生活保護にかかる医療費が高い理由
数年前から、生活保護に対するバッシングが大きくなっている。
不正受給としか思えない事例もあるだろうし、
社会的にみて、やっぱり許せないような事例も多々あると思う。
でも、そういう悪質な生活保護受給者って、全体のうちの
どれくらいの割合なんだろう?
生活保護が、全て悪であるかのような叩き方には、
相当な違和感を覚える。
確かに、一部、悪質な人たちがいるのは間違いないが、
その一方で、どうしようもない理由で、困窮している人も
数多くいると思われる。
一部をもって全体を批判するのは、どうか?
私の知っている範囲で言うならば、生活保護の患者さんで
そんなに「悪質な」人は少ない。生活保護全体の・・・
せいぜい3%未満じゃないだろうか。
ただ、こういうのは地域性がありそうだから、
私の知っている範囲の話を全体に広げていいかどうかは分からない。
しかし、一部の悪質な人をたたく為に、大多数のまじめな
生活保護の人の生活がおびやかされるのはどうかと思う。
.
生活保護費のうち、医療費の占める割合は高い。
保護費全体の、約半分が医療費だ。
生活保護の方は、医療費は原則として無料であるため、
過剰受診があるんじゃないか、とか言われることがある。
自己負担が発生しない為、単価の安い後発品(ジェネリック)
への切替もなかなか進まない。
ひどいのになると、無料で手に入れた医療用の医薬品を転売して
儲けを出そう、なんて話もある。
もちろん、そういう話もあるんだけれどもね。
生活保護になった→医療費が無料→たくさん使う→医療費高い
そういうケースもゼロではないだろうが、
生活保護の患者さんの医療費が高い理由は他にもある。
医療費が高すぎて、生活保護になってしまうケース。
病気が原因で生活保護になるケースは、かなりある。
病気になってしまったら、働けなくなり収入が途絶える。
医療費は、健康保険の枠内で高額療養費の制度を使ったとしても、
月に8万円程度まではかかってしまう。
病気の状態で、月8万円の医療費負担。
民間の医療保険に入っているならともかく、
そうでないなら、非常に厳しいことになる。
だいたい、私だって月8万円の医療費がかかるような病気にかかったら、
生活保護になったっておかしくはないぞ。働けないだろうし。
生活保護の患者さんの中には、そういう、もともと超高額の医療費を
払いきれなくて生活保護になった人がいる。
だから、保護費に対する医療費の割合が高いのは当たり前だ。
しかも、この医療費って自己負担分だけじゃないから。
例えば、本来100万円かかる治療を行っても、保険が利けば
高額療養費制度を使って・・・例えば自己負担は10万円としよう。
でも、生活保護の場合は保険証をもっていないので、
医療費は全部保護費。つまり、「100万円」が医療扶助として
カウントされる訳。普通の人の感覚と違って当たり前。
.
私は実際に、何人もの患者さんが生活保護になるのを見ている。
その中には、本当に医療費が払えずにどうしようもなく生活保護に
なった方も多い。
病気は、全て自己責任でおこる訳ではない。
というか、自己責任でおこる病気の方が圧倒的に少ない。
自分だって、運が悪ければ難病にかかってしまう。
そうすれば、膨大な治療費を払えなくなって、生活保護を受けるかも。
今、生活保護をたたいている人たちは、その辺までちゃんと分かってるのか?
あくまで、セーフティネットなんだから。
それを小さくすれば、自分が大怪我をする可能性も高まる。
「自分は関係ない」と安全地帯から批判していてはダメだと思う。
人生、何がおこるか分からないんだから。
.
もちろん、悪質な生活保護の人がいるのも事実。
何らかの対策は必要かも知れないが、そのために善良な生活保護の人が
切り捨てられることはあってはならないだろう。
ただ、どう線引きをするか、というと果てしなく難しいのが現実。
恣意的に運用できるような仕組みにすると、保護費を切り詰めたい
行政が何をするか、容易に想像ができるし。
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コメント
私達が接する生活保護の方々の中には、殆んど悪質な人はいません。
問題例は、特定の場所にかたまって存在するのではないかと思います。
一つ、生保をビジネスにする怖い方々のまわり。
一つ、生保患者の割合が異様に多い医療機関。ここでは生保への切り替えを積極的にしてますよね。親切にも役所まで付いていって。そのかわり、生保患者に無駄な検査、無駄な薬が出されて病院の利益に大きく寄与してます。ここを厳しくチェックしていけば無駄な生保支出が大きく減ると思います。
また個人的には、実際は離婚してないくせに書類上離婚届けを出して母子家庭になり、医療費を払わない(他様々な特典を享受している!)偽母子家庭も行政が正しくチェックして騙し行為を暴いて欲しい。
投稿: チェック体制を | 2013-12-05 10:11
>チェック体制をさん
コメントありがとうございます。おおむね、同意です。
ただ、チェックするのにも人手、お金がかかりますが・・・。
私は(医療従事者として)生活保護の方と接する機会が
あるので、どういう人がいるのか想像できます。
(処方箋の保険欄見れば、生活保護は一発でわかります。)
でも、一般の人は、生活保護がものすごく遠い存在なんでしょうね。
本当は身近にいるんですけど、分からないでしょうし。
その辺が、偏見を助長しているんでしょう。
投稿: kitten | 2013-12-05 22:16
個人的に生活保護の人に医療扶助がそんなに要るのか、ピンと来なかったり。特に在宅の人。
医療費は掛かるにしても、更生医療や精神通院、特定疾患治療研究事業の人は、そっちで全額持つので医療扶助にはなりませんし。まあ更生医療の認定受けてない透析病院もあったりはしますが。
在宅で掛かるなぁ、と見てて感じるのはガン絡みですかね。あんまり個人的には他に思い当たるものがなくて。素人だから分からないだけかもですが。
私が医療扶助かかってそうだなと感じてるのは社会的入院の方々ですかね。精神科入院とか所謂老人病院とか。あと地味に癌絡みとシャント拡張とかかな?
それでも半分まで行くか?なんか結構食い物にされてるんじゃないかなという個人的なイメージ。
ソースなしのイメージ話でゴメンなさいm(_ _)m
投稿: | 2013-12-06 21:06
コメントありがとうございます。
特定疾患は、生活保護は対象外です。
生活保護の患者さんに特定疾患の公費つきませんから、
保護費の方でみてます。
精神(自立支援)はそっちでみてるので生活保護費には
入ってこないと思いますが。
入院治療の方が大きいでしょうねぇ・・・。
ちょっと前に、病院から無理やり追い出して
問題になったケースがありましたね。
投稿: kitten | 2013-12-06 22:43