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C型肝炎は飲み薬だけで治る時代です

 仕事の話。

 以前、C型肝炎の治療の進歩について、記事にした。
「C型肝炎の治療は進歩しています」(2014.6.3)
http://tukutteha-mitamonono.cocolog-nifty.com/blog/2014/06/c-7cd2.html

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 このときは、PEGインターフェロン、リバビリン、シメプレビルの
3剤併用療法を紹介し、SVR90%に恐れおののいた。

 この時点でもすごいと思っていたんだが、
C型肝炎の治療は、さらに進化している。しかも、現在進行形で
進化し続けている。

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 昨年秋、ついにインターフェロンフリーの治療薬が出た。
ブリストルマイヤーズ社の抗ウイルス薬。
ダクルインザ(一般名:ダクラタスビル塩酸塩)と、
スンベプラ(一般名:アスナプレビル)だ。

 これらの薬はセットで使われる。インターフェロンフリーの経口薬。
インターフェロンフリー、と言うのは、インターフェロン療法が必要ない、
ということだ。

 インターフェロン療法は、昔から続いてきたC型肝炎の治療法。
免疫力を高めて、ウイルスを排除するんだけれども、
おそろしく副作用の多い療法だった。

 副作用の発現頻度。発熱94.9%、倦怠感91.4%。頭痛86.5%。
その他、ありとあらゆる副作用がかなりの頻度で発生する。
(間質性肺炎や、自殺企図の副作用がありえる、と警告がある)

 なので、インターフェロンで治療しようとして断念した人もいれば、
高齢者など、そもそも適さない人も大勢いた。

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 ダクルインザとスンベプラ(しかし、名前覚えにくいぞこれ)は、
ウイルスを直接叩く薬なので、インターフェロンは必要ない。
ってことは、あのインターフェロンの副作用の山と戦う必要がない。

 つまり、今まで治療できなかった人も挑戦できることになった。

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 さらに今年の3月、適応が追加された。
今まではインターフェロン無効例、もしくは不適格例の患者さんに
対してのみ使われていたのだが、先月からは、インターフェロンの
治療歴に関わらず、誰でも使えるようになった。

 一応、現時点の肝炎ガイドラインでは、
ペグインターフェロン、リバビリン、シメプレビルの3剤併用療法が
第一選択、となってきているけれども、実際に患者さんの選択は、
インターフェロンを使わない方法になっていくと思う。
 インターフェロンはほぼみんなが辛い、しんどい、と言うし。
副作用が出ないほうが圧倒的に少ないからねぇ・・・。

 治療成績も問題ない。
一部、効き難いタイプのウイルスがいるらしいけれども、
事前に検査することができるようだし。
SVR率は、従来の3剤併用療法と大差ない。

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 ダクルインザとスンベプラも、肝炎公費の対象になる。
つまり、月額上限1万円とか、2万円とかで治療可能だ。

 ダクルインザは薬価が9186円/日
スンベプラは、薬価が6561円/日

あわせて、1日で15747円。これを24週間続ける。
薬代だけで、260万円超・・・。マジか。

 もっとも、今までのインターフェロン、リバビリン、シメプレビルの
3剤併用療法でも、トータルではそれに近い額がかかっていた・・・のかも。
インターフェロンは病院で打つから、薬局では金額わからんだけで。

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 ただ、このダクルインザ・スンベプラ療法は、
C型肝炎のジェノタイプ1にしか使えない。
日本では7割がジェノタイプ1だそうな。

 ほかのタイプのC型肝炎だと使えないんだけれど・・・
実は、もう一つ、新薬が控えている。
ジェノタイプ2のC型肝炎に使える、インターフェロンフリーの新薬。
これが、おそらく5月には薬価収載される予定。

 ギリアド社のソバルディ(一般名:ソフォスブビル)。
実は、この薬、C型肝炎を終わらせるかも知れないほどの力を持つらしい。
インターフェロン必要ない上に、めちゃくちゃ効果が高い。

 近いうちに承認されるのは、まずジェノタイプ2型に効くタイプのものだけど、
同じソフォスブビル配合で、ジェノタイプ1型に効くタイプのものも
年内には発売されるんじゃないか、と言われている。

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 こっそり、ブリストルさんに聞いてみたんだけれども、
ぶっちゃけ、対等の条件ではダクルインザ、スンベプラは、
このソフォスブビル配合新薬に勝ち目がないそうだ。(苦笑)
(だから、承認されるまでが勝負、と全力で宣伝を入れている)

