低分子コラーゲン?
以前に、コラーゲンの話をしたことがある。
美容にいいと言われるコラーゲンだけど、実際のところどうなの?と。
「コラーゲンの話」(2009.9.12)
http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/post-a0df.html
.
上記は、基本的には、食品としてのコラーゲンの話だ。
保湿成分として化粧品なんかに入っているもの(直接肌にぬるもの)
は、それは話が別・・・なんだけど、
ちょっと混乱しやすいかも知れない。
あとで、ちょっと整理する。
以前に書いたことをまとめると、コラーゲンを食品として取った場合、
人体になんらかの有効性があるかどうか、は、よく分かっていない。
少なくとも、「有効性がある」という信頼できるレベルの研究は存在しない。
どちらかというと、「効果がない」んじゃないのかなぁ?と思うが、
「ない」ことは断言できないので。
私の感触では、
「ひょっとしたら効果あるかも知れないけど、望み薄かな」というくらい。
.
理論的に問題になるのは、1つには分解される、という問題。
コラーゲンはたんぱく質なので、胃腸で消化されちゃってアミノ酸に分解されてしまう、
ということだ。コラーゲンのまま、体内(消化管除く)に吸収されることはない。
「たんぱく質は分解される」これは、中学校の教科書に書いてあるレベルの話だ。
コラーゲンはたんぱく質である。ゆえに、コラーゲンも分解される。
ただ、これだけで終わり、という訳じゃない。生体内成分でもある訳だから、
ある程度大きな分子(ペプチド)でも吸収されるかも知れないし、
分解されたといっても、コラーゲンの原料が大量に含まれている訳だから、
体内でもう一度コラーゲンに生まれ変わるかもしれない。(激しく希望的観測だが。)
.
もう1つ、こっちの方が大きい問題だけれども、
仮に吸収、あるいは再合成されて体内にコラーゲンが増えたとして、
それがお肌、それも顔にいってくれるとは限らない。
コラーゲンは体内でもあちこちに存在するたんぱく質である。
だいたい、「コラーゲンの多そうな食品」というと、
みんな、軟骨とか、脂っぽいところを想像するんじゃないかと思う。
それは正しいんだけど、そりゃ、人間にしても同じことだ。
コラーゲンの多いところには、脂(結合組織)や、骨もあるわけで。
うまいこと皮(皮ふ)にいってくれるかどうか・・・。
ま、こっちもかなり望み薄。
.
プラセボ効果は大いに期待できるから、全く効果がないとは言えないかな?
というのが、前回書いた内容だった。
で、ここで登場するのが「低分子コラーゲン」なるもの。
これが、「吸収されやすい」という触れ込みであちこちで宣伝されている。
面倒なのでリンクははらない。適当にググッてみて欲しい。
.
コラーゲンは分子量が大きいから、なかなか吸収されない。
そこで、吸収しやすいように、小さい分子量のものにしました、って話。
うん、理にかなっている。
でも、それって皮ふに直接ぬる場合の話・・・だよね。
ところが、低分子コラーゲンは、健康食品としても存在しているから、ややこしい。
食品としてのコラーゲンは、「吸収されにくい」ことは問題になっていない。
「分解される」ことが問題になっている。
低分子になんかしたら、余計に分解されやすくならんか?w
.
コラーゲンを口から食品として取るか、皮ふにぬることで取るか。
低分子コラーゲンは、皮ふからぬる場合には吸収されやすくなるだろうけど、
食品としてみた場合には「吸収されやすい」ことに、それほどのメリットはない。
もともと、分解されることが問題なんだから。
この辺を、巧みに混同させて、(あるいは、業者自ら混乱してるのかも)
低分子コラーゲンを健康食品として成立させようとする動きがある。
理論的に、いまいちつながってないように見えるんだけど・・・。
まぁ、百歩譲ってコラーゲンが体内に取り込まれたとしても、
それがうまく目的の場所で効果を発揮してくれるかどうかは、わからないし。
.
参考サイトとして、「健康食品の安全性・有効性情報」をあげておこう。
「コラーゲンって本当に効果があるの?」
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail2204.html
.
そうそう、低分子コラーゲンに関しては、学会発表(?)があった。
大阪大学美容医療学寄附講座と、常盤薬品との共同研究だ。
これをもって、「根拠がある」とする人もいるかも知れないが・・・。
http://www.tokiwayakuhin.co.jp/news/2011/09/post20110908.htm
面白いデータだとは思う。コラーゲンに効果のある可能性はゼロではないが、
いかんせん、このデータ、対照実験が行われていない。
「使用前」と「使用後」を比べているだけだ。
どうせ臨床データとるんなら、ちゃんと対照も取ってくれれば
もっと信憑性が上がるのに、なんで対照とらなかったんだろうね?
「対照実験」という言葉も、中学校で出てくるはずだけど、
この大阪大学美容医療学寄附講座は、そんなことも知らないのかな?
.
「寄附講座」という言葉の意味を、解説しておこう。wikipediaから。
寄附講座は外部から寄附された資金を元に、開設講座を組織化して研究活動を行う。
営利目的の研究が主軸ではないが、寄附者の意図を汲んだ研究内容が多い。
.
大阪大学美容医療学寄附講座は、常盤薬品がお金を出している。
ようは、常盤薬品が金を出してやらせた研究ってことでいいのかな?
あまりに、寄附者に不利益な内容は発表されないだろうね。
by 薬剤師ブログタイムズ
| 固定リンク
「('10~)健康情報」カテゴリの記事
- 「ブロリコ」と戦ってみた(2017.10.19)
- 減塩のカップ麺(2017.09.21)
- 食塩の多い食品は?(2017.07.06)
- 活性酸素に関して(2016.03.18)
- 加工肉のがんリスク(2015.11.12)
コメント
以前から、ずっと疑問だったんですが、テレビなどで スッポン鍋とか鳥鍋とか食べた女性が ,翌朝にお肌がプルプルなどと言ってるのを見かけますが 個人的にはさウソだろ(-_-;)って思いますが・・・・どうなんでしょうか!?
投稿: すみぱん | 2013-03-19 03:29
どうなんでしょうねぇ?
プラセボ効果も、十分にあるんでしょうけど。
ただ、テレビだと特にそういう台詞多いですよね。
「そういうことにしとかなきゃいけない」みたいな
空気があるんじゃないでしょうか。血液型みたいに。
血液型も、「あれって性格とは何の関係もないんですよね」
みたいな発言は、テレビでは不可ですよね。(苦笑)
同じように、コラーゲンを否定するような発言も、
(視聴者が求めていないので)不可、というか
カットされるんじゃないかと思います。
投稿: kitten | 2013-03-21 21:37
薬学系の方はそう言いますよね。
コラーゲンを治療に使う医者の経験からは効果ありと報告が多数ありますが。
投稿: | 2014-05-01 00:37