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生活保護の患者さんは原則後発品で

 ちょっと前から、こそっと話題になっている。

 生活保護法の改正、という話がある。これは、先月、閣議決定されて、
今月、すでに衆議院を通過している。おそらく、そのまま通ると思うけど。

 生活保護に関しては、自助努力を促す、というか、
まぁ、安倍さんとしては受給を抑制したいところだから、
内容としては不正受給対策の強化とか言われていて、
そっちの方での反対派も多いと思うが・・・

 薬局の方で問題になるのは、やっぱり後発品問題だ。

過去に、私も何度も記事にしている。

ジェネリック医薬品と生活保護(2012.1.19)
http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-16d0.html

ジェネリック医薬品を生活保護に勧めるには?(2012.1.25)
http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-a899.html

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 ジェネリックの代替調剤(薬局で、先発品から後発品に変更)がでてきてから、
何度か、「生活保護の患者さんにはジェネリックを」という流れがあったが、
そのたびに跳ね返されてきた。(苦笑)

 昨年改訂の際にも、「できるだけ後発品を使って」というお願いが、
地域によってはあったみたいだけれども、私の勤務している地域では
そんな話は一向に聞かなかった。

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 問題なのは、薬局での窓口負担が発生しない(=0円)なため、
生活保護の患者さんは、ジェネリックに変更するメリットが存在しない。
また、薬局側にも、実はジェネリックを勧めるインセンティブがない。

 よって、一般の人がジェネリック医薬品を使って医療費削減している中で、
生活保護の患者さんは、無関係にブランド物の先発品を使っている人が多い。
そりゃ、問題だよねぇ?という話だ。

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 どうも、今度の「生活保護法改正」で法律で明確に「後発品の使用の促進」が
書かれているようだ。

 で、実際にどうするか、というのが、大枠で出てきている。
これは、法律ではなくて、通達みたいなんだけど。

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1.生活保護の患者さんが、一般名処方、もしくは代替調剤可の処方箋を持ってきた場合、
  保険薬局は原則として後発品を調剤する
  ただし、医師が後発品への変更を認めていない場合は、その限りではない。

2.生活保護の患者さんが、どうしても先発医薬品を希望した場合は、
  先発品を調剤するが、後発品を希望しない事情を確認、記録して、
  定期的に福祉事務所に送付する。

3.保険薬局は、薬剤師の専門的知見や在庫の都合等により先発品を調剤することもできる。
  その場合は、先発品を調剤した事情を記録し、福祉事務所の求めに応じて提出する。

4.福祉事務所は、先発品を希望する理由に妥当性がないと判断した場合には、
  個別に指導を行う。

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 だいたい、こんな感じ。

 現場の意見を正直に言うと、面倒くさいことをさせるなぁ・・・、というとこか。
なるほど、そういう方法でやってきたか、と。

 今まで、保険薬局は、生活保護の患者さんに後発品を調剤するメリットがなかった。
そこに、「先発品を調剤したら面倒くさい書類が必要になる」というルールができる。
なるほど、面倒な書類を避けたければ、後発品を使え、ということか。

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 まぁ、薬局としても逃げ道は、いくらでもあるんだけど・・・
少なくとも、生活保護の患者さんに「後発品でよいかどうか」を聞く必要はある。
それで後発品を拒否されたら、理由を聞いておけば先発品でもよい訳だけど。
また、在庫の問題やその他、薬剤師の判断で先発品にした場合は、
問題の書類は、「求められれば提出する」というレベル。
 つまり、求められなければ、提出する必要はない。

 あと、穴といえば、医師が「変更不可」としてしまえば、
薬局では何もできない。ま、今までもそうだけどさ。
でも、これもいつまで可能かどうかは分からない。
「変更不可」な処方箋を出す先生は、そのうち目をつけられそうな気がするし。

.

