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医療におけるコスト感覚の問題

 少し前に、医療費削減のためには、
処方する医師の側にコスト感覚が必要、という記事を書いた。

「調剤報酬を増やすも減らすも医師次第」(2013.10.1)
http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-682d.html

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 医療におけるコスト感覚についての問題点を書いてみる。

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 まずは、医師にコスト感覚がない、という話から。
例えば、アメリカでは高血圧の薬、利尿薬がファーストチョイスになる。
日本では、ARBが圧倒的に多いんじゃないかな?

 利尿薬が優れているのは「安価」という点だ。とにかく安い。
ARBと同じだけの血圧を下げるのに、薬価10分の1くらいじゃないか?

 また、私が高血圧になったとして、薬を選べるのならば、
ARBではなく、ACE阻害薬を選びたい。
ARBよりも若干副作用は多いけれども、効果は大差ないし、
ジェネリック医薬品を使えれば、薬価はARBの10分の1くらいにできる。

 新薬は効果も安全性も高いことが多いけど、その分薬価も高いから。
その辺のバランスが取れていない、と感じることが多い。

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 では、医師がコスト感覚を持つことによる問題点は?

 どこで読んだか覚えていないが、
「医師はコスト感覚を持つべきではない」という主張を見たことがある。
実際に、自分が出している薬の値段なんか知ったこっちゃない、という
医師も、少なからずいるんじゃないだろうか?

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 コスト感覚を持つことの弊害は、患者さんを差別してしまうこと、かな?
日本では、医療は平等であることが望ましい、とされている。
お金持ちでも、貧乏人でも、(ある程度)平等に治療が受けられる、と。

 ここに、コスト感覚を持ち込むとどうだろうか?不平等が加速しないか?

 例えば、
この患者さんはあまりお金もってないから、検査控えておこう
とか。いや、これだって立派なコスト感覚だと思う。
 逆に、金持ちの患者さんなら、至れり尽くせりの検査、治療をやれ、とかね。

 もっとも、生活保護制度っていう逆の問題もあるんだが・・・。
生活保護の患者さんは、自己負担金が発生しない。全部無料だ。
ゆえに、高額の治療をしても患者さんのフトコロが痛まないので、
生活保護の患者さんの方が、よい医療を受けられる。w
 普通は使えないような高額な注射でも、生活保護の患者さんなら無料だし。w

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 話がそれた。
患者さんの負担や、医療費のコスト感覚を身につけろってことは、
「今までの治療よりも、コストを削って欲しい」ってことだ。
それって、サービスの質を落とせ、という意味にとることもできる。

 貧乏人にはそれなりの治療、金持ち(と生活保護)にはよい治療。
混合診療まで使えると、より大金持ちなら最高の治療。
医療が平等ではなくなってしまう。それでいいのか?

 ようは、コスト感覚を言い出すと、医療が平等じゃなくなるよってこと。
私は、もはや仕方ないと思っているが、そう思わない人もいるだろう。

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 さて、もう一つの問題。
例えば、子どもが転んで、頭を強打したとする。
機嫌が悪くて泣き止まないので、病院にきた。
CTを撮って欲しい、と親は医師に頼む。

 ・・・これ、病院側はコスト考えると断るべきだ。
もちろん転倒の度合いにもよるけれども、
この手のCTで、問題になるような脳内出血が見つかる可能性ってどんだけ?

 ほとんどが、無駄に被曝させるだけで(CTだってX線)終わるはず。
コスト無視したとしても、CT撮るほうが間違いなく健康には悪影響。

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 でも、かといってその辺を全部説明してCT撮らなかったとして、
万が一、脳内出血があって、重篤な事態になったらどうなるのか?
これ、かなり高い確率で訴えられるんじゃないだろうか?
 しかも負ける可能性が高い・・・。
だって、最高の医療を提供すれば、事態は防げたかも知れないんだから。

 訴訟を避けるためには、とにかく出来る限りの検査をすべき、となる。
コスパ悪いのは知っているけど、(医療者の)保身のために必要なんだ。
また、検査しまくることは、病院経営にも、もちろんプラスだ。

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 薬にしたって同じ事。
コストを考えて、少し安い薬を使った例があったとして、
万が一、それが原因で何かおこった場合どうなるか?

「なぜ、最善の治療を行わなかったのか?」って問題になるよね??

