疑義照会したかった・・・
ものすごく久しぶりの「疑義照会」カテゴリの記事だけど、
実は、疑義照会できなかった例である。
とりあえず、患者さんの状況。
患者さんは1歳半の男の子(体重12kg)で、症状は軽い蕁麻疹のようなもの。
「軽い」というのは、全身じんましん、という訳ではなくて、
腕の一部にだけ、発疹がある、という状態。
ただ、かゆみはあるらしく、ぐずってなかなか夜に寝てくれないらしい。
で、処方(?)実例。
ジキリオンシロップ(2ml/本) 2本
分2 朝夕食後 7日分
テルギンGドライシロップ 1g
分2 朝夕食後 7日分
アタラックスPドライシロップ2.5% 1g
分1 ねる前 7日分
リドメックスコーワ軟膏 10g
1日数回 患部に塗布
.
以上。
塗り薬は、まぁ問題ないだろう。
問題は、内服薬の3つ。
確かに、蕁麻疹ということであれば、この3剤のチョイスはありっちゃありなんだが・・・。
1歳児にしては、量が多すぎやしないか?
.
添付文書で確認してみた。
ジキリオンシロップ
標準投与量は、6ヶ月~3歳の子で、1日4mlを分2で。(適宜増減あり)
テルギンG
幼小児の1日用量 1歳以上3歳未満 1日0.4gを分2。(適宜増減あり)
アタラックスPドライシロップは、小児用量の設定は書かれていないが、
大人量で「通常成人1日50~75mg(ヒドロキシジン塩酸塩として)を2~3回」
と書かれている。
.
とりあえず、ジキリオンは問題ない。
気持ち多めに見えるけれども、製剤がこれより小さいのがないからしょうがない。
テルギンGは・・・標準的な量の2.5倍。
アタラックスPは、1日量としては、大人の半分から3分の1だけど、
1回あたりの量としては、25mg/回だから、これは大人量だ。
.
副作用としては、どれもこれも、「眠気」がある。
これはもう、先生、寝かせる気マンマンってことか?(汗)
だいたい、ジキリオンにテルギンGって組み合わせも「?」
広い意味では、どちらも抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬と呼ばれる)だから、
併用する処方は・・・あんまり見ないな。
(絶対にありえない、というほどではないけど。)
テルギンGの量は・・・これは多いよ、明らかに。
症状に応じて適宜増減はあるけど・・・。
さらに、アタラックスPまで追加。
添付文書には小児用量が記載されていないから難しいけど、
やっぱりちょっと多い気がするなぁ。
アタラックスPは多めに出ることもよくある薬だとは思うけど。
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まぁ、医師が「どうしてもこの量で」というのなら、
患者さんに「眠気が強くでるかも」と注意して渡すかな。
それだけ、症状がきつい、と医師が判断しているのかも知れない。
ところが、この例は疑義照会できなかった。
.
なぜなら、処方箋で来た訳ではなかったからだ。
実は、この病院は院内処方だ。
患者さんが、処方箋を持ち込んだ訳ではなくて、
「ちょっと、この量は多いのでは?」と疑問に思ったお母さんが、
服用前に、ウチの薬局に相談に来られた。(現物と明細をもって)
「多い?」と思ったのは、8歳の上の子と同じ量が出ていたから、とのこと。(苦笑)
・・・これは、正直、困った。
.
「よそでもらってくる薬やけど、ちょっと相談に乗って」ってのは、時々ある話。
「この薬のんで、大丈夫かなぁ?」なんてのも、あるんだけれども、
たいていは、「医師の指示どおりで問題ないと思います」で終わるんだけどなぁ。
ホントに多かったら、どうしたらいいんだよ。(苦笑)
テルギンGは、0.5g/包の分包品を使っていた。
(だから、調節しようにもできなかったんだとは思う。)
疑義照会して医師の意図を確認できれば、
医師に全責任をかぶせて調剤する・・・かな。
(もっとも、責任をかぶせきれない可能性もある)
ただ、外野の薬剤師として「これって多くない?」と聞かれると、
「多いです。」としか答えられない。(苦笑)
だって、多いのは事実だし、その気になればネットで調べても分かるはずだ。
こんなとこでウソついてもしょうがない。
でも、薬剤師としては、医師の治療の邪魔をしてはいけない、という思いもある。
これはもう、薬局薬剤師の習性みたいなもんだろうか。
「これは明らかに量が多いから、飲まないほうがいいよ」なんてことは、
なかなか言えるもんじゃない。
処方箋で持ってこられたなら、間違いなく疑義照会している。
また、身内や自分の子相手なら、「それ全部のむと量多いよ」と軽く言える。
でも、自分とこの店の患者さん(?)相手となると、
ある程度責任がかかってくることもあって、なかなか軽はずみなことは言えない。
量が多いから、減らしてみる、あるいは服用控える、なんてアドバイスして、
なかなか蕁麻疹が治らなかったら、それはそれで問題だし、
逆に、「大丈夫ですからそのまま服用してください」と言って、何かひどい副作用が
おこる・・・ってのもまずい。
.
結局、どうしたかと言うと、
「確かに量は多いが、絶対にありえない、というほどではない。」
「副作用が出るとすれば、まず眠気が出るはず。
眠れなくて困っているので、あえて多めに出したのかも知れない。」
「どうしても心配であれば、先生に疑問をぶつけてみてください。」
というような話をした。
正直、何が正解だったかは分からないなぁ。
「その先生は、やめておいた方がいいかも」と言えればどれだけ楽か。w
(ドラッグストアの薬剤師なら、それくらい言えるかも知れないなぁ。)
.
後日、話を聞く機会があったので聞いてみたところ・・・
結局、別の病院にかかってみたそうだ。
(なんだ、真意はちゃんと伝わっていたんだ。w)
その結果、前医が出した内服薬は(服用前に)全て中止になった、とのこと。
うん、そのほうが無難だとは思う。w
もっとも、「後医は名医」という言葉もあるからなぁ。
(お母さんが不安に思っていることが分かっていれば、あえて薬出さない判断はありえる)
そのやりとりをお母さんから聞かされて、そのまま薬続けるように指導するほど、
症状はひどくなかった、ってことだろう。
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院内処方の怖さがわかる話だと思う。
院外に処方箋出してくれてれば、薬剤師からチェックが入るから、
そんなにひどいことにはならないだろうし、
テルギンGだって、もっと微調節できる。w
でも、このケースはこれでよかったのかも知れないけれども、
薬剤師はどこまで、踏み込むべきなんだろうか。
もっともっと大胆に、医師に意見するくらいの方がいいのかな?
それができるだけの実力を身につけること、という前提条件はあるけれども。(苦笑)
by 薬剤師ブログタイムズ
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