 実際にどういう運用になるのか、は、まだ分からない。
実際に制度が動き出すのは、今年の10月から、らしいけど。

 ただ・・・ねぇ。プライバシーに配慮する必要があるからなぁ。
ウチは、あんまりプライバシーに配慮できる構造じゃないし。
空いているときならいいけど、ほかに患者さんがいるときに、
「その患者さんが生活保護だ」と分かるような対応は避ける必要がある。

 そう考えると、実際にスタートする10月よりも前から、
対応を考えておいたほうがいいだろうなぁ・・・。
事前に、文書で説明して、「考えておいてください」くらい言うか・・・。

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 現実問題として、後発品を選ぶ患者さんは増えているし、
それで大きな問題はおこっていない。
患者さんには、その説明で何とか納得してもらうしかないかなぁ。
「貧乏人は、安モン使えってことか?」というと、まさしくその通りなんだが。w
正確には「貧乏人がブランド物を(人の金で)買うな」ってこと。

.

 でも・・・どうだろう。これ、生活保護だけ特別扱いすることかなぁ?
他の公費があって、患者負担金がゼロの患者さんでも、
できるだけ後発品を使うべきだと思う。
 薬局側から「勧めにくい」という点では、生活保護と同じだから。
ただ、今回の「後発品使わないと面倒だぞ」方式をほかにあてはめると、
事務作業がハンパなく増える(薬局だけでなく、支払い側も)ので、
そうそう簡単にはいかないだろうけど。

.

 2013/9/24追記

 本当に10月から始まるの?続編を書いてます。
http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2013/09/post-cfed.html

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('10~13)仕事(薬局)」カテゴリの記事

コメント

どこまで厳格に声掛けするかにもよるでしょうが、面倒な話ですね。

ちょっと細かい質問をされただけでも、違法だプライバシー侵害だ納得できないとファビョる人が少なからずいるような。

薬局やら医師が一から説明しなくちゃいけないんでしょうが、迷惑な話ですね。

投稿: simose | 2013-06-24 07:58

私の地域は去年の通知が出た段階で、市の福祉課から原則ジェネリックで調剤をするよう通達がありました。

〇〇さんのこの薬、
市のほうからジェネリックを使ってくださいって、要請があったんだけど、変更してもいい?

ってな感じで聞くと結構変更に応じてくれましたよ。(生活保護を受けてることとかはふせて話したり、プライバシーには気を使いますけどね、ジェネリックについて説明が必要なケースもありました。)

市がとか行政がと言うと、納得してくれるのかもしれません

投稿: マサ | 2013-06-24 12:28

何にしろただっていうのは良くないと思います。
たとえ百分の1でも負担金払うような制度だと支払う方にコスト意識が出るのではないでしょうか。
近くに生保の老人相手に不必要な在宅医療を押し売り(?)している病院があります。
歩ける患者なのに親切ぶって自宅まで薬を持っていって往診。
たいした病気でなくても二週間に一度往診して在宅の高額な管理料を算定。
こんなビジネスされたら医療費が赤字になるのは当たり前。
そのくせ、そういう病院に限って緊急事態の時の往診お断りなんですよ!


1つ、在宅診療に熱心だけど定期の(しかも管理料の高い)二週間おきの在宅診療に限定している。
1つ、緊急の往診は基本不可能。
1つ、生保はじめ医療費が安くなる制度についてお問い合わせ下さいと貼り紙あり。
こんな病院が怪しいです。

投稿: ただはよくない | 2013-06-24 20:45

はじめまして。いつも楽しく拝見させていただいてます。
実務実習中の薬学生です。

実習先にも行政から似たような通知が来たようです。

>正確には「貧乏人がブランド物を(人の金で)買うな」ってこと。
この意見は至極真っ当なものだと思います。ただ、「ジェネリック推進が医療費削減に大きく貢献する」という前提そのものが誤っているような気がして仕方ないです。
kittenさんがたまに意見なされていたように、ジェネリックにしたからと言って必ずしも安く済むわけではないような…

セルフメディケーションの推進の方が合理的というかマシだと思うんですけどね。
(コレだと生活保護を受けている方を切ることになるのか…?)