 これ、医療者がどれだけ丁寧に説明したところで、
患者さんが理解できなきゃ意味がないから。訴えられてしまう。

 こっちの方も、抜本的に解決策を考えないといけない。
医療訴訟対策、というべきだろうか?
しっかりと説明した上で、患者さんの同意を記録に残す必要があるのかな?
そこまでしたところで、訴えられる時は訴えられるだろうが。

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 私が「医療にコスト感覚を持て」と言っても簡単な話ではない、と思うのは、
上記のような背景があるから。

 何か、抜本的な対策が必要だろう。
システムだけの問題ではなく、国民の意識から変える必要もあるだろうな。

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コメント

子供が川の土手から2メートルくらい下に転落して頭部打撲で診察を受けたことがあります。
10日後に突然ひどい頭痛を訴えるので、大変だ!出血かと慌ててCT検査をしてもらいに再診したところ、診察した担当医に心配ないし検査も必要ないと言われました。
その時は感謝どころか、CTをしてくれなかった担当医に殺意さえ覚えました。
万が一頭蓋内に見落としがあれば、許さない。絶対訴えてやるって。
今から考えると担当医の冷静な判断とコスト意識は正しかったと思います。
親としてジコチュウだった自分が恥ずかしい思い出です。


医療に絶対がない以上、コストを考えて安い副作用の多い薬を使ったり自分の責任において不必要な検査をしないような決断は非常に難しい。
訴訟で人生を台無しにする可能性があればできない相談でしょう。
患者側の意識が変わらなければなかなか無理ですね。

投稿: ジコチュウ | 2013-11-07 10:21

ジコチュウさんのケースみたいに医療上必要ない
と判断された上で検査してほしいというのなら
自費でやればよいのではないでしょうか。
CT一回いくらするのか知りませんが・・・。

すべて保険でというから問題になるのであって
自費診療をうまく使えばそれなりになんとか
なりそうな感じもするんですけどねえ・・・。

投稿: とおりすがり | 2013-11-07 19:07

検査だけ自費は無理です。日本では混合診療が禁止されてますからCTだけでなく全額が自費となります。
おすすめできません。

投稿: ジコチュウ | 2013-11-07 20:11

それはもちろん言うまでも無く「全額」自費になりますね。

【医療上必要ない】のに医療行為を行なって欲しい
というのであれば全額自費でも良いからやってくれ
とお願いしたらよいのでは?

CT1回なら全額自費で5~6万円くらいかな?
金と子供の安全と天秤に掛けて親が判断すれば
よいですね。


日本では、ARBがでてくるのはやはりガイドラインに
沿っているからですよね?
ガイドラインを作成する医師がコスト感覚を持つべきでは
ないでしょうか。

最善かどうかはおいておいてガイドラインに沿っていれば
訴訟になっても負けることはないでしょうから、コストをも
考慮したガイドラインの作成が重要かと思います。

投稿: とおりすがり | 2013-11-07 21:21

>ジコチュウさん

 コメントありがとうございます。
私も偉そうなこと書いてますけど、実際に自分の子どもが、
となると、冷静ではいられないです。
 本当に、「自分のこと」として考えたときに、この問題が
どれだけ難しいかが分かりますね。

>とおりすがりさん

 おっしゃるような「オプションにつき自費」みたいな
制度を作るのであれば、混合診療解禁は必須ですね。
ただ、そういう制度を作ったら作ったで、やっぱり
「貧乏人は死ねということか」という意見が絶対に出ます。(苦笑)


 高血圧のガイドラインでは、ARBは第一選択薬の一つで、
別に他の薬でも構わないことになってます。
ACE阻害薬でも、カルシウム拮抗薬でも、利尿薬でも
使っていいんですけどね。

 好意的に解釈すれば、
効果や安全性を総合的に評価すると、
ARBが最も優れているから、でしょう。
(この評価に費用は含みません)

 悪意をもってみるのであれば、
メーカーと医師の癒着、という話になりそうです。(汗)

投稿: kitten | 2013-11-07 22:13

生活保護の人って守られすぎてる・・本当に働けないほどの病気の人は別として、腰痛で毎日ホットパック・・働けって思う。
私だって腰痛くてもても仕事休めないし、たとえ病院に行っても順番は守らないといけないから長時間かかっても我慢・・なのに生保は、お金いらないんだから診察券だけ返せって。むかつく。国が甘やかしてる。平気で時間外にくる。お金もってこない・・私らよりいい生活してる。のに国は最低限の生活なんていう。福祉もちゃんと仕事しなって思う。橋本市長ぐらいかな。。ちゃんと考えてるの。生保が問題になっても減らないのは、国民が本当の実態を知ってないから。医療関係で働いて初めて知った。

投稿: | 2013-11-29 23:02

せめて、償還払いにすれば・・・、とは思いますね。

投稿: とおりすがり | 2013-11-30 18:54

 本当に困ってて、生活保護やむなし、って人も多いですが、
明らかに裕福そうな人もいたりするのが難しいところです。

 この辺、またそのうちに書きます。
実際のところ、生活保護の中であきらかに「おぃ!」っていう
おかしな人がどの程度いるのかは・・・わかんないです。
地域性もありそうですし。(汗)

投稿: kitten | 2013-11-30 23:10

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