 ダクルインザ、スンベプラが24週治療なのに対して、
ソフォスブビルは12週治療でOK.
しかも耐性ウイルス検査も必要ない。

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 ただね、このソバルディ。非常に高価な薬となりそうだ。
まだ、日本での薬価は決まっていないけれども、
アメリカでは、1錠1000ドル。12週間で8万4000ドル。
1ドル120円で計算すると・・・12週間で

1008万円

 いやいやいや、いくらなんでも高すぎだろう!!
あまりに高すぎるので、アメリカでも批判が高まっている。
実際に値下げの動きもあるらしいんだけど。

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 もっとも、これはアメリカでの話。
おそらく、日本でここまで高い薬価がつくことはないと思われる。
・・・にしても、ダクルインザ・スンベプラよりもはるかに高いだろうな。

 日本政府、これに肝炎公費適応していいんか?(汗)
自己負担3ヶ月で3万円程度で、これだけの治療受けていいのか?

 なんにせよ、いくらの薬価がつくのかが見もの。

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 薬局としても、覚悟が必要になる。
仮に半額になったとしても、1錠5万円の薬が出てくることになる。
包装単位は、普通に考えると14錠かな。それでも70万円。
ケタが違いすぎて想像できん・・・。

 薬局実習に来ている学生が間違えて箱開けたりとかしたら、
ものすごい勢いで学校にクレーム入れるかも知れんわ。(苦笑)

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('14~16)仕事(薬局)」カテゴリの記事

コメント

よくご存じで、
私は病院勤務ですが保険薬局でも本剤は調剤頻度増えてますか?

投稿: | 2015-04-22 20:36

基幹病院の門前にいますが、ぽつぽつ出ていますね。

何がすごいって、金額がすごい。

後日、公費適用になりました~とかで返金になるんですが、
20~30万円くらいの返金になったりしてレジの金がすっか
らかんですわ。

冗談抜きで困ります。

他の薬局はどうしてるのか知りたい。

投稿: とおりすがり | 2015-04-22 21:42

ソバルディの勉強会が昨日あったんですが、
包装は瓶入り28錠のみΣ(゚д゚;)

当然1年間は14日処方なわけで、14錠は過剰在庫。
また、分包も必要なわけで、落として紛失なんてなったら泣くに泣けない状況に(;ω;)

投稿: マサ | 2015-04-23 09:08

 ウチでは、いまのところ1例だけですが、
卸さんの情報によると、かなり出ているらしいです。
逆にソブリアード(シメプレビル)は減ってるそうです。

>とおりすがりさん

 ウチはクレジットカードで対応しています。
イレギュラーな返金(取り消し)操作は発生しますけど、
数十万の現金を返すよりはマシです。
 現金だとすると、返金日をこちらで指定して
用意しておくか、いっそのこと振込みにしてしまうか・・・。

 というか、返金しなきゃいけないんですかね?
自治体の方からお金を直接振り込んでもらう
ってできないんでしょうか?
調べてないからわかりませんが、できてもよさそうです。

>マサさん

 28錠1瓶ですか・・・。もうちょっと日本の状況に
あわせて作って欲しいですね。(泣)
やっぱり、覚悟が必要です。一瓶で100万超えるの確実でしょう
「飲み忘れて余った分があるから」とか言われて
変な端数が余ったりしたら・・・。シャレになりません。
もし出たら、絶対に服用忘れないように強く指導しないと。w

投稿: kitten | 2015-04-23 19:16

はじめまして、調べてたらここにたどり着いたのでかきこみます。自分の患者さんが血小板低すぎてインターフェロンつかえなかったんですよ。どっちかわからないんですが新薬の二剤のを使えるみたいで効いてくれたらと思います!

投稿: ナショナリスト | 2015-05-24 12:53

>ナショナリストさん

 コメントありがとうございます。
この分野は現在進行形でどんどん進歩しています・・・。
でも、治療を始めるタイミングは難しそうです。
待てば待つほどいい薬が出てきそうですが、肝炎の進行の
兼ね合いもありますので。


投稿: kitten | 2015-05-25 21:42

ねんのため、ソバルディ一錠61、799.30円です。

投稿: やぶい | 2015-07-08 18:17

>やぶいさん

コメントありがとうございます。
予想よりもちょっと安かったですね。
そういえば、ギリアド社は、ハーボニー配合錠が
製造承認を取得していますね。
記事中にも書いてますが、ジェノタイプ1型に効くタイプの新薬です。
 これは、ソバルディよりもさらに高くなりそうです・。

