第2回電王戦
将棋の話。
コンピュータ将棋vsプロ棋士の戦いが、続いている。
「第2回電王戦」だ。
http://ex.nicovideo.jp/denousen2013/?shogi
最近将棋に力を入れているニコニコ動画で、生放送で見られる。
ちなみに、第1回電王戦は、去年の話。
当時最強のソフト、「ボンクラーズ」と今は亡き米長将棋連盟会長が戦った。
結果は、ボンクラーズの勝利に終わった。
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コンピュータ将棋対プロ棋士の戦いは、
実質的には、渡辺竜王vs「ボナンザ」で幕を開ける。
これも、大々的なイベントとして行われた。
渡辺竜王は、今でも当時でもトップ棋士の一人。
まず、コンピューターは勝てないだろうと思われていたし、事実そうだった。
予想以上に強かったものの、まだまだトッププロには届かない、と。
その後、強くなったコンピュータ将棋が、プロに再挑戦する。
この時点で、米長会長はトッププロを出さなくなる。
前回、渡辺竜王を出したのは、「絶対に勝てる」自信があったからだろう。
その後のソフト、およびハードの進化で、「ひょっとしたら負けるかも」と
状況が変わっていた。
最初にトッププロが戦うと、そこで終わってしまう。
それは、将棋プロとしても困るし、何より興業的に問題がある。
という訳で、トッププロはボスとして隠し、まずは弱い手下に戦わせる。w
まず、女流棋士。清水女流王将(当時)と、「あから2010」の戦い。
まぁ、女流棋士に負けるようじゃ、男性棋士と戦うのは無理、ってことか。
これは前評判から女流棋士に分が悪かったけど、やっぱり負けてしまった。
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じゃぁ、現役のプロ棋士?いやいや、ここで「引退棋士」の出番となる。
現役を引退した棋士。もちろん、現役棋士よりも力は劣る・・・のかな?
ここで、米長会長自らが、「ボンクラーズ」と戦った。(第1回電王戦)
さすが会長、誰が戦えば、最も注目を集めるか、興業として成功するか、
よくご存知だ。w
米長会長もよく戦ったが、コンピュータに力及ばず破れ、
ようやく、「プロ棋士5人 対 コンピュータ将棋5ソフト」の団体戦が
企画された。これが、第2回「電王戦」
.
第1戦は、若手の阿部四段。コンピュータを研究しつくしていて、完勝した。
「やはり、プロ棋士の方が一枚も二枚も上手」と感じさせた。
ところが、第2戦は、佐藤慎一四段が、「Ponanza」に負けてしまう。
「プロ棋士がコンピュータに初敗北」とニュースにまでなった。
プロ側に勝機がない訳ではなかったが、終盤で競り負けている感じだった。
時間に追われても間違えないコンピューターの強さが出た。
実は、ここまでは、ある意味「想定内」だった。
周りの評価では、佐藤四段はプロ棋士の中でも中位から下位。
若手有望株の阿部四段よりも、実力的に落ちると考えられていた。
まぁ、ここでの1勝1敗は、想定内。むしろ、興業的にはその方が面白い。
計算外だったのは、第3局、船江五段が「ツツカナ」に負けてしまったことだ。
船江五段は、実力的には中位~上位。いずれ、上位に上がってくるだろう、と思われている。
それも、一時は「これは人間の圧勝だろう」という局面から、
まさかの逆転負けをくらってしまった。「人間は間違える」
当たり前の話だけれど。(もっとも、コンピュータだって間違えるんだけどね。w)
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プロ棋士側は追い込まれた。副将の塚田九段は、段位こそ「九段」だけど、
ベテラン、、というか、力の落ちたロートル、といった方がわかりやすいかも。
2勝1敗で回す予定だったのに、1勝2敗で回ってきてしまった。
プロ側は、阿部、船江、(大将の)三浦で3勝を計算していたし、
実際、船江五段は十分に勝てる力があったはずだった・・・。
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迎えた第4戦。塚田九段は「Puella α」に徐々に追い込まれていく。
塚田九段は、意を決して、「入玉作戦」に出る。
王様を敵陣深くに突入させて、取られないようにしてしまう。
人間相手にやると、これは負け確定。
だけど、コンピュータ、特に「Puella α」はこの作戦に弱い、という情報があった。
塚田九段は、事前に開発者から「Puella α」を借りて練習していた。
たぶん、その時には入玉作戦でうまくいくことが多かったんだろう。
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ところが、開発者は、塚田九段に貸したソフトには「入玉対策」をしていなかったが、
本番のソフトには、ちゃんと対応策を用意してあったようだ。(策士だ。w)
入玉された場合、自分も入玉してしまえば、あとは「点数勝負」になる。
そこで、コンピュータも入玉を目指す。
この時点で、人間側の敗北は決定的・・・かと思われた。
誰もが、「もう無理だよ。負けだ。投了しなよ」と思う中、
塚田九段は、ひたすら絶望の中を指し進める。
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進めてみると、コンピュータ側の入玉対策が完璧ではないことが発見された。
・・・というか、塚田九段が、それは発見した、という方が正しいか。w
ややこしい話になるので、割愛するけれども。
結果として、「どうやっても負けるだろう」という必敗局面から、
根性と執念で、「引き分け」に持ち込んだ。
対局後の会見で、塚田九段は涙した。
いや、プロ棋士としては「情けない」の一言だ。
正攻法では勝てなかった訳だから。
また、自分ひとりの戦いだったら、投了していたはずだ。
でも、「電王戦」はまがりなりにもチーム戦。
自分が「投了」すれば、1勝3敗となり、大将戦を待たずに決着がついてしまう。
塚田九段は、プロとしてのプライドをかなぐり捨てて、
「引き分け」という結果を勝ち取った。
正直、プロの将棋指しとしては、恥ずかしい棋譜が残っている。
コンピュータに、フルボッコにされた、惨敗譜。
それも、とっくに投了していていいのに、見苦しいまでのクソ粘りで、
相手の弱点を発見して、死に物狂いでの引き分け狙い。
ある意味、第2局、第3局の「負け」よりも恥ずかしい「引き分け」だ。
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それでも、意地で引き分けに持ち込んだ。
プロ棋士から見て、これで1勝2敗1分。最終戦、三浦八段が勝てば、引き分けだ。
つーか、とてつもなく重いバトンを渡されたな、三浦八段。w
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全局、ニコニコ生放送で中継されている。第4局は、私も少しだけ見ていた。
必死に駒の数を数える塚田九段。(入玉勝負だと、駒の数で勝負が決まる。)
長時間の正座に悶絶しながら耐える奨励会員(コンピュータ側の駒を動かすアルバイトw)
解説の木村八段の軽妙なトーク。
なんというか、真剣勝負なのに、(真剣勝負だから?)笑ってしまった。w
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最終戦は、こんどの土曜日に行われる。
人間側は、トップ棋士の一人、三浦八段。コンピュータ側はGPS将棋。
三浦八段は、名人挑戦の経験もあり、羽生七冠からタイトルを奪ったこともある。
トップ中のトップ・・・ではないけど、プロ棋士の上位10人には入るんじゃないかな?
一方、GPS将棋は東大にある800台近くのPCを接続して、1秒間に2億8千万手を読む
といわれる、「最強」将棋ソフト。どちらも、大将にふさわしい。
もっとも、三浦八段はコンピュータ以外にも、プレッシャーとも戦う必要がある。
塚田九段が意地と執念で回したバトンだからなぁ。
それを力にできるかどうかが、勝敗を分けるんじゃないかな?
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