あくまで一薬学生の私的で浅はかな意見なのですが。

投稿: ひよっ子 | 2013-06-24 23:55

>simoseさん

 コメントありがとうございます。
実際にどういう運用になるのかがわかりません。
薬局も大変ですけど、福祉事務所側(市役所とか)も
たいがい、面倒くさいと思います。

>マサさん

 言い方の問題ってありますよねぇ。
ウチの薬局では、そんなに問題ある人は少なそうですが、
地域によっては(苦笑)難しいところもありそうです。

 全部「安倍首相のせい」にしてやろうかな。w

>ただはよくないさん

 コメントありがとうございます。
介護の方も、大いにありえる話ですね。
介護保険は、ほとんどの方が1割負担なんですが、
こっちも生活保護は無料・・・。
 まぁ、要介護度に応じたサービスの枠はあるんですけど、
病院と薬局は別だったような。

 これも、「本当に必要な人」もいるのが難しいところです。


>ひよっ子さん

 どれだけ薬局で後発品を勧めても、
医療費トータルで見れば、「焼け石に水」状態です。(苦笑)
生活保護に限った話でもありません。

 ミクロ(患者さん一人一人)でみれば、確実に安くなるのに、
マクロ(患者さん全体)でみると、ほとんど削減できません。
 医療費全体に占める薬剤費の割合はせいぜい25%。
そのうち、ジェネリックに変更できる薬の割合は・・・
と考えると、ほんと微々たるものです。
 高価な薬ほど、ジェネリック出てませんからね。

 特に生活保護に関して言えば、医療費削減のため、
というよりは感情的に許せない、という意味あいの方が
強いのかなぁ、とも。
 

投稿: kitten | 2013-06-25 23:58

厳密に言うと、生活保護って、健康保険制度の枠外ですよね?
社会保障費には含まれるので、歳出の増加の大きな要因なので、政治的には抑制したい動機はあると思うけど、保険料払っている国民の側からしてみれば、生活保護に先発品使おうが、ジェネリックだろうが、どっちでも自分の保険料使われているわけではないので、文句言う筋合いではないような、、、
広い意味で、税金なので、”無駄遣い”なら改めるべきとは思いますが、、、

投稿: 通りすがりの喫煙者 | 2013-06-26 10:52

>通りすがりの喫煙者さん

 コメントありがとうございます。
厳密には、その通りです。
でもまぁ、納税者から見たら、やっぱり文句言いたい・・・

 というか、広い意味では、「生活保護叩き」の一環ですね。
去年の河本事件(?)以降、生保を叩けば人気が取れるような
ところがありますので、
政治的な意味あいもあるんだと思います。

投稿: kitten | 2013-06-26 23:10

生活保護の医療費は窓口の自己負担金のみが地方自治体からまかなわれて残りの部分は国保から出ていると思っていたのですが違うのですか?
教えて下さい

投稿: 通りすがりの喫煙者さまへ | 2013-06-30 21:22

生活保護における医療費は、生活保護法の医療扶助という考え方に基づいているので、健康保険制度でいう自己負担自体が無料になります。
ただし、適用になる範囲は限られるようですが(差額ベッド代など)、、、

生活保護を受給する際には、健康保険から脱退することになるはずなので、国保から支払われることはないと思います。

ググった範囲ですが、以下がご参考になるかと。

お役にたてば幸いです。

http://kokuho.k-solution.info/2006/05/post_11.html

投稿: 通りすがりの喫煙者 | 2013-07-01 09:59

 稀に、ですが、健康保険と生活保護を併用される方はいます。
社会保険に入っているけれども、収入が足りなくて
生活保護を受けている、というケース・・・だと思います。
この場合は、自己負担金のみ税金から、です。
 ただ、ほとんど(実感では99%以上)の生活保護の方は
無保険状態ですので、自己負担金=自費(100%)が、
税金から賄われている、で、だいたい間違いないです。
(細かな例外は他にもあるかも)

投稿: kitten | 2013-07-01 22:04

そりゃ世間の人には 生活保護の人は高い薬も無料 医療費無料
自立しようという気がうせるわよねぇ とぼやきたくなる気持ちにもなるでしょうね

投稿: | 2015-06-15 21:36

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