大阪e-お薬手帳
仕事の話。
大阪では、「e-お薬手帳」なる試みが行われている。
お薬手帳を電子化しよう、という事業だ。
「大阪e-お薬手帳」http://www.e-okusuritecho.jp/
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お薬手帳は現在、基本的に全員に持ってもらうことになっているが、
まだまだ、有効活用できているとは言いがたい。
お薬手帳の意義が再確認されたのが、東日本大震災だった。
手帳があれば、その人が何を服用していたのかすぐに判る。
でも、お薬手帳を持ってない(あるいは、持ち出せなかった)人は、
今までどのような治療をしていたのかわからない。
「血圧の薬」とか、「糖尿の薬」と言われても、
薬の種類はたくさんあるから、実際にどの薬をどれくらいの量
服用していたのかわからないと、継続した治療に支障をきたす。
行っていた病院や薬局ではデータ保存している・・・っていっても、
震災や津波、といったケースだと、そもそも病院ごと避難したりしていて
情報の引き出しようがない、という・・・。
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お薬手帳はもっていても(もたされていても)、常に持ち歩いていない人も多い。
家に置きっぱなし、とか。何の管理もしていない、とか。
そんなんじゃ、いざという時に役に立つとは思えない。
そこで、お薬手帳をスマホに入れちゃおう、という話があった。
薬局単位でやっているところもあったかもしれないが、
自治体レベルで進めたのが大阪。
スマホのアプリを無料でダウンロードできるようになっている。
スマホなら、まず間違いなく常に持ち歩いているだろう、という・・・。
「手帳はかさばる」という人もいるので、電子化されたデータとスマホアプリなら、
そういうデメリットはないだろう、と。
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実際、大阪でどういう取り組みが進んでいるのか・・・。
実は、どこまで進んでいるのか、あまり把握していない。(汗)
うちの薬局でできることは、e-お薬手帳を持っている患者さんに、
コンピュータ(レセコン)から、調剤の記録をQRコード(2次元バーコード)の
形で出力することができる、くらい。
今まで、一回もやったことないけどね。(苦笑)
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さて、誤解を招かないように書いておく必要があるんだけれども、
このe-お薬手帳。
「お薬手帳を持参していない時や万一の時のため」に準備するものであって、
通常の(紙の)お薬手帳にとってかわるものではない。
これ、誤解されるかも知れないので。
e-お薬手帳があるから、紙のお薬手帳は必要ない、なんてことはない。
e-お薬手帳は、あくまで通常のお薬手帳のバックアップとして使うもの。
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なんでやねん。
とツッコミが入るかも知れないが、実際に大阪府薬剤師会はそう言っているし。
なぜそうなるのか、というと、一つには診療報酬上の問題もあるんだろう。
e-お薬手帳に保険点数なんかついてないからな。(苦笑)
もう一つ、こっちが本質的な問題になるんだけれども・・・
このe-お薬手帳って、医療従事者が直接確認することが難しいんだ。
通常の手帳は、手帳ごと提出してもらって、薬局で中身を確認する。
他の病院や薬局で、薬をもらっていないか、変わっていないか、
前にどこかで同じような薬が出ていないか、などを確認する必要があるので。
でも、e-お薬手帳でそれをやろうと思うと・・・
患者さんにスマホを提出してもらう必要がある。
・・・無理でしょ?ww
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また、通常のお薬手帳は、バッグにいれておいてもらえれば、
万一の事態、例えば本人が意識不明の状態で救急車で運ばれたり
なんかした時に、うまく発見されれば非常に重宝される。
併用薬がわかれば、基礎疾患なんかもわかるわけだし、
救急の現場を考えると、有用だろう。
(そんなケースがどこまであるかわかんないけど。)
でも、e-お薬手帳だと、それも難しい。
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もう一つ、例えば東日本大震災のような大災害を念頭に置くと・・・
災害時にスマホを充電できるのか??という疑問が。
電気がなければ、どうしようもないし、故障、という危険性もある。
通常のお薬手帳は、電気がなくても読めるし、故障することもない。
水没しても、ある程度判読可能だろう。
そういう訳で、まだまだe-お薬手帳のようなスマホアプリでは、
完全にお薬手帳のかわり、としては使えないということだ。
残念ながら。
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以下、私の感想。
同じ電子データを使うならば、
過去の診療情報を全てどっかに蓄えておいて
各医療機関がその情報に簡単にアクセスできるようにする、
ってのが一番確実だと思う。
電子カルテまで見れる必要はない。
過去に、健康保険を使ってどういう治療を行ったか、という
レセプト情報が閲覧できれば、併用薬や保険病名が全てわかる。
ついでに、薬局でも病院での診断や検査情報なんかを
見られるようにしてもらえば、ものすごくありがたい。(苦笑)
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国民一人一人に固有のID番号をつける、なんて手もあるだろう。
(国民総背番号制?とか言われそうだけど。)
システム的には、本気でやろうと思えば技術的な問題は・・・
そんなにあるような気がしないんだけど、どうだろう??
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問題があるのは、技術面ではなくて、運用面だろうな。(苦笑)
過去の治療歴って、とんでもない個人情報の塊な訳で、
それを町医者や町の薬局が簡単にアクセスできると・・・
やっぱり、色々と問題がおこってしまうかも知れない。
あとはセキュリティの問題と。こんな情報が流出したら大事だから。
その辺の制度設計さえうまくできれば、
e-お薬手帳どころか、そもそもお薬手帳すらいらなくなる。
医療機関がデータサーバに接続さえできれば、全データ手に入るんだから。
サーバ自体はバックアップを取って分散させてしまえば、
データが全部消えるなんてこともないだろうし。。
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まぁ、そんな時代がくれば、そもそも「紙の処方箋」自体が
必要なくなるかも知れないなぁ。
電子データで薬局に飛ばしてしまえばよい、とか。
いずれ、そういう時代が来るんじゃないか、とは思うけど、、
10年では無理だろうなぁ・・・20年たったらどうだろう・・・。
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