバーとボッシュの開発したアンモニアの合成が、
一体どれほどの意味があるのかを知っている人は、ほとんどいないだろう。
私も、高校時代は名前しか知らんかった。

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 世界史でいうと、産業革命に匹敵するできごとだと思う。
この本の冒頭の一文を紹介しよう。

これは空気をパンに変える方法を発明した二人の男の物語である。
彼らは小都市と並ぶ規模の工場を建て、巨額の財を成し、
何百万もの人の死に手を貸し何十億もの人間の命を救った

(強調は引用者による。)

 空気をパンに変える。これが表題の「大気を変える錬金術」
簡単に説明すると・・・パンとは、小麦のこと。
小麦に限らず、農業、植物を育てるには、土壌に窒素(N)が必要だ。
ここでいう窒素は、空気中にある窒素ではなく、「固定窒素」
アンモニウム塩や硝酸塩など、他の物質と結合している窒素のこと。
ものすごく簡単に言うと、「土の養分」

 土壌中の窒素は、作物を育てるとどんどんなくなっていく。
これを補給しないと、作物はできなくなってしまう。
土壌中の窒素を補給するのが「肥料」。

 この肥料を空気から作り出してしまったのが、ハーバーとボッシュだ。
つまり、空気中の窒素分子を、植物が利用しやすい固定窒素に変える。
化学反応式で書くとものすごい単純だけれども、その意味は
とてつもなく大きい。

 ハーバーとボッシュの前の時代は、この肥料(の原料)をめぐって
戦争がおこることすらあったんだから。
20世紀の人口爆発を支えたのは、間違いなく彼らの偉業あってこそだ。
そうでなければ、確実に飢餓がおとずれていたはずだ。
また、ここまで食卓が豊かになることもなかったと思う。
その意味で「何十億もの人間の命を救った。」と書かれてある。

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 じゃ、「何百万人もの人の死に手を貸し」ってのは?
これは、肥料の原料(アンモニア)は、簡単に火薬の原料となるからだ。
ドイツ(ハーバーもボッシュも、ドイツに生まれたユダヤ人)が
二度の世界大戦を戦ったのは、この技術があったからこそ、とこの本に書いてある。

 それまでのドイツは、南米から硝石を輸入して弾薬を製造していた。
ところが、戦争になると制海権はイギリスが押さえてしまう。
(ドイツも必死に艦隊を作っていたけどね。)
そうなると、海外から硝石が入ってこない=弾薬が尽きる。

 ところが、ハーバー、ボッシュ法のおかげで空気から弾薬が作れるようになる。
これがドイツにとって非常に大きかった。
つーか、これがなければ第一次大戦はもっと早く終わっていただろう、と。

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 第一次大戦後、ボッシュはガソリンを合成するという夢を追う。
ドイツは、領内に油田はないが、炭鉱はあった。
ボッシュは石炭からガソリンを作るという離れ技もやってのけた。

 これは、第二次世界大戦で大きな意味をもつ。
ドイツは油田をもっていない。例によって制海権はイギリスに押さえられる。
いくら精鋭の空軍部隊がいても、ガソリンがなければ出撃できない。
ドイツはボッシュの技術で石炭からガソリンを合成して、
第二次大戦を戦い続けることができた。

 もっとも、ハーバーもボッシュも、ユダヤ人であったために、
ヒトラーによって悲惨な道を進むことになったんだけど・・・。

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 この辺の歴史の話も面白い。
科学的にそんなに難しい話は出てこないし、読みやすいと思う。

いやー、化学ってすごいね。今はそうでもないかも知れないけど。
不可能だと考えられていたことが、どんどん可能になっていく。
当時は、ばら色の未来が見えたんじゃないかなぁ?

 今となってはどうだろうか?
今でも科学はどんどん進んでいるけれども、
この本に書かれている、20世紀初頭ほどのスピードはないように思う。
未解決の問題が、どんどん難しくなっていくこともあるし・・・。
(特にエネルギー問題)

 産業革命が、結果として地球温暖化をもたらしているが、
実はハーバーボッシュ法も、大きな問題を抱えている。
その構図は、地球温暖化とほとんど変わらない・・・と思う。

 今回は、あくまで本の感想だけど。
地球環境中の「窒素」の話を、もう少し、(来週にでも)書いてみようと思う。

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コメント

本の感想ではなくて,ズレた内容ですが 今は運動会の場所とりは大変ですね~頑張って(。・_・。)ノ

投稿: すみぱん | 2012-10-18 12:17

 寝袋で寝てる人もいますけど、
最近はみんなスマホやら携帯ゲームが主流です。
ノートPC持ち込んでる人もいましたけど。
むしろ、本は少数派かもしれません。

投稿: kitten | 2012-10-18 17:47

この本、私もずっと読みたいと思っておりました。確かに少し高いですね。もし、差支えなかったら、お売りくださるとありがたいです。

投稿: fh | 2013-12-11 20:25

>fhさん

 んー、残念ながら差し支えあります。
私は、一回読んだ本を何度も復習しますので。(苦笑)

 ぱっと調べてみましたが、古本でも
なかなか出回ってないようですね。
図書館にあればいいんですが・・・。

投稿: kitten | 2013-12-13 00:28

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