投稿: kitten | 2015-07-09 22:11

今年9月より、ソバルディ&コペガスの治療を始めました。
2週が過ぎ3週目に入っています。Ⅱ型b、W非常に少なめ。
なので、医者から見て魅力的な患者らしく、ずっと治療を奨められた結果、

治療は3度目!
1度目は静脈注射のインターフェロン〔再燃〕
2度目はインターフェロン&リバビリン
〔副作用のため治療半分で中止〕

2度あることは3度なのか、3度目の正直なのか・・・
公費の無駄使いにならぬよう、ギリアドからのgoodsもしっかり使っています。

正直なところ断ろうかとも思ったけれど、病院としては新薬の効き目が見たくて、誰にでも声をかけるのではと考え、受けた次第です。

投稿: taste good | 2015-09-18 02:14

>taste goodさん

 コメントありがとうございます。
C肝の治療の歴史をそのまま反映している治療歴ですね。(汗)
病院の思惑は色々あるかもしれませんが、
間違いなく「今度こそ完治して欲しい!」という想いはありますよ。
 いい結果で終わるといいですね。

投稿: kitten | 2015-09-18 23:30

はじめまして。
まさに今、ソバルディを服薬し始めました。
私も畑違いですが医療職で、興味深く読ませていただきました。

15年間付き合ってきて忘れかけていた治療への道が急に開かれることになり、
そのタイミングで奇跡的にソバルディが承認され
子供を卒乳させて、仕事も無理言って通院のために上司が調整してくれ、治療を開始しました。

患者さま方の完治率や副作用はいかがですか?印象論でも。。教えていただければと思います

投稿: ゆうまま | 2015-11-12 00:23

>ゆうままさん

 コメントありがとうございます。
今のところの印象ですが、インターフェロンと比較すると
副作用はないも同然です。まれに聞きますけれども、
治療を中止するほどの副作用はほとんどないかと。

 効果は、前評判どおり、よさそうです。
ウチではまだ治療終了した方はいないんですけど、
服用1ヶ月でウイルス量が1/100になったとか聞きます。
高額な薬ですが、それに見合うだけの力がありそうです。

投稿: kitten | 2015-11-12 09:37

11月第4週に3瓶を飲み終えました。
今回ほど服薬に気遣ったことはなく、今はのんびりと一と月後の通院日を待っています。
後は再燃があるかないか…

後半、副作用で特別なものはなかったようですが、やはり通常とは違ったかなと思えます。

さてこれは大事なことだと思うのです。
C肝の注意事項に「歯ブラシを共有してはいけない。」とありますね。
肝炎でなくても、誤って使ったり共有することなどありえないのですが、
「治療の途中で自分の歯ブラシは小まめに代える。」とは誰も言いません。
しかし、もしも歯ブラシにウィルスが…と考えるなら、途中ウィルスが消えた段階で歯ブラシを代えないと、自分でばら撒くことになりますよね。

ということで、服用中はより以上に小まめに歯ブラシを代えることに気がけました。

投稿: taste good | 2015-11-29 23:04

はじめまして。私はC型肝炎持ちで恐らく来月からこの肝炎新薬治療を始められると思っています。タイプは1型bだそうです。田舎住まいで新薬治療が受けられる病院の選択肢があまり無く、近くに国立病院がありますがHPではいまだにインターフェロン治療での実績説明になっており、結局遠くの私立病院に通って検査治療を受ける事にしました。この新薬治療では薬価が高いために治療助成制度を申請しなければいけませんのでその際に提出する診断書もある程度権威、実績の有る医師が書いたものでなければ助成許可がおりないと聞いたのもこの遠くの私立病院を選んだ理由の一つです。ある程度大きな病院で政府の肝臓専門医がいる病院リストに名前があればどこでもこの新薬治療を受けられると思っていましたが、どうもそのリストに名前が有っても新薬治療が受けられるとは限りません、という説明書きもあり困惑しています。{実は近くの国立病院で治療したかったのです。} 病院によってはこの新薬治療が受けられないのはなぜかご存知であれば教えていただけませんでしょうか?

投稿: edy | 2016-04-20 10:04

>edyさん

 すみません、ちょっと理由が思い当たりません。
肝臓の専門医しか出せない薬なのはそうなんですが、
大阪では、市民病院クラスの病院から処方が出ることも
あります。
 公的機関に相談するか、直接メーカーに聞いてみた方が
確実かも知れません。
 

投稿: kitten | 2016-04-29 23